2月3日 節分の取材
2月3日、天候晴れ時々曇り。
節分とは、雑節の一つで、各季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日の事を指す。季節の変わり目には邪気(鬼)が生じると考えられており、それを追い払うための悪霊ばらい行事が執り行われるのである。
「だから、節分とは大事な日であり、北北東の警備を強める日ですよ! 鬼は北北東からやって来るから、普段より式を多く使って警戒態勢に入ります。それから――鬼は、とっても悪い妖怪ですよ。不幸を背負ってやって来るんですから。鬼には気を付けてくださいね! ねっ、稲荷山君!」
「うるさいぞ、芦屋」
と、目の前で喋る2人が今回の取材対象者である芦屋梨桜と稲荷山孝人の2人である。先程節分について熱く語った少女が芦屋、その芦屋を叱りつけているのが稲荷山との事だそうです。
ちなみに俺は赤城正義。普段は取材などではなくて編集活動を行っているけれども、今日は頼まれたので澤鐘の代わりに取材を受けている。何故、今回は俺が取材をしているかと言うと、
「―――――と言う訳で、何故に私が……」
「ぼ、僕にも質問してくれますか!? 黒口大先生!」
これが理由である。
今回の取材対象者の1人である稲荷山孝人。彼がどうも黒口穂波先生の事を尊敬しきっているからだそうだ。澤鐘が言うには取材対象者が喜んでくれる方がやりやすいんだそうだ。
「では、御言葉に甘えて。稲荷山さんにとって節分、そして鬼とはなんでしょうか?」
「ん――――――――。別に、ただ豆を食べられる日か? 鬼と言えば鬼ヶ島――――――って、違う違う。なんというか、『鬼』って一言で表せないものじゃないだろ?」
と、そう稲荷山はそう答えた。
「じゃあ、お二方に質問です。お互いに今年の目標はなんですか?」
「もちろん、芦屋流陰陽術を極めて、妖狐を滅することです!」
「特になし」
「稲荷山君! その言い方はないよ! ちゃんと目標を決めようよ! 1人じゃつまらないよ! つまらな―――――い!」
と、そんな風に芦屋と稲荷山が言い合う。相変わらず、仲が良さそうで本当に良い物である。
(ともあれ、取材内容としてはまあまあである)
俺はそう言いつつ、取材メモを確認する。芦屋と稲荷山からの内容はだいたいの所は把握出来た。さて、最後の質問は……っと、おっ。最後の質問は2人が別なようだ。
(え、えっと……黒口先生?)
「ひゃ、ひゃい!?」
俺がこっそりと耳打ちするように黒口先生に聞くと、黒口先生がそう言う風に緊張した声を出した。そ、そんなに緊張させてしまったか? 一緒に取材を受けても良いかとお願いした時は、結構嬉しそうにしていたのだが。
(ご、ごめんなさい。いきなり言われてしまったので、緊張しきってしまっていて)
(まぁ、良いけどね。とりあえず稲荷山君への質問は黒口先生に頼んで良いですか? その方が彼も嬉しいだろうし)
(わ、分かりました)
そう言って、俺は芦屋さんに質問をする。
「芦屋さん。最近のうろな町について、一言お願いいたします」
「へっ? なんか、チョコが沢山売ってるよね?チョコブームなのかな?」
バレンタインデーが近いから、女子としてそう言った反応が欲しかったがどうやらそう言った事はなかったみたいである。
「では、最近の君と芦屋さんとのご関係を一言」
「せ、先生!?」
「さぁ、どうぞ」
「は、はぁっ!? べ、別に俺が芦屋に振り回されているだけでそれ以上の関係では……」
「えっ、稲荷山君って友達じゃなかったの?」(真顔)
「そ、そうだなー、俺達、友達だな。でも、それ以上の関係じゃないからな。本当だって!!」(複雑な顔)
何だかあっちも大変な関係のようだ。俺は同じく、あまりにも有名すぎる大先生と関係を持つ編集者として、彼に手を合わせてこれからの幸運がある事を祈った。
寺町朱穂さんから、稲荷山くんと芦屋さんをお借りしました。