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三月に雨は降り続く――
ユメ。夢。ゆめ。
それは幻。
それでもーー
しばらくユメを見ない。
それは現実で夢を見なくなったから?
分からない。
いつしか見たユメは現実の中で押し流されて、もう手が届かない。
ただ、ユメを抱いていた頃の埋まらない喪失感が残るだけ。
それでも、手を伸ばす。失くしたユメに。
ユメを見るように。
見続けるように。
そうして――他のモノはナニも見ない、掴めない。
雨が降る。
降っていて欲しいとすら願う。
そうすればこの目から流れる滴に気が付くことも、きっとないから。
身体が冷たくなっていく。
それでも――
不意に――その手を取る温もりを覚えた。
降り続く雨の中で。




