6月21日 裏方同士の掛け合い
6月21日、天候晴れ。
「君の所のアイドルは、やってくれるね」
と、某アイドルから眼鏡と言うあだ名を付けられている忘路光世はパソコンで印刷された2枚の書類を、その某アイドルのマネージャーである阿佐ヶ谷修也へと叩きつけるようにして渡していた。
1枚目の書類には昨日放送された「フライ・フライ・フライデー!」の炎上アイドルとして騒がれたニュースの記事、そして2枚目の書類にはその記事についてのネット上での反応のページである。
それを見て、阿佐ヶ谷修也さんはふふんと勝ち誇ったような顔でこちらを見ていた。
「言っただろう。あの娘は今後のアイドル世界を背負って立つ、日本一……いや業界一……いや、世界一のアイドルになる人物であると!」
「相変わらず、惚れ込んでますねぇ。阿佐ヶ谷さんは」
ふー、っと忘路は買って来た缶コーヒーを飲んで落ち着く。阿佐ヶ谷の方も同じように買っていたジュースを飲んでいた。
「君の手腕はアニメのタイアップの件である程度は凄いと思っていたけれども、まさか飯田夏音の方も正直凄いと思った。
「アイドル戦国合戦=天下を狙う新人達=」での1位との差1秒と言うイメージ戦略、昨日の「フライ・フライ・フライデー!」での炎上した格好での歌の披露。飯田夏音は生粋の賭博士、ギャンブラーか何かなのかい?」
「……私がプロデュースする飯田夏音はギャンブラーではない! このアイドル業界を背負って立つ、トップアイドルだ!」
「――――――どう違うんだか。まぁ、一応昨日の件と「アイドル戦国合戦=天下を狙う新人達=」の件の2つで、上層部に認められた。これからは表立って、君達をサポーティング出来るだろう」
「おおっ!」
「……うちにも兎の被り物を被っている、有能な課長が居るんでね。課は違うが」
お互い、腹の探り合いをしながら話を進めている忘路と阿佐ヶ谷。
「まぁ、とりあえずはアイドルプロジェクトは本格始動と言う感じかな。君に朗報の事実を伝えておこう」
と、そう言って忘路は鞄の中から1枚の採用冊子を取り出す。
「花織優華。飯田夏音に合せるために、こちらで用意したアイドルだ。君のお眼鏡にかなうかどうかは分からないが、少なくとも合わせるだけはしておいた方が良い。一番になるためにも仲間は居た方が良いだろう」
「おぉっ! そうだな、忘路君! で、この少女とは……」
「冊子の裏に電話番号とメールアドレスを悪用しないと言う条件で書かせた。それを使って連絡を取れ。後は知らん」
じゃあな、と言ってその場を後にする忘路を阿佐ヶ谷は嬉しそうな顔で見つめていた。
「花織優華、か」
寺町朱穂さんより、阿佐ヶ谷修也さん、飯田夏音さん(名前のみ)をお借りしました。