3月23日 折原さんの話
3月23日、天候晴れ。
作家にとって、一番身近なネタは身内ネタである。
『親戚にこう言う人物が居て~』の親戚ネタや『自分、こんな事をしちゃったんですよ~』の自分ネタみたいな実体験を伴った身近なネタ―――――身内ネタと言うのは案外、読者ウケも良く、かなりの確率で採用される場合が多い。
そして次に身近なネタは編集のネタだ。
彼らはアイデアを持ってくる一個人であると同時に、人間でもある。当然、彼らの人生にはそれなりのネタがあり、それをネタとして活用する場合も多い。それ故に彼らの親戚ネタや自分ネタなどの身内ネタも採用される場合が多い。
私、黒口穂波先生はそう言った意味合いの1つとして、自身の編集者である折原遊紙からネタを貰おうとしていた。折原遊紙の人生の話を聞いて、漫画のアイデアを膨らませて漫画をさらに高みに出来るかと思っていた。
「と言う訳で、折原さん。ネタ提供をお願いして貰って構わないでしょうか?」
「―――――良いですよ」
誰よりも担当の言葉に忠実な編集者、折原さんは私の質問にそう答えました。
「―――――――その時はあまり話したくはなかったんですけれども、今の私は漫画のためでしたら簡単に自分の過去を話す事が出来ますから」
「……そ、そんな気持ちで話すんでしたら、別に話さなくて構わないんですが」
と、私は慌ててそう言う。私としてはこの一月の間に出来る事と言ったら、漫画のためになるようにアイデア集めする事ぐらいである。うろな町やうろな町以外の場所にも行ったりしたり、色々な人からアイデアを得ようとしていた。その1つとして、私は折原さんの話を聞こうと思ったんですが。
「――――――――砂の城」
彼女の、折原さんの話は思った以上に辛辣な話でした。