1月9日 町長への取材
1月9日、晴れ。しかし、寒い。
うろな町の町役場。
澤金日花里はこの町のトップとも言うべき人物と対談していた。それはこの町の町長である。まだ若いながらもこの町を取り仕切る町長として、日花里はそれなりに緊張していた。
「で、では秘書の秋原さんとただならぬ関係が噂されている町長さん、よろちくお願いしまちゅ」
と、日花里はそう言いつつ、深々と頭を下げる。噛む以上にややこしい事を言ってしまった事を彼女は知らなかった。
「あ、う、うん。そうだね。頼むよ」
しかし、そこは町長。あくまでも大人な態度でそう言う。さっきのは何かの間違いだろう。そう思っての言葉だった。
「は、はい。ではまず、うろな町の2013年の総括と2014年の目標なんかを聞いておきたいのですが……」
「目標ですかー。去年は着任した年でもあったので、去年よりはうまくやれたらなと思います。地域活性化とかに力を入れていきたいですし、なにより事件事故を無くすのが一番ですよね。住民の皆さんが安心して、かつ平和的に過ごせるのが一番かなと思ってます」
「な、なるほど……。住民思いの良い町長さんですね。メモ、メモ……」
と、そう言いつつメモに『新任ながら頑張っている。地域活性化と交通事故、住民の皆さんが大事』とメモを取っていく日花里を見て、やはりさっきのは間違いだと思い返す町長。
「では、次に……住民課などの町役場については?」
「住民課の職員はみんなよく働いてくれてると思います。榊君も真面目でいい子ですし、内村さんは時々何言ってるかわからないですけど仕事はキチンとしてくれてます。あとは企画課とか秘書課のほうは僕よりも秋原さんのほうが顔出してるみたいなので、そっちに聞いてくれた方がいいかと。それとその他の課の職員も、みんな僕以上に働いてくれてるんじゃないですかね。ハハハ。僕も頑張らないと」
「な、なるほど……」
と言いつつ、熱心に書いていく日花里を見て、最初の失言は忘れることにした町長。何事も寛容さが大事だからである。
「では、最後に個人的な目標を」
「個人的には、去年失敗した夏祭りでのマジックのリベンジと、僕自身のアピールですかね。僕、自分の町を歩いていても顔とか広まってないみたいなので、そろそろ覚えてくれてもいいんじゃないかなーって思ってます。まぁ覚えてもらってなくても昼行灯みたいな感じで、陰ながら活躍できればそれでいいのかもしれないですけどね。アハハ」
「な、なるほど。そうなんですね」
そう言いつつ、日花里はわかりましたと頭を下げる。
「今日はありがとうございました、町長さん。これからもお願いいたします」
「うん、こちらこそありがとうね」
「では、昼行燈を目指す影が薄い町長さん。お元気で!」
そう言って町役場を出る日花里を見て、評価を改める町長だった。
シュウさんより、うろな町長をお借りしました。