6月25日 ハルツバキ! 頑張れ!
6月25日、全国的に晴れ。そして熱い。
「クッ……! あの男めニャー! 私を完全なる手足のように使いやがってニャー……!」
ちょっと暗くなりつつある時間帯の、それでいてほどほどに蒸し暑い夜の下、二人羽織先生の下でアシスタントとしての作業に励むハルツバキは、買い出しを行った末に生まれた中身が沢山入った買い物袋を持ってぜいぜい息を切らしながら、うろな町の道路を歩いていた。
「ぜいぜいニャー……。ぜいっニャー……」
初めは嫌々ながら付けていたこの語尾も自分にすっかり馴染んでしまっている事に、ハルツバキはちょっと怖くなりつつ、気持ちを新たにするために拳を握る。
「我々の反妖怪軍団の目的にして目標の、世界征服を、私は諦めた訳ではないのニャー! 今はベタやらトーン張りをされているばかりニャーが……必ずやってやるニャー! ニャーハハハハ!」
ハルツバキは高らかに、そして激しく笑いながら歩みを止めずにとぼとぼ歩いている。そうして歩いていると、裏道で見た事のない男女が人目をはばからずに(いや、裏道で隠れているからはばかっていると言えるのだろうか?)イチャイチャしているのを見て、チッ!とハルツバキは舌打ちをする。
「……これだから人間と言うのは嫌なのニャー。理性を外したように貞操観念が緩みつつも、それでいて理知的な行動を求めやがるニャー。人間は妖怪よりも複雑にして、意味不明で、理不尽なのニャー。
―――あっ、あの人達の背後はトーン番号48で、ってニャ!?」
いつの間にか自分の目に映る風景に、どう言うトーンを張れば良いか考えしまう、漫画家のアシスタント脳になってしまう自分に、ハルツバキはガクリと膝を付いて倒れて泣きだしていた。
「うぅっ、いつの間にこんな頭になってしまったのニャー。最悪過ぎる、なのニャー。
で、でも妖怪としての誇りと矜持と、それから、えっと……まぁ、やってやるのニャー! ニャハハハハハー!」
と、そう言ってハルツバキは無理矢理テンションを上げて帰り道を進んでいた。
「『とうどう整体院』でーす! よろしければマッサージを受けて、肩こりとかを解消していきませんかー?」
『とうどう整体院』と言う整体院の前を通り過ぎようとして、そうやってどうにかして客を呼び込もうとしている星野美里の声を聞いて、
「はいはーい! 受けたいニャー!」
自分の欲望真っ盛りの要求を通すのであった。
……。
【6月25日 ハルツバキ……頑張れ】
綺羅ケンイチ様より、星野美里さんをお借りしました。




