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1月11日 遊紙へのお悩み相談

 1月11日、天候雨。

 俺、赤城正義は悩んでいた。と言うよりかは、どうするかについて何も思いつかないから困っていたんだけれども。



(黒口穂波さんをどうやって慰めるべきなんだろうか?)



 この前黒口穂波さんに言いくるめられてしまった。自身が感じている重圧について、胸の内を語られてしまっていた。それを僕は慰める事も、軽くする事も出来ずに、ただただ聞くだけしか出来なかった。



「はぁー……」



 俺はアパートの自室にて、ただただ落ち込んでいるだけだった。何をすれば良いか、問題となって来るのはそれだった。



「こんな時に、相談役が居ればなー」



 ピンポーン!



「……ん? お客様か?」



 ピンポーン! ピンポーン!



「はい、はーい。今行きますよ」



 そう言って、俺は扉を開ける。開けると、頭に兎耳を生やした黒いコートを着た少女が立っていた。



「やぁ、久しぶりだねー! まーくん! 遊紙ちゃんだよー!」



 そう言って決めポーズを決めているこの少女は、俺の知り合いの折原遊紙だった。15歳くらいにしか見えないこの折原は、俺の事を『まっ君』と呼ぶ。知り合った時から責任感が強いと言うか、仕事熱心を越して仕事熱心な節があった。周りからしたらいつ倒れるか、と、冷や冷やした物で。まぁ、そう言った事がある少女だった。



「今日は人生相談に来たんだよー! 前にまっ君には相談に乗って貰ったからねー! 今度はこっちがお返しするよー!」



「悪いな。本当に……」



 正直、誰かに相談したい気分だったので本当に嬉しく思う。けれども仕事人間のこいつがわざわざ話してくれるだなんて……。



「で? まっ君は何に悩んでるの?」



「実は……担当している作家先生が怒っちゃって」



 と、俺はそう遊紙に悩みを打ち明ける。

 担当している黒口先生がプレッシャーに耐えきれないと言っていた事。人気者で居続けるのは疲れてると言った事。他の地域への増刷が嫌だと言っていた事。

 俺は遊紙にそうやって悩みを打ち明けていた。



「ふーん……。そう言う事があったんですね。それは大変ですねー。人気者ってのは本当につらそうだよ」



「けれども俺にはどうする事も出来なくて……。俺は、俺は……! 作家さんの気持ちを考えないで、何が編集だと言うのだ!」



 俺はそう言って、壁に拳で殴りつけていた。それを見て、遊紙は優しく微笑んだ。



「さっぱり分からないや」



「おい……! そりゃあ、ないだろ!」



 アハハハー! と大きく笑う遊紙。



「私は仕事しか頭にない仕事至上主義の人間だ。今、このときだってまっ君の事をどうやって作品に活かしてもらうかを考えている。けどね、それじゃあダメなんだよ。多分、その答えは君に相応しくない。

 本人には本人でしか分からない。私なんかが君に相応しい答えを出せないんだ」



「俺に相応しい答え……」



「大切なのは、何がしたいかだよ。まっ君。

 私を助けてくれたまっ君ならば、きっと答えは出せるさ」



 外の雨が降り続ける中、その言葉が俺の耳には残っていた。

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