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3月10日 誰が悪いわけでも

 3月10日、天候曇りのち晴れ。

「―――――――で、君は私の"あれ"についてどのような事を思っているんだい?」


 と、喫茶店にて輝き閃光先生は僕にあの時の修正版の原稿を渡し、そう言って来た。俺はそれに対してこう答えた。


「――――――――良いと思いますよ? 本当に良い事だと思いますよ。特に問題と言う事が無かったし、俺にそれを止める事は出来ませんから」


 俺はそう答え、輝き閃光先生は「……そうか」と感慨深そうにそう答えていた。


 曇り空の下、俺と輝き閃光先生はお互いに顔を見合わせていた。


「――――――じゃあ、兎山課長には自分から伝えて置こう」


「いや、それくらい自分も手伝いますよ。一応、あなたの編集なんですから」


「そうか……。その点がお前は折原とは違うな」


 と、少し嬉しそうな顔で輝き閃光先生はそう言った。


「あいつ、折原遊紙は優秀な担当だった。赤城正義と折原遊紙のどちらが優秀だと聞かれれば、まず間違いなく折原遊紙を選ぶくらい優秀だった」


「……そんなに、ですか?」


「どんなに骨董無形(こっとうむけい)な事を頼んでも嫌な顔一つせずに働き、そしてこっちが必要だと思った時には既に情報があるくらい優秀な編集だった。この3月号のタイトル、【4th.Fright 曇天のアサイン①】のアサインと言うのも、彼女が調べた言葉だ」


 と、頼んでいたコーヒーを一口飲む輝き閃光先生。


「アサインとは、飛行機業界では飛行機の座席の割り当ての事を指す言葉だけれども、そんな言葉は彼女が調べてくれるまで知らなかった。彼女は私なんかの編集では収まりきらないほど優秀な人物だ。

 ――――――――だけどね、彼女は優秀だが、優秀だけ(・・)なんだよ。彼女には漫画以外の事を相談しようとは思わないし、出来ないだろう。その点で言えば君はそこに関しては優秀だよ。相談しやすい」


「……褒めてないように思えるんですが」


 「これでも精一杯褒めているのだがね」と彼は笑った。


「だからこの件は、君のせいではないし、誰のせいでも無い。私のせいでも、兎山課長のせいでも、あちらさんのせいでも、折原遊紙のせいでもない。

 ―――――――――悪い話ではないし、今と状況はほとんど変わらないんだ。安心してくれ。ちゃんと作品は、『夜空の高き一番星』は書くから」


「……すいません」


「謝る事では無いさ」


 そう言って、輝き閃光先生はコーヒーを飲み終えて、帰って行った。


 僕はふーっと一息溜め息を吐き、携帯を取り出す。そして電話帳よりお目当ての人物の名前を確認し、電話をかける。

 相手はすぐに出てくれた。


「―――――――こんにちは、黒口先生。先生は温泉に興味、ないですか?」

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