美醜の庭
「今日は新進気鋭の現代芸術家――上代啓二さんに、お越し頂きました!」
「呼んで頂き、ありがとうございます」
「おやおや、こうして実際にお会いしてみますとよく分かりますが、本当にイケメンですね~!俳優さん、顔負けですね~!」
「自分では、そこまで自覚は無いですね」
「またまた~!上代さんと言えば芸能人とのお付き合いも含め、熱愛報道も多いじゃないですか~!」
「自分としてはあくまで――モデルとしての、お付き合いのつもりではありますが。しかし、そうした付き合いも含めて、創作の原動力になっています」
「そうなんですよ!そんな上代さんは先日、海外で行われている栄えあるコンテストで、特選を受賞なされたんですよ~!」
「受賞できて、本当に嬉しかったです」
「受賞された作品がこちらなんですが……これは非常に艶やかな作品ですね!全裸で、うつ伏せに横たわった女性から、朱い花が開花しているという構図ですかね~!艶の中にも、どこか恐さも感じます!」
「そうですね、自分は普段から〝女性〟や〝死〟それから〝独立〟といったテーマで作品を創作していますからね」
「それは上代さんの、芸術家としてのポリシーですかね?」
「ええ、僕はこう思うんですよ。醜いモノは滅べばいいと」
「と、言いますと……」
「依存してしか生きられないモノさ……そんな不完全モノ、全て」
◇
「はあ…はあ……」
街灯の光だけが、薄暗い部屋に差し込む。
その光が部屋のベッドの上で、上気した裸身を晒し、荒い息を吐く女性を照らす。女性は激しい行為の後の為か、その意識は朦朧としていた。
部屋に茫と明かりが灯る。
それは、部屋に備え付けられたテレビの光。
そこには、テレビのワイドショーが映し出されていた。
その画面を見つめるのは、ワイドショーにも出演している男――上代啓二である。
全裸の上代啓二は、暫く画面を見た後で、ベッドに横たわる女性を見つめた。
ツマラナイモノを見るような、酷く冷めた眼差しで。
それから、ある少女の姿を思い浮かべた。
その少女を見つけたのは、本当に幸運だと思った。
月夜の下で、艶やかな長い黒髪が揺れる。
整った顔立ちをしていて、細見でスタイルも良い。
目付きは物憂げで、まるでこの世には存在ものを見ているかのよう。
浮世離れした雰囲気を身に纏っていた。
なによりその手には、不可思議な青白い刃が握られていて――
その姿だけでも、ひとつの芸術になってしまいそうだった。
知らずの内に、上代啓二は自分の鼓動が、肉体が再び昂ぶっているのを感じた。
少女の事を懸想しながら、自身の昂ぶりをぶつける為に、ベッドの上の女の元に戻った。
女性の快楽にくぐもる声が、部屋に断続的に響き続けた。
新章開幕です!
作者の芸術家さんに対する偏見に満ち満ちているような……(笑)
色々アブナイ章です。




