2月9日 兎山さんの決断
2月9日、天候晴れ。
兎山則之は『株式会社・兎山』の月刊誌の『月刊うろNOW』の課長である。その課長としての役目は月刊誌である『月刊うろNOW』の販売数アップが目的である。そのためにホームページを作って販売促進を行ったり、うろな町以外にも販売出来るようにネット注文の手配を行っている。勿論、うろな町以外の場所への過剰な注文を嫌がる黒口穂波先生に予め断っていたけれども。
「けど、最近の黒口先生はかなり柔らかくなったよね」
と、兎の頭を被った課長はそう言いつつ、書類を確認していた。
そもそも黒口先生の『月刊うろNOW』の掲載を頼み込んだのは兎山課長なのである。頼み込んだ当時の黒口先生は誰の言葉も聞かないと言う印象を持つ孤独な作家だった。けれども今の黒口先生は赤城君の手によってかなり柔らかい性格を持つようになった。その事でかなり精神的にも強くなれたと思う。その事を昔から知っている兎山課長は大変嬉しかった。
今の黒口穂波と言う作家は、赤城正義と言う担当編集者が居る事によって成り立っていると言ったも過言ではないかも知れない。それくらいは兎山課長も容易に想像する事が出来ていた。
「しかし、そんな事が分かっても担当と言うのは残酷なんだよね」
作家には2種類の人種が居る。誰とでもそれなりの作品を作り上げる事が出来る作家と、特定の担当編集者と組む事によって最高の作品を作り上げる事が出来る作家。この2つには大きな違いがあり、前者は誰とでも仲良く作品を作り上げるタイプの作家の事である。うちの作品作家で言うと、輝き閃光先生や二人羽織先生がこのタイプに分類される。後者は特定の担当編集者と組むと大ヒットを起こす可能性がある作品を描き上げる作家の事で、うちの作品作家で言うとCS4.8先生や黒口穂波先生が分類された。
「けどね。こう言っちゃあ何だけれども……」
黒口先生、あなたは赤城君と組む前でも1人で大ヒット作を何本も書き上げてる。だから、
「仕方ないんですよ。恨まないでくださいね」
兎山課長はそう言って、赤城と折原の2人の電話帳をじっと見つめているのであった。