1月24日 私は友を手に入れる
1月24日、天候晴れ。ポカポカ陽気の日。
1月24日、黒口穂波の部屋。漫画家の黒口穂波は自室にて、困惑していた。普段からクールに振舞う事には慣れている穂波であるが、そんな彼女でも困惑する事はある。そしてそれが今だった。
「……」
今、目の前にはただただ、自分に向かって土下座をしている自分の担当である赤城正義が居た。いきなり部屋にやって来たと思ったら、目の前で土下座をしたのだ。穂波はただ困惑しか無かった。
「いきなり……なんですか? 部屋に来て、土下座って……。理由を説明していただけますか?」
穂波はそう言う。すると正義はこう答えた。
「実は……考えたんですよ。穂波さんがどうして起こったかについて」
「……!」
その言葉に穂波は驚く。確かに去年、彼には怒りの丈をぶつけてしまい、酷い事をした。けれども今までこうやって本気の想いで自分に謝って来る人は少ない。けど、居なかった訳では無い。
(その人達と一緒に違いない。適当に言葉を取り繕ったそんな人達と一緒に違いない)
「……で? なんで謝ったのか? 答えをくれますか?」
穂波はそう言う。どうせ、他の人達と同じなのだ。そして、きっと彼もそう言った類の、分からないけれどもとりあえず謝って許しを得ようとする人間に違いない。そう、黒口穂波はこれまでの経験より分かっていた。
「分かりません!」
けれども、その男。赤城正義は違った。
「何が先生の気分を害してしまったのかは、分かりません! けれども、私が何をして先生の気分を悪く思っていたのには、違いはありません。だから私は……謝ります!
それだから私は、先生の気持ちが知りたい! 私は先生と共に頑張りたいと思っています! ですから私は、先生の話を聞きたいです! お願い致します!」
私、黒口穂波はその言葉を、とても嬉しく思った。
私を、私と言う人間を理解しようとしてくれる人にやっと巡り会えた。孤高にして孤独だった私には、とても嬉しい行為だ。
「だから、先生! どうか、どうかどう言う訳か教えてください! そして、第2話の原稿について一緒に話し合いましょう!」
「……うん。そうだね」
長年、トップ漫画家として君臨し続ける漫画家、黒口穂波。
多くの作品を描き、そして多くの読者とファンを持つ彼女であるが、本当の友と呼べるような関係を気付こうと考えたのは彼が初めての経験だった。
『凄い人』と言うと、緊張して喋りにくくなりますが、本人達は意外と人と言う関係に飢えているのかも知れません。
黒口穂波は、なまじ人より上手く出来て、そして挫折や苦悩が見えにくいため、天才と呼ばれ、人から少し距離を置かれて、その事を悩みに感じていました。
皆さん、どうか黒口穂波を絡ませる時は、そう言った人と言う関係に飢えた彼女を考慮してあげてくれると嬉しいです。