28/160
二月の夜の闇は昏く、深く
暴力というひとの悪意。 それが何故起こるのか。
助けて――
助けてください――
人の心には昏い、深い闇がある。
自分より、ヨワイニンゲンを嗤うという闇が。
自身には無い、不幸を甘受するニンゲンを見ては、自分はまだ幸福であることに安堵し、ヨワイニンゲンのその迂闊さを嗤うのだ。
――昏い悦び。
なんで――
どうして――
ひとり、ひとりの悪意は小さくともそれが、集まることで悪意は激しく大きくなっていく。
彼らにとって、ヨワイニンゲンは悲劇の舞台を踊る道化師でしかない。
彼らは凄惨な、愉悦の仮面を付けて嗤うのだ。
二月――
――春は近くとも、最も寒く夜の長い月。
その闇は昏く、深く。
誰かが言った。
夜明け前こそ、最も闇は暗いのだと。
ハハハ――
望みもしない観客達を尻目に、道化師は狂い嗤う。
仮面の下で世界を呪い、憎み続ける。




