ep3
男の額には、銃口が向けられていた。
男の目の前に、茶色のロングコートを羽織り、左腰にこの世界では、全長一メートル程の直剣を携え、赤い布で頭部を巻き付け、左目と口元だけあらわにし、右手に黒い革の手袋を着け、銀色旧式の回転式銃を構えていた。
旧式の銃のため、撃つたびハンマーを起こさなければ撃てない構造の銃が、今はハンマーを起こしていつでも撃てる状態で、男から1メートルも、離れていない距離に立っていた。
「い、一体なにを・・・」
男は、冷や汗かきながらも、冷静を保ち尋ねたが、頭部に布を巻き付けた者は、微動だにせず無言で銃を向ける、左目の深紅の瞳が鋭い視線で、男を睨む。
「だ、誰か!衛兵を呼んで!!」
セレナは、一瞬思考が固まったが、考えるより先に叫んだ、セレナは本能的に叫んでいた。
セレナの叫び声に、周りな人々は視線を向け、事態を理解した者は、近くにいる衛兵に伝えに走り、ある者は悲鳴を上げ逃げ惑う、だが事態を把握しきれないで混乱していた者がほとんどだった。
ラファエルにも、叫び声や悲鳴など聞こえ、つい先程セレナと別れた所へ、視線を向ける。
「そこの女」
そんな中、銃を構えてた、布の者は平然とセレナに、声を掛ける、声からしてすぐに男だとセレナはわかった。
「お前だ、水色髪の女」
「な、なに?」
セレナは、強ばりながらも答えたが、こんな人混みの中、昼間から堂々と銃を構える男の行動が予測出ない、何が目的かもわからない事に恐れたが、何より平然とし過ぎる男に恐れた。
「お前、何か無くしてないか?」
「・・・・・・へ?」
全くをもって、何を言っているのか分からなかった、荷物は失ってはいない上に、何の事か分からなかった。
「質問が悪かったな、財布はちゃんとあるか?」
銃口を、向けられている男は驚いていた、だがセレナは、そんな物と思い、財布を入れいたポケットに手を入れた。
「!?ない!!わたしの財布が!?」
あるハズの、財布が無くなっていた。
初めての給料で買った、愛着のあるセレナの財布が無くなっていた。
遠くから見ていたラファエルにも、またセレナの叫び声が聞こえていた。
「はぁ?一体どうなってるんだ?」
ラファエルに、案内されていた男は、ラファエルがセレナの方に視線を向けている間に、走り出した。
ラファエルは、男が走り出したのに気づいたが、パンと乾いた音が聞こえた。
赤い布の男がラファエルの方に、狙いを変え撃った。
ラファエルは、すぐに気づいたが、何かが変だった、ラファエル自身に撃ったのではなかった。
「がぁ!!」
走り出した男の足が、赤く滲んで倒れていた、赤い布の男が男の足を撃ったのだった。
先程から銃口を、向けられていた男はその隙を見て、腰の後ろに隠し持っていたナイフを、右手に持ち心臓目掛けて突き刺そうとしたが、ナイフを持ち構えた時すでに、赤い布の男は左手で襟元を掴み持ち上げ、右足を軸に左足を前に出し勢いを付けながら、石畳の地面に叩きつけた。
体を強く、叩きつけれた衝撃は想像以上だったためか、男は失神し、懐から叩きつけられた衝撃で、大量の何かが出てきた、ほとんど四角く、中には長方形型の物もあった。
セレナの足元に、ピンク色の四角い物落ちてきた、セレナは見覚えがあった、いや、ないわけなかった。
「こ、これ、わたしの財布―――――――!!」
セレナは、思わず叫んだ、何故自分の財布をと、四角物をよく見ると、みんな財布だった、気づいた人々達はどよめき初め、自分の財布だと分かった人は、驚愕し慌てて取り戻しに向かう。
「そこの金髪!聞こえるか!?そこで撃たれてうずくまってるクズを取り押さえろ!!この二人は組んでスリをしてる!!」
「な、何だって!?」
ラファエルは、すぐに自分に言っていることがわかり、すぐに撃たれた男を見た、足を引き釣りながらも、逃げようとしている男にすぐに追いつき取り押さえた。
すると、走る足音が聞こえ、目の前をみると10人ほどの衛兵が駆け足でこちらに向かっていた。
「特務官殿!何事ですか!」
衛兵は、ラファエルの前に立ち止まり、荒息をたてながら尋ねた。
「スリだ、こいつとあそこに倒れてる奴も連行を頼む」
「はっ!直ちに!!」
「おい待て!!お前達が捕らえたら賞金が手に入らないだろ!!」
赤い布の男は叫んだ、失神した男に手錠を掛けていた。
「賞金稼ぎか、安心しろ!この国では自分で手錠掛けなくても、証人か証拠があれば、お前が捕まえた事になる!!」
賞金稼ぎ、未だ治安が不安定なこの世界で多くの犯罪組織が、多く存在し、世界各国の政府では手につけられない事が多く、賞金稼ぎに頼らざる得ない事も多くある。
その為、賞金稼ぎにも法が国によって違ってくるが存在する。
その一つとして、賞金稼ぎの手で手錠、拘束しなければならないが、アルミス国では、犯罪者を戦闘不能及び、事態鎮圧した賞金稼ぎ本人でなく他の者であっても証人、証拠さえあれば捕まえた事になる。
この場合、特務官であるラファエルはもちろん、大勢の人が証人となるため、成立する。
衛兵は、赤い布の男の元に駆け寄り、男を連合した。
赤い布の男は、なに食わぬ目線で、連合して行った衛兵達を見たが、すぐに目線を変え、呆然と立つセレナに歩みより、ピンク色の財布、セレナの財布を右手で拾い上げ、差し出した。
「お前の財布はこれか?」
「は、はい」
セレナは、自分の財布を受け取り、聞いた。
「あなたは一体・・・」
赤い布の男は、真っ直ぐセレナの目を見て言った。
「ディレイク・リーク、ただ賞金稼ぎだ」