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月刊うろNOW 6月号

【目次】

【特集;うろなの極意伝授】

【恋愛アンロック! 作;恋愛坂胡桃】

【死亡予定少女 作;CS4.8】

【特集;6月の花婿】

【ここは魔物町 作;二人羽織】

【DoMA 作;黒口穂波】

【今月のおまけ】

【来月号について】


【特集;うろなの極意伝授】

 皆さんは何かをしようとして失敗した経験はありませんか? また絶対に失敗しない方法があると便利だと思いませんか? 今回、私はそんな事を知るために、完璧優等生として有名な天波香さんに話を聞かせていただきました。天波香さんはうろな高校に転校生として入って来ましたが、成績優秀、運動神経抜群、そして容姿端麗と非の打ちどころのない方でございます。そんな彼女に、どうやってそのような成績や運動を維持しているかを聞かせていただきました。

 天波香さんに聞かせて貰いますと、天波香さんは元から成績、運動、そして容姿に関しては普通と言うか、平凡だったみたいである。とは言っても少しくらいは才能があったみたいだそうではあるんですが。けれども他の人に負けたくない、自分が上に立ちたいと言った上層意識を持つ事によって優秀になって来るんだそうです。一番大切なのは、そう言った自分よりも高い意識を持ち、それを維持し続ける事が大切なんだそうです。その意識を高めるためには、日々想いの反省と反復が大切になってくるのだそうだ。大切のは持ち続ける事。それさえ気を付けていれば大丈夫らしい。必要なのは、それを高める努力らしい。

 そして大切なのは一度覚えた事を忘れないように覚える予習と復讐、そして誰にも負けないと言う強い意思みたいである。負けたくないと言う気持ちは大切ですけれども、それ以上にそれを実行出来るほどの力を持ち合わせる事が大切みたいです。皆様も何事も諦めせず、それを行うための努力を怠らなければ必ず道は開けると言う事を忘れてはいけません。

記者;澤鐘日花里


【恋愛アンロック! 作;恋愛坂胡桃(れんあいざかくるみ)

【2章 "こころ"溢れる豊かな生活についての事情】

「やってくれたねぇ、山田心桜(やまだこころ)君。それは重要な違反行為だよ」


 ――――――忘れ物に気付いて僕、宮藤悠馬(くどうはるま)は、口から血を流しているクラスメイトの山田心桜を目撃した。そしてその後、僕と心桜はガタイの良い黒いサングラスをかけた謎の黒服集団に学園長室に連れて行かれた。そしてそこには呆れた顔の、溜め息顔の学園長が居ました。


「学園創立以来の失態だよ、心桜君。君は優秀だと思っていたのに……。はぁ、私の監督責任が問われるじゃないか。どうしてくれるんだい?」


 と、十三槍学園学園長、箒星打水(ほうきぼしうちみず)学園長は山田を攻めるようにそう言った。毛先がくるりと纏まった透き通るような銀色の髪と鋭利な刃物のようなクールな瞳を持った、所謂出来る美人と言う印象が強かったはずの箒星学園長の姿は今はどこにもなく、ただただ落胆の溜め息を吐く女性の姿しか無かった。


「こう言う時のために、色々と抜け道や事前準備などが制定されているのにも関わらず、君がやった事で水の泡だよ。少しは周りの迷惑とかも考えてくれたまえ」


「……はい、すいません」


 と、攻めるように言う箒星学園長の前でずっとうつむいたままの山田。何度も頭を下げる山田の姿を見つつ、僕は学園長の方を見る。


「え、えっと……学園長……」


「……ん? あぁ、そうだった。心桜君ばかりを気にしまくっていたせいか、君の事を抜けていた。すまないね。

 えっと、宮藤悠馬君、だっけ? 君には事情を説明すべきだよね」


 そりゃあそうである。山田が案外眼鏡をかけていない方が可愛らしいと言うのは結構重要な事だとは思ったが、今はそれよりも驚いている事がある。山田が口から血を流していた事だ。いや、近くに首から血を流している少女が居たし、どちらかと言うとあれは……。


「吸血鬼、と思ったんだよね。君は」


「へっ? え、えっと……その……はい……」


 僕はそう答えた。あの行動は物語における人の血をすする夜の王、吸血鬼にしか見えなかった。でも、吸血鬼と言えば日光なり十字架なり、それからニンニクと言った色々な弱点がある事でも有名である。けれども山田は普通に朝から学校に来てるし、十字架なんか探せばいっぱいあると思うがそれで倒れたなんて聞いた事がないし、何か……


「でも……吸血鬼……でも無いかなぁ……って。日光とか大丈夫ですし、山田」


「まぁ、そうなるよね。心桜君は君と同じ昼間部の生徒だしね。それが実は吸血鬼でした、って言われても素直には受け入れられないよね」


 アハハ、と笑う学園長。


「まぁ、一言でまとめるとだね。山田心桜君は、隔世遺伝なんだよ」


「かくせい……いでん?」


「生物を習った事があれば分かる単語だけど、ちょっと宮藤君には速すぎたね。分かりやすく言えば、祖先の形質が今になって現れるという……所謂先祖返りさ。

 先祖返りとは、例えば祖母の母親の髪だけがブロンズ色で、その形質が今になって現れるような物さ。ここまでは理解できたね?」


 コクコクと頷く僕。それを見て学園長は「あとは任せたよ」と言って、山田のほうを見る。山田はうっと小さく(うめ)くと、ぼそぼそっとした声で話し始めた。


「……私の家、祖先に吸血鬼が居たらしいんです。"らしい"って言うのは、私のような、血を吸いたがる吸血鬼みたいな子が私以外、居なかったからと言うのが理由なんですが。ともかく、私の身体には吸血鬼の、血を吸いたがる吸血衝動が受け継がれているんです」


「とまぁ、そう言った子供達をうちの学園では因子保持者(ファクター)と呼んで優先的に入学させている。うちの夜間部には多くの因子保持者が居るよ。そう言った子達は心桜君みたいに、夜に強い形質が多いから夜間部が多くなってしまうんだがね」


 「全く……困ったものだよ」と言う学園長。今、さらっと重要な事を言われた気が……。


「さて、宮藤君。ここからが本題だ。本来、秘密を知った生徒は気絶させて記憶違いを装わせるのが通例だけど、それも間に合わなかったからね。

 と言う事で、宮藤君。君には今から彼女と、部活動(・・・)をしてもらうよ」


 と何とも嬉しそうな顔で、学園長はそう言うのであった。


「ご、ごめんね……宮藤君。私のせいでこんな目に巻き込んじゃって……」


「いや、山田のせいじゃないって。本当」


 その後、僕と山田は学園長室から返されて、夕焼け空の下の廊下を歩いていた。あの後、学園長からは部活動をするよう強制勧告を受けた。


『一般人には知られてはいけないと言う校則が昔、作られたらしいけど、それを破ったのが先代の学園長だよ。先代の学園長は、この校則を"関係者なら大丈夫"と言って、一般生徒にばれた時は部活を作って一緒にさせる事を提案したんだ。これによって、前までならば君の記憶を消すために色々と尋問……いや、ちょっとしたお話をするんだけれども、これのおかげで良くなったんだ。いやー、本当に良かったね、宮藤君。じゃあ、君と心桜君は今日から同じ部活――――――そうだね、交流部として活動してくれたまえ。

 うん、解決♪ 解決♪ 後、これを受け入れなかった場合、どうなるか分かってるよね?』


 そんな事を言いがら、机の中から取り出した鞭をバシンバシンと叩く学園長に、どう反論出来るだろうか? いや、出来ない。

 と言う訳で、僕と山田は明日から強制的に、何をするかも決められていない交流部なる部活動をしなければならないのである。


「う、ううん。私が……ちょっと油断して、あそこで女の子を襲っちゃったのが原因だもの。あれさえしなければ、宮藤君にご迷惑を……」


「だから良いって、もう。もう済んだ事だろう」


「う、うん……。でも、ごめんね、宮藤君」


 本当にごめんね、と言い、頭を下げる山田。その山田に、僕は視線を合わせなかった。

 だって、今までは地味目な眼鏡をかけているちょっと地味な娘と言う印象しかなかったのに、眼鏡をとった今では透き通るような瞳もすっと通った鼻も、後ちょっと大きめで目に毒な胸も、その全てが魅力的なのだから。


(く、くそっ! なんで今までこんな可愛い子が横に居たとか気づかなかったんだよ! 僕のバカ、バカ!)


「ど、どうしたの、宮藤君? 大丈夫?」


 僕が自分の事を叱るような気持ちで頭を殴っていると、山田が大丈夫と言いながら僕の方に来る。う、うわぁ、そんな柔らかくて良い匂いがして、なおかつ魅力的な胸を無防備に押し付けないで欲しい! 限界だから! 色々と!


「だ、大丈夫だよ……。う、うん」


「そ、そう。よ、良かったぁ」


 ホッと一息を吐く彼女を見てなんだか罪悪感を覚える僕。こんなにも心配してくれている、優しい子にこれ以上迷惑はかけられないと。


「ま、まぁ、明日から部活動だけど……とりあえず、頑張ろうぜ、山田! じゃあ、な!」


「あっ、宮藤君!」


 僕はそう言って、彼女から逃げるようにして廊下を走る。これ以上、ここに居られないと思ったからである。あれ以上居ると、なんだかとっても落ち着かない気持ちになる。僕はそうやって走ってたが、ふと思い出した事があって後ろを振り向く。そして山田に聞こえるように大きな声で言うのであった。


「やーまーだ! お前、そっちの眼鏡してないほうが良いぞー!」


「////////////」


 その言葉に、彼女は夕焼け空の下でも、そしてここからでも分かるくらい頬を真っ赤に染める。その仕草に、さらにキュンとなりつつ、学園長が僕に言った言葉を想い出していた。


『山田君、君には彼女と恋をして貰いたい。それが君の役割なのだから』


「……役割ってどう言う意味なんだろう」


 答えが分からない問いを、僕は思い続けるのであった。

【次回へ続く】


【死亡予定少女 作;CS4.8】

【第6話 幸福? ソレトモ不幸?】

 僕のクラスに転入した王子保富美(おうしおふみ)は、非常に女子生徒からの人気が高かった。外国で香水において高い地位を獲得している王子保さんは、美容に対して興味津々の年頃の女子生徒達に対して非常に高い地位を獲得していた。まぁ、簡単に言えば、


「うっそー! 王子保さん!?」

「あの香水ブランドの王子保様!?」

「富美様がこんな場所に……ここは天国!?」

「ハァハァ……富美様……//////」


 今、クラス中の女子連中のほとんどは彼女に夢中であると言う事である。まぁ、若干怪しい雰囲気は漂っているが概ね問題ないだろう。

 そんなこんなで、王子保さんはうちのクラスに馴染んでいた。いや、他のクラスメイトが王子保さんを馴染ませていたと言うのが正しい表現かも知れないが。


「いやー、ふみふみは大人気でお姉さん、嬉しいよ!」


「今日会った奴が何を言っているんだ」


 と、僕は眼の前で彼女の事を良く知っているような風を装っているあずさの頭にチョップを入れた。彼女は痛そうに頭を押さえてうずくまる。


「痛っ~た~い。何すんのさ、武人! 仮にもこっちはか弱き乙女だってのにさ! ほらほら、うっふ~ん♪」


「か弱き乙女は多分、自らうっふ~んとか言わないと思うぞ」


「まぁ、そうだよね~」


 とあっけらかんとした言いぐさのあずさ。まぁ、彼女が適当に言っているのは分かっていた。最も、僕の内心はドキドキでいっぱいだったが。その皆の話題の中心に居る、王子保さんの事で。


 今日の朝、僕の携帯に入っているアプリ、『アイサ』には2件の予言ニュースが届いていた。

 1つは杖を持った天使が運んできた、『麻薬組織壊滅』と言うニュース。それは30分前、本当に起こったニュースであった。そしてもう1つは蝋燭を持った天使が運んできた『女学生死亡』と言うニュース。隣町に住む犬伏公穂(いぬぶしきみほ)なる人物が40分前に死んでいた。

 杖を持った天使が運ぶのは幸福を呼ぶニュース、そして蝋燭を持った天使が運ぶのは不幸を呼ぶニュース。その規則に当てはまらない、ちゃんとしたニュース内容であった。


 しかし(・・・)、問題は王子保さんの事である。

 王子保富美さんの来日は僕の予言メールに来ていた。そしてその時、アイサは杖と蝋燭の両方を持った天使で現れた。つまり、僕にとって幸福を呼ぶニュースでもありながら、不幸を呼ぶニュースであると言う事だったらしい。けれども、どこが不幸を呼ぶのだろう?


「ただの普通の女の子にしか見えないけどなぁ……」


「そんな事はないよ~、武人」


 と、僕のそんな言葉に反応するようにしてあずさがそう言葉を返す。


「私達くらいの年なのに、もう世間的に高い地位を持っているんだから、凄いと思うな~、私は。私なんて、将来の事なんてさっぱりなのにさ~」


「まぁ、確かにそうかもな」


 もう既に職に就いているのは確かに凄い事なのかも知れない。そこには恐らくだけれども、彼女にしか分からないような苦労や努力があったと思うから。確かにあずさの言う通り、彼女にしか分からないような苦労があるのかも知れない。問題はその苦悩の理由がなんであれ、それがアイサが出した天使にどう関係して来るかと言う事である。


「……大変な事にならなければ良いんだけれども」


 僕は小さくそう呟いていた。


 一方、その頃僕の知らない場所で、物語が進んでいたとは思いもしなかった。

 他ならぬ、王子保富美が来日した事によって。

【次回へ続く】

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