3月19日 金色堂祐希の決意
3月19日、天候くもり。
月刊うろNOWにて『死亡予定少女』を連載中のCS4.8先生こと金色堂祐希は自宅にて、4月号が休載だったのでこの一月の休みをどう有意義に使うかを悩んでいた。
(漫画のための資料集め? いや、そんな事を考えているから川西さんに呆れられてしまうんだ!)
川西帆乃夏さんは僕の恋人であり、クリスマスや誕生日と言った行事はお互いに時間を作って行っている。けれど、どうしても、時間が取れないとかの問題でデートは行ってはいなかった。それに川西さんはご不満でデートをして欲しいらしくて、さり気なく探りを入れて来るのである。
『来週の土曜日とか、時間が空いていますよね? デートするには絶好だと思うんですが』
『金曜日で作業を終えませれば、土曜日は休みになりますよね?』
『土曜日と日曜日は空いてますよね? 空けますよね? 空ける事が出来ますよね?』
『デ・エ・ト? デ・エ・ト・は?』
初めの頃は普通なんですけれども、後の方に行けば行くほど狂気染みていくんだけれども。最後の方なんかは、毎日のように携帯の方に電話をかけてくるんです。ワン切りをしてくる様が、まんまストーカーと一緒なんだけれども。
「私としても恋人とデートする事をしたい気持ちなんだけれども……」
流石に怖いんだよね。川西さん、顔がずっと無表情のままだし。そう言う面もあって、怖い時は本当に怖い。その分、可愛い時は物凄く可愛いんだから、離れられないんだけれども。
「―――――――よし! ここはデートの1つや2つ、やらせて貰おうじゃないですか。折角、一月も休みがあるんだからどこに行こうかなー」
そう言えばこの前の月刊うろNOWのおまけに、温泉旅館の事が書かれていた。美味しい料理やら、気持ちの良い温泉があるから、川西さんも納得して貰えるだろう。それかちょっとうろな町から遠出して、遊園地とか水族館などのデートの定番の場所に向かった方が良かったりするのだろうか? それとも……やっぱりちょっと下品だけれども、ラブホとかも候補に入れた方が良いのだろうか?
「川西さんも時々ラブホとか、そう言った所に行きたがる物な」
『一姫二太郎と言うけれども、まず子供が産まれるような事がないのが迷惑なのよね。野球とかラグビーとかが出来るほどの大人数を産む予定も、大人数を養う予定もないけれども、子供は欲しいわよね。相手との愛の結晶である子供を』
一月に5回、一週間に1回のペースでそう言われている計算なんだけれども、実際に言われているし。しかも最近だとただ単に『子供』を連呼されるばかりなんだが、それが地味に怖いし。
『子供……子供……子供……こどもこどもこどもこどもこども……子供が欲しい』
もう既にあれはホラーだよ。
「まぁ、まずは天塚旅館に予約を……」
そう考えていると、プルプルと電話が鳴り、私は電話を取る。
「はい、もしもし?」
『3日後、天塚旅館』
ガチャ、ツー、ツー。
「ありゃあ、こりゃあ完全に拙い状況になりつつあるな」
僕は早速準備を開始する事を急いだ。