7月2日 夏祭りのうろNOW
7月2日、晴れ。暑い。
新入社員である布浦歌風は、お茶くみも普通レベルだし、良くドジを起こしてしまうし、人見知りな面もちょっとあった。けれども、決して無能な社員と言う訳ではなかった。
「いやー、すごいね、布浦君。まさか僅かこれだけの間に3組合わせて10000枚の団扇を作ってくるだなんて……」
「…………」
恋のお相手である兎山課長に褒められようとも、ただただ布浦は黙々と作り始める。「布浦歌風には内職の才能がある」、そう言って団扇作りの仕事を任せるように言ったのは彼女の幼馴染である忘路光世であった。
うろな町との連携を勧めたい『株式会社・兎山』にとって、町の皆が集まるうろな夏祭りは絶好のイベント事であった。そしてその日のうちに参加を表明し、そして『うろな町アイドルプロジェクト』のほうではプロデュース中の飯田花音と花織優華の2人のアイドル会場の設置と運営、そして『月刊うろNOWプロジェクト』のほうでは月刊うろNOWで連載中の作家陣のサイン会が開催される運びとなった。
問題はそのサイン会である。実は月刊うろNOWでは二人羽織先生の『ここは魔物町』、CS4.8先生の『死亡予定少女』、そして黒口穂波先生の『DoMA』の3作品のコミック化を進めていた。勿論、コミック化する際は文章量とかページ数が足りないため、ある程度の加筆、および修正を施して、4か月ペースで毎刊発行出来れば良いなという目途は付けていた。しかし、その発売は8月。
サイン会にはどう取り繕ったとしても間に合わないし、困っていた。
なんとかして、サイン会を効率よく、かつ皆が満足出来る物を模索していた所、兎山課長がアイデアを出した。
『作品のキャラクターをプリントした団扇を配布して、それを持っている人にサイン会参加の条件はどうだろうか?』
それに対して、上層部は納得した。分かりやすく見分けも付くし、団扇と夏祭りは相性的にも良い。そして絵が良いという事で、8月号のコミックの宣伝にもなる。上層部はこの団扇を3人分という事で、1人4000枚、つまり12000枚作るよう課長に命じた。
しかし困ったのは、こちら側。アイデアを出したのは良いし、作家陣も理解して特製の絵を描いてくれたが、これは無料配布する予定なので外部に委託して手数料を取るのは忍びない。12000枚プリントアウトするのは良いとしても、それを団扇に張るのはかなり難しい。困り果てた末、内職が得意という光世の意見を信じて、布浦に団扇張りを命じた。
これが当たりであった。
彼女は寸分の狂いもなく、黙々と数をこなしていった。どうやら彼女は単純作業のほうが性に合っているらしい。このペースならば3日後の夏祭りにはきちんと配布出来るだろう。
「あなたには何かお返しをしないといけませんね」
と、黙々と作業をする、優秀な新入社員に、どうお返しをしたものかと兎山課長は考えるのであった。
夏祭りでうろNOWのほうでは、サイン会を行いたいので、サイン会をお求めの方は時間を確認して、特設会場で手に入る団扇をGETしてサインを貰ってください。
また、飯田花音を話題として使わせていただきました。