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11月30日 ビストロ取材

 11月30日、天候晴れ。

 11月30日、天候晴れ。本日は兼ねてより、澤金日花里が料理店『ビストロ』への取材をお願いした日である。



 それ故に『ビストロ』の店主である葛西拓也は、取材を受けるために身構えていた。しかし、



「何だ、これ……」



 葛西拓也は目の前で臆病そうに怯えている記者である彼女を見て、取材に身構えていたのが馬鹿らしくなってしまった。店内は暖房がきちんと出来ている訳では無いけれども、客商売である以上、ある程度過ごしやすいようにしているはずだった。けれども澤鐘日花里は決して肌を見せないように、黒いコートを着込んでおり、手袋をまるで手術の時の医師のようにしっかりと嵌めている。そしてぶるぶると震えている彼女を見て、そろそろ改装工事をしないといけないかと葛西拓也は思ってしまっていた。



「で、では……しゅ、取材を始めさせていただきますね。かねてよりの友達とは言え、この店の従業員では無い友人に留守番をさせた事のある葛西拓也さん」



「あ、あぁ……」



 そう言えば、そんな事もあったにはあったが、どうしてそんな事を今持ち出すのかと葛西拓也は思った。しかも、ほぼ見ず知らずの者同士、今日の取材にて初めて会うくらいの間柄と言うのに。



「え、えっと……この取材は『月刊うろNOW』の特集記事、【うろな町の料理店、料理店『ビストロ』】のための取材である事は、ご了承されていますよね?」



「その件に付いては、そちらから前にご報告が……」



 そう、この取材はこの彼女、記者である澤鐘日花里が頼んできた取材内容であり、葛西拓也は特に断る理由も無かったため、お受けしていた。その事は頼み込んでいた彼女自身が一番知っているはずだと、葛西拓也はそう思っていた。



「ご、ごめんなさい……。い、一応、規則ですので」



「それは仕方ないな。はい、了承しました」



「あ、ありがとうございます……。では、まずこのお店を始めたきっかけについて、お話をお願いします」



 このお店を始めたきっかけ、か。と、拓也は自分の事を、両親の事を思い出す。料理屋にて両親が頑張る後姿を見て、自らも一生懸命料理を勉強して、今の自分になったと言う事を。そしてその事を拓也は日花里に、これを見てくれるかもしれない読者へと伝えるために、声に出す。



「両親が料理屋を営んでいて、それに加えて自分も料理が好きで、一人前の料理人になる為の修行を名目に店を立てたのがきっかけですかね」



 と、拓也は自身の胸の内を語った。日花里は「なるほど……」と一生懸命、メモを取っている。



「で、では次に……お店をやって一番良かったなと思う事は何でしょうか?」



 そう聞かれ、拓也は店内を見渡す。初めは一人前の料理人になるための修行と考えて、この立地条件で果たして人はくれるかと言う事を心配した。だけれども、今ではこう思う。

 ここでしか見えない景色があると言う事を。客との関わりが強いここでこそ、見えてくる物があるのだと。



「一番良かったなと思う事は、常連客が出来た事ですね。

 今でこそ、多くのお客様が来て下さっていますけれども、初めての常連客のお蔭で、こんな取材まで来てくれるほどまでに来れたので尚更そう思います」



「な、なるほど……。お客様との関わりを大切にされているんですね」



 なるほどと、メモ帳にささっと書いていく日花里。そして、「これが最後の……質問になります」と前置きした後、



「え、えっと……ここは料理店ですよね? ですから、料理を作る上で大切にしていることは何かあります……でしょうか?」



「それは勿論、決まっています」



 そう、先の2つの質問よりも簡単に答えられる質問である。何せ、拓也はいつもその事について考えながら、このお店を営業しているのだから。



「それはお客様の期待に応える事です。例え良い食材を使っていたとしても、腕が負けていれば忽ち料理は台無しになる。満足して帰らせる為にも、妥協は一切許さない様に心掛けています」

 綺羅流星さんより、葛西拓也さんをお借りしました。

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