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虚空の【セカイ】と魔女  作者: 白河律
君が怪物になってしまう前に
26/160

エクストラ その1・3


     3


 私を連れて殻木田くんが訪れたのは、駅の近くの行きつけだというラーメン屋だった。

 じゃんがら――入口の暖簾にはそう書かれていた。

 夕食時を迎えた店内は結構、人が入っている。

 「先輩はどれにしますか?」

 券売機の前で殻木田くんは、そう私に尋ねる。

 「えっと、どれにしようかしら」

 券売機に書かれたメニューを見てみるが、しゃんぽん、ぽんしゃんとか書かれていて初めて訪れた私には、なんだか分からない。

 「あの、殻木田くん。私……」

 「ああ――」

 私の視線で事態を察したのか、彼は私にこう尋ねた。

 「先輩の好みの味ってありますか?味噌とか醤油とか」

 「分からないわ。ラーメン自体、余り食べたことが無いから」

 「そうですか。じゃあ、こうしましょう!」



 カウンター席に案内されて、しばらくした後、ふたつのラーメンが運ばれてきた。

 「薄めの味の物と、少し濃い物を頼んでみました。一度、味見してからどちらを食べるか決めてください」

 殻木田くんがレンゲを渡してくれる。

 レンゲを手にまずは濃い物からスープをすくい飲む。次に薄めの物を。

 ふむ。

 「濃い物の方がいいかしら」

 「わかりました。それにしても……」

 殻木田くんが私を見てクスリ、と笑う。

 「前々から思っていたんですけど、かなり甘いものが好きだったり、濃い味を好んだり先輩って結構、はっきりした味が好みですよね。案外、子供舌――」

 ギロリ、と睨む。

 「殻木田くんなんて知らない」

 そっぽを向いて、ラーメンを食べ始める。

 スープと一緒に麺を啜る。

 口の中で味が広がる。

 美味しい。


 「いらっしゃい、殻木田くん。久しぶりじゃない」

 「あ、どうもお久しぶりです」

 殻木田くんがなにやら店員と話している。

 私はラーメンを食べ続ける。

 「また、暇があったら店手伝ってよ。ところで今日は……おや、おや、随分と美人さんを連れているね。彼女かい?」

 「違いますよ。学校の先輩ですよ」

 「本当かい?」

 何やら視線を感じる。

 私はラーメンを食べる。

 「なるほど。確かにそうらしいね。こんな話をしているのに、何の反応も無い。これだけ夢中で食べて貰えると冥利には尽きるけど。こりゃ、脈はないね。諦めな、殻木田君」

 「はあ……そうですか」


 今の私には、周りの声は何も聞こえなかった。



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