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恋獄迷宮
何故と、私は問い掛けます。
私自身に。
何故、あのひとを好きになってしまったのかと。
その答えは返ってくる事はありません。
ただ、私の胸の中で木霊のように跳ね返るばかりです。
この想いは抱いてはいけないものでした。
この想いは誰も幸せにしません。
形にしてしまえば、実る筈の幸せを潰して、侵してしまうものです。
私の大事なひと達を傷付けるだけのものです。
それが分かっていてなお、私はあのひとを想う事を止める事が出来ません。
どうか、どうか赦して下さい。
あのひとを密かに想う事を。
あのひとに想いを募らせる私を。
それから――淡い夢を見る事を。
私は思うのです。
この想いはきっと罪なのだと。
だから、私を苦しめ続けるのです。
終わる事の無い、出口の無い迷宮を迷い――彷徨うように。




