曇り空
あなたの雨上がりはいつですか?
あなたの心の雨時はいつですか?
灰色の街が広がっていた。
そこには雨しか降っていなくて、雲ばかりでもちろん青空なんかなくて・・・・
なのに人々は上を見上げている 傘をさしている でも見上げている
みんな雨に当たるのがいやで傘をさしている でもその傘が邪魔で上が見れない
だから実際には上を見上げていない
でも、みんな上を見上げているはずだ 青空を求めて この雨が・・・・やむのを祈って・・・・
上には灰色の雲が 下には灰色の心を持った人々が
上に青空が広がれば下には青空を心に持った人々がそれぞれ蠢いているだろう。
灰色の心より青空を持つことを人は当たり前のように選ぶ。だから人々は明日は晴れるだろう言う希望を胸に秘めながらせわしく蠢く。
その中に一人だけ、傘を片手に、しかし傘は開いたまま先端を地につけて、灰色の空を見えげている青年がいた。雨水は彼の目に触れ、涙のように落ちていく。しかし青年は何てことなく上を見続けている。彼の髪の毛はずぶ濡れて潰れ、顔は泣きじゃくったように濡れつくし、衣服は雨ざらしになっている。それでも彼は上を見続ける。
彼は何を思いに更けて呆然と立っているのだろうか。
異変に気付いた人々がそう思った。
失恋したのだろうか、誰かが死んだのだろうか、失業したのだろうか、何かのショックを受け立ち直れないでいる?、ただ単に雨ざらしになりたかった?、人々の会話は段々と彼の話になっていく。
彼の方へ振り向く人々は当たり前のようにたくさんいた。全員振り向いているとでも言っていい。なにしろ彼がいつからいたのか分からないくらい前から彼はその場所にずっと立っていたのだ。彼が身にまとっている衣服がその時の経過を物語っている。全身ずぶ濡れになりながらも彼は立ち尽くしている。
誰かを待っているんだ
そう誰かが思い込み、近隣の人に囁く。
誰かを待っていていくら待っても来ない。だから裏切られたという気持ちと絶対来るという信頼の気持ちが入り混じってそこに立ち尽くしているしかできないのだ。
誰が信じたのかその一番もっともらしい仮説は人々の耳に届いていく。
涙もろい人は目頭を熱くした。
しつこい人だと呆れる人は軽いため息を漏らした。
なんてがんばり屋なんだと同情する人は心の奥底で励ました。
だれか分からないが、「がんばれよ兄ちゃん」と声掛ける人もいた。
その声がきっかけで人々はその青年に声をかけ始めた。
「絶対来るって」
「めげるなよ」
「振られたらまた見つければいいんだよ」
「何事も努力だって」
「自分なんかに負けるなよ」
「来るのはやっぱり彼女か?」
「人生2回や3階は裏切られるって」
「でもその後の立ち直りが肝心なんだって」
「負けないでね」
みんな口々にその青年に声をかけた。
そのたびに、人々の間では笑みがこぼれるようになっていった。
それから何分たっただろうか いつの間にか青年の姿は消えていた
見上げると青空が広がっていた
だれにでもある心の雨
それは好きになっても嫌いになってもいいもの
だってあなたの雨を止ませることができるのはあなただけなのだから