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虚空の【セカイ】と魔女  作者: 白河律
自身を殺す、その棺
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エクストラ その3・3


     3


 映画が終わる少し前に、寄せていた身体を離してから先輩を起こした。

 なんか疲れた顔をしているわね、寝起きで気持ち良さそうに欠伸をする先輩からはそんなお言葉を頂いた。

 ……そりゃ、この一時間は色々と心臓に悪かったですから、とは言えなかった。

 俺は代わりに無言で空を仰いだ。

 映画館の中なんでお空は見えませんが。

 そんな俺を先輩は、どこか意地悪そうに笑って見ていた。

 ――あれ、もしかして寝ていた時の事を幾らか覚えています?とはやはり聞けなかった。

 なんか、その後が色々怖そうだったので。



 それから、ショピングモールで美味しいと評判のラーメンを食べた。

 海鮮系スープのそれは噂に違わずの味だった。

 先輩も俺も満足していた。

 お腹を満たしてから先輩の希望でゲームセンターに行くことになった。

 それは正直言えば、ちょっと意外な事だった。

 普段、先輩からゲームをしているという話は聞かないし、そもそもゲームセンターに行くという女性自体そんなに多くはないだろう。

 その時は、クレーンゲームで何か気になる景品でもあるかな?くらいにしか思っていなかったのだ。


 そうして俺達、というより先輩に連れられてやって来た所は――

 ――甘い空気に満ちたカップル限定のコーナーだった。


 「先輩……ここって?」

 「カップル限定のコーナーらしいわ。前からどんな所か興味があったのよ」

 「へえ、成程。ところで俺達って付き合ってるカップルでしたっけ……?」

 「……付き合ってはいないわね。でもいいじゃない。端から見れば分からないと思うから」

 実際はどうなんだろう、先輩と俺はそんな風に周りの人達からは見えていたりするんだろうか?

 まあ、それは置いておくとしてだ。この場所は目のやり場に困る。

 本当に困るんだよ!

 だってみんなキスする勢いで見つめ合っていたり、身体を密着させてイチャついていたりするんだもん!

 そんな事をしたことの無い俺は雰囲気に馴染めない。

 あ、今ですよ。目の前で一組のカップルがキスしましたよ。

 ちゅーだよ、ちゅー。

 ネズミの鳴き声じゃないよ。

 思わず顔を逸らす。隣りを見れば、先輩も気恥しそうにしていた。

 「出ますか……?」

 「う、うん。早めに……出ましょうか。でも、その前にしたい事があるの……」

 先輩は声を上擦らせながらも俺の手を引く。

 そして一台のプリクラのゲーム機の中に入る。

 「先輩はプリクラがしたかったんですね」

 仕切りの付いた空間に入る事で、何となく落ち着いた俺はそう声を掛けた。

 「そうなの」

 それは先輩も同じようで、一息付いてから答えてくれた。

 「ダメ……?」

 不安そうな眼差し。

 それを見たらイヤとは言えず頷いた。

 このくらいいいよね、デートだし。自分にそう言い聞かせる。

 先輩と並んで撮る。ふたりとも不慣れで操作に戸惑ったけれど、なんとか撮影まで漕ぎ付ける事ができた。

 撮影のカウントダウンのアナウンスが響く中で、ポツリと先輩は言った。

 「殻木田くんは、その…私とじゃ、いやかしら……?」

 「え……?」

 「私とこうして一緒にいて付き合っているように見えたら…いや……?」

 「先輩……」

 先輩は俯いていて、その表情も沈んでいるように見えた。

 少し悩んでから俺は顔を寄せて、耳元で囁いた。

 「――いやじゃないですから」

 そういうと、満面の笑みで先輩が俺の腕に抱きつく。

 あ~また腕に感じるふくよかなふくらみの感触。

 同時に光るカメラのフラッシュ。


 ――ボクは変な顔で写りました。


エクストラも次でラスト!

まだ続くんですよ、これ(笑)

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