表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/65

3月5日 フラワーインタビュー

 3月5日、天候晴れ。

 花と言うのは、可憐な物で、そして時に美しい物だ。

 花は多くの物に例えられる事がある。自分を映す鏡、太陽からの贈り物、愛情の形となりし物。


 うろな町にそんな花を売る花屋、ピグミーと言うお店がある。本日、私、澤鐘日花里はそんなピグミーの店主である綿野日代さんとインタビューをさせて貰う事になった。


「きょ、今日はよろしくお願いします。お持ちのぬいぐるみが先日百を越えました綿野日代さん」


「よ、よろしくお願いします」


 ピクピクと眉が動いているように見えますが、私と同じで緊張しているのでしょうか?


「ではまず最初に……私個人の調査によるとご両親からこの店を受け継いだとお聞きしましたが、あなたから見てご両親の働いている姿はどのような感じだったのでしょうか?」


 そう聞くと、彼女は何だか答えにくそうな、微妙そうな顔で


「ええっと……。ごめんなさい、質問の意図がわかりません……。父も母も、普段と変わりませんよ」


 と答えてくれた。家族の時の両親と、花屋をしている時の両親に何か違いがあったら良いなと思ってインタビューしてみたんですが、どうやら特に違いは無いようです。これは掲載する時には、要らないでしょうか?

 私はそう思いながら、次の質問をする。


「では、次に……三月におすすめの花を教えてください」


「この時期ですと、プリムラ・マラコイデスやサイネリアといった花がいいと思います」


「ぷりむ……?」


「サクラソウのことです。四百種ほどもあるサクラソウ属の植物には極端な違いがないので、総称的にサクラソウと呼ばれることもありますが、当店では区別しているんですよ」


「そ、そうなんですか。三月の花といえば、チューリップのイメージが強かったです」


「チューリップは蕾が硬すぎて思った通りに開かなかったり、逆に開ききってだらけたりしますから、綺麗な状態で花束にする切花以外で見栄えよくするのは難しいんです。その点、マラコイデスとサイネリアは花数が多いし色も鮮やかで、少々花が終わっても全体的にとても見栄えがするので、とってもおすすめなんですよ」


「な、なるほど……。プリムラ・マラコイデスやサイネリアですか」


 これは良い話では無いでしょうか? 私達は普段、3月と言えばチューリップの花を想像する方が多いでしょうけれども、プリムラ・マラコイデスやサイネリアと言った花と言う名前だけでも、読者の興味は引けるかも知れません。


「メモメモ……。」


 くぅ―――――――。


 そんな事を考えていると、お腹が鳴ってしまいました。

 そうでした。彼女の要望で、12時頃の取材をしていますが、私はまだ食事を取っていませんでした。


 恥ずかしい……。取材先でこのような事態は、本当に恥ずかしいです。


「可愛らしい音ですね」


「す、すいません……」


 うぅ、彼女にもクスクスと笑われています。恥ずかしいですぅ……。と、とにかく取材を終えて、何かを食べに行きませんと。


「で、では最後になりますが、もうすぐ四月を迎え、学年が上がったり社会人の仲間入りをして新しいことにチャレンジする人も多いと思います。綿野さんは何か新しく始めたいと思っていることはありますか?」


「そうですね……。特に、ということはありません。この町の方々が商店街に入って真っ先に目にするこの場所をまかせていただいているので、いつも通り、より華やかにお迎えできるようなお店であるように心がけるだけです」


「な、なるほど……。今日はご協力ありがとうございました」


 私がそうやって頭を下げると、彼女はクスクスと笑いながら


「お腹、止まると良いですね」


 と優しく返された。


 ……うぅ、とっても恥ずかしいです。

 弥塚泉さんより、綿野日代さんをお借りしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ