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虚空の【セカイ】と魔女  作者: 白河律
自身を殺す、その棺
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エクストラ その3・2


     2


 映画館に着くと俺は言った。

 「先輩、見たい映画を選んで下さい」

 「見る映画を決めてなかったの?」

 「はい。こちらで決めつけてしまうのもどうかな、と思いまして」

 「でも、それだと見る映画次第では結構待たない?」

 その事については対策が俺の頭の中にはあった。

「待ち時間なら気にしないで下さい。近くにショピングモールもあるので、次回の予約した後の待ち時間を潰す事ができますから!」

 「そう、ちゃんと色々考えてくれたのね。悪くない段取りだわ」

 先輩は頷く。

 「それにしてもデートの時って、映画見るのって定番なのかしら?遊園地とか水族館もあったと思うけど」

 その言葉を聞いてギクッとなる。

 「それも考えましたが、懐事情がありまして……」

 「成程。うん〝凄く〟納得したわ。別にいいわよ。今回、エスコートして欲しい、と言ったのは私だから」

 「うぐ……」

 皮肉めいた言葉に息が詰まりました。

 すいません、今月もピンチなんです。

 「そ、それで先輩。どの映画にしますか?」

 気を取り直して聞いてみた。

 「そうね、これにしようかしら」

 館頭に貼られたポスターを指さす。

 「これ…ですか……」

 それは――来るよ、街の悪夢というホラーものだった。

 前評判はシラね。

 そのくらいにはマイナーなヤツだ。

 「他にも話題の恋愛とかアクションとか、ありますけど」

 「なんて言えばいいのかしら、怖いもの見たさかしら?色々な意味で」

 ああ、そういう事か。

 割とチャレンジャーな。なんとなく先輩らしい気はするけど。

 ホラーを見る事にした。



 あんまり人がいないので、適当に真ん中の辺りに座る事になった。

 先輩と並んで座る。

 しばらくすると館内が暗くなって、映画が始まる。

 内容は正直微妙だ。

 みんなの夢の中に現れる殺人鬼が、やがてかつて実在したホンモノを蘇らせるというヤツなんだけど。

 なんだろう、こう近視感が。

 あれ、こんな話をどこかで?

 まあ、そんな事もあり映画があんまり怖く感じなかった。

 実物を見て、遭遇しちゃうとね。

 その事が微妙さを加速させる。

 そして思う。

 俺がこんな風に感じるという事は普段、そういう事ばかりに関わっている〝魔女〟の先輩はどうだろうか。

 見ると目蓋を擦っていて、とても眠たげだった。

 ああ、やっぱり退屈だったか。

 「先輩、眠いですか?」

 「うん、大分。昨日の夜は魔女として溜っていた案件を片付けたしね。その、あんまり寝てなくて……」

 「寝てもいいですよ」

 「デートとしては、マナー違反にならないかしら?」

 「俺は先輩に無理はして欲しくないです。だから、ゆっくり寝てください」

 「ありがとう……」

 先輩の頭が下がる。少ししてから微かな寝息が聞こえた。

 山岡の事で先輩に、俺は無理をさせてしまったんだろうか?

 そんな思いが浮かんだ。

 「先輩、ありがとうございます」

 起こさないように、小さく耳元で呟く。

 「ん……」

 その声に答えるように、軽く寝返りを打つ。


 そして、俺の方に身体を傾けると――

 ――そのまま肩に頭を乗せてきた。


 「せ、せんぱ……」

 声を掛けようとしたけれど止めた。

 先輩の寝顔がとても穏やかだったから、やっぱり起こす事はできなかった。

 けれど、アレな。

 年頃の男子にはこれはツライ。

 柔らかい身体が密着する。自分のものではないシャンプーの香りがする。時々、零れる吐息が耳元で聞こえる。その息が首筋に掛かる。

 しかもそんなボクの気を知ってか、先輩はより深く身体を寄せてくる。

 ち、ちょっと待った!

 腕の辺りにこう何かとても柔らかくて大きい、それでいて弾力のある膨らみをふたつ感じる~!

 死ぬ、死んでしまう!

 どれだけ耐えればいいんだ、これに。

 時計を見れば、映画が終わるまで一時間くらいあった。

 ヘブン、いやヘルか?


 それからぼくはえいがをぜんりょくでみたよ。

 わきがりそうにそうになるぼんのうとたたかったよ。

 さとりをひらきそうだったよ。


 いっそ、拓け!

 こんにゃろう!


殻木田君も男なんですよ。

ガンガレ!

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