三章 三月に雨は降り続く―― あらすじ
三月に雨は降り続く――
虚木小夜と殻木田順平の出会いから、一ヶ月が過ぎた三月。
降り続く雨の中、赤子を抱いた母親は追われていた。
蒼白い不可思議なヤイバを持つ少女に。
母親が逃げ込んだのは廃墟。しかし、少女からは逃げ切れなかった。
少女は母親に――真実を告げる。
「それは――あなたが見ているユメというマボロシよ」
母親が見たのはマボロシ。赤子のマボロシ。彼女は夫を事故で亡くした時に、お腹の子を流してしまっていた。絶望の淵にいた彼女が生きていくには、怪異が引き起こすマボロシが必要だった。
母親は怪異を操り、少女を襲うも返り討ちに遭い――
――母親は大事なモノを、喪った過去さえも記憶を、全て刈り取られて忘れた。
記憶を刈り取った少女は、雨の降る街を濡れながら歩く。
かつて大事なモノを喪ったのは少女も同じ事。
その痛みも涙も、喪失を知りながらも魔女として他者の記憶を、想いを消して生きている。その重さに、冷たさに心は晴れない。
ひとりぼっち。
そんな少女に傘を差しだしたのは――
夢を見た女性
交通事故で夫を亡くし、そのショックでお腹の子を流産してしまった女性。
そんな彼女はそれでも、生きるために夢を、マボロシを見た。
大切な子どものいる夢を。