141/160
機知の刃
時々、思う。
世界はドコカ、酷く間違えているんじゃないかと。
だから世の中には正義を声高々に叫ぶ人たちもいるし、それに反発する人もいるし、そんなの知らないって人達もいる。色々な人間がいて、みんな違っていて、みんな変わっていて、みんな違う考え方をしてる。
ねえ、これって本当に素晴らしい事?
これじゃあ、ナニガ正しいかなんて分からないじゃない。
だから、みんなが罵詈雑言を叫ぶように混沌としているんだよ、このセカイは。
そんなセカイは、私を苛立たせるだけ。
キチ、キチ、キチ……
その事に気が付いた私は、きっと賢い。
そんな私が、みんなと同じセカイに生きているなんてオカシイ。
みんなと同じ〝フツウ〟の中に埋もれているなんてオカシイ。
私は――特別だ。
キチキチキチ……
確か――人より賢い事を〝機知〟と言った筈。
キチキチキチ、キチキチ……
ドコカで音がする。
それはポケットに隠したカッターナイフの刃が、そそり出す時にする音に似ている。




