1月30日 捨て猫を拾う
1月30日、天候雨時々雪。みぞれも時々降ります。
「ちっ……。みぞれかよ」
御手洗城は傘を差して、二人羽織先生の部屋へと向かって行った。その理由は今後の編集会議のためである。
城は漫画とは読者ありきだと思っている。読者が居るからこそ、漫画と言うのはあり続ける。だからこそ、常に最良を求めている。可能であれば毎日、毎時間のように会議をしたいと思ってるくらいなのである。だからこそ、本日も2月分をさらに良くしようと話をしに城は二人羽織先生の所に向かっているのである。
「……まぁ、あいつばかりに任せていないで、こっちも何とかして新しいアイデアを出さないといけないな」
と、城は傘を差して、二人羽織先生の所に向かっているが、その最中も考えは尽きない。
(二人羽織先生の今の話は、人外と日常を組み合わせた作品。テーマとしては、日常的に暮らしている人外達と言うのが今の内容だ。このうろな町には多くの人外の伝承が残っている。狐の伝説とかな。その内容から作り上げたのがこの作品だ。
前は妖刀とデュラハンとの話である程度の話題はある。人外を日常的に話す内容だから、話としても人外を調べればいくらでも話は出て来る)
だから、話としても作りやすいと思っていた。アイデアも多く出せるんじゃないかと思っていた。
「けど、なんかダメなんだよなぁ。やっぱりアイデアを出すのが2人だと限界があるな」
城が困っていたのは、それだった。アイデアは出るには出る、けれどもそれが出れば出るほど、お互いに傾向と言う物が生まれてしまって、もうネタが尽きてしまった。
「後、1人。アイデアも3人寄れば文殊の知恵と言うくらいだし、生まれると思うんだけどな。あと、1人。あと1人居れば良い作品が出来上がると……」
「にゃ、ニャー」
「……あぁん?」
と、城はそこで猫の鳴き声を耳にする。鳴き声とは言っても、人間が真似した声であったが。城はそこでふと、声のする方向を確認する。そこには猫耳を生やした1人の少女がこっちをじっと見つめていた。
「お、お兄さん。もし良かったら食べ物を分けて欲しいなのです……」
「これ……か?」
と、城は服の中に入れて置いたコロッケを出して、その少女に見せつける。すると、その少女が瞳をキラキラさせながら、コロッケを見ていた。そんな少女の様子を見て、城は1つ策を思いついた。
そして少女の前にコロッケを出して、彼女が口からよだれを出しているのを見ながら、一言。
「お前、俺達の仕事を手伝うか?」
○御手洗城
二人羽織先生の担当編集者。面白さを追求する為ならば、いつだって会議に付き合うつもり満々の男。好物はコロッケ。
○ハルツバキ
千里さんから逃げ出してここまで逃亡して、完全な捨て猫状態になってしまっていた。城からコロッケを貰う事を条件として、協力を要請される。