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自身を殺す、その棺
棺――僕の目の前に棺がある。
その蓋が開いていく。
中には何も無い。ただ、暗く深い闇が延々と続くだけ。
怖いと思う。身体が震える。
その中に入ってしまったら、きっともう戻れない。
「おいでよ――」
棺の中から声がする。その声には聞き覚えがあった。
ああ。それは僕の声だ。
僕自身の声だ。
不意に思う、その声に身を任せてしまいたいと。
これからの未来に何も期待しなければ――何もかもを諦めてしまえば、もう苦しまずに済むから。
それでもまだ、僕は進めずにいた。
だけどその声は、どこまでも胸に甘く響く。
四章開幕。
今回はクラくないよー酷いことないよー




