11月18日 うろNOW、開始!
新うろな駅から歩いて4分。俺、赤城正義が勤める『株式会社・兎山』はある。この会社は特集雑誌の編集や編纂作業のための情報収集などを行っている出版社である。そしてこの会社の普段は使われていない部署の部屋に4人の人間が集められていた。
「一体、何があるんだろうな」
集められたのは、僕を含めた4人。
クールで仕事率優先の眼鏡が似合う女性、川西帆乃夏さん。脂ぎった身体と何か変な文字が書かれたTシャツを着た男性、御手洗城さん。そして臆病ながらも情報を聞いている記者の女性、澤鐘日花里さん。そして僕達の目の前には……
「集まってくれてありがとう。君達には今から月刊うろなのために、掲載のための色々な作業をお願いしよう」
と、とても親しげに話して来るぬいぐるみの兎の顔を被った男性の姿があった。
「なんだ、この兎は? 俺達の上司かよ。いつから、兎が人間の上司になったんだか……」
「ち、違いますよ、週3日隠れてジムに通っている御手洗城さん。あの方は既に妻子を持っている部長の兎山則之さん……ですよ」
兎の被り物をした人を見て変な事を言う御手洗さんに対して、そう説明を入れてくれる澤鐘さん。流石、『臆病な情報通』で有名な記者、澤鐘さんである。
「ええと、君達にはこれから月刊うろなと言う月刊誌を作るための作業に入って貰う。これはうろな町でやるための月刊誌であり、これが上手く行けば我々の会社はまた1つ大きな収益を得る事になる。今回はそのデモンストレーションと言う事で、4人の作家に声をかけました」
兎の被り物をした兎山さんが、親しげに状況を説明して来るのだけれども、それはかなり異種的な存在感があった。まぁ、口にはしないけれども。
つまりは僕達はこの街限定の新作の月刊誌、『うろNOW』と言う雑誌を作るための構成員として呼ばれた訳だ。まぁ、僕達も会社のため、社会のためにと頑張ってやって行く事にしよう。
「今回は4作品の読み切りを書いて貰い、反応が高かった3作品を連載していこうと思います。『輝き閃光』先生には『夜空の高き一番星』、これは初めからセンターカラーだから君達には気が重いだろうし、うちのベテランに行ってもらう事になりました。そして君達の分担を発表しておこう。
御手洗城君、君には『二人羽織』先生の担当を頼みます。59年前、うろな山でつちのこが発見されたと言う事実を描いた作品と言う事らしいから、ちょっとそこの辺りの情報収集を頼む。これがその先生の住所だ」
「……分かったよ。まぁ、成功させたいしな。俺なりに頑張るさ」
そう言って、御手洗さんは兎山さんの手からメモ用紙を奪い取って、古ぼけたジャケットを取って部屋から出て行ってしまった。
「川西さんは『CS4.8』先生を頼む。『死亡予定少女』と言う作品だが、可愛らしい少女をメインとして出したいからその辺りを中心とした作品作りを出来る限り頼む。一応、この『うろNOW』のメインウエポン的ヒロインを頼む」
「……任せてください。必ずや、やらせていただきます」
「それから澤鐘さんには、料理店『ビストロ』と清水渉、司夫妻の取材を頼む。特集を組もうと思っているから、そのつもりで」
「……は、はぅー。い、今から取材をするためにその人たちの情報をありったけ集めさせてもらいますぅ」
と、そう言って、川西さんと澤鐘さんの2人は出て行った。と言うか、臆病なのに情報収集屋である澤鐘さんの今後が気になる所である。
(僕のあれとか、他の人達のあれとか……。どこで手に入れたのか分からないんだけれども、どこであんなに情報を手に入れているんだか)
「そして、赤城君」
「は、はい!」
と、皆の姿を見ていると、兎山さんが声をかけてくる。
「君には最後の1人、『ナイト・アイドル』の『黒口穂波』先生の担当を任せたい。任せたいんだが……少々、黒口先生は変わった先生でね」
「か、変わったと言うと、どのような?」
「まぁ、一言で言わせて貰えれば、人とは違いすぎる感性の持ち主だから。くれぐれも気を付けてね」
そう言ってメモ帳を兎山さんから貰う僕。何故か他の人と違って、くれぐれもと言う感じを込めるかのように手をぎゅーっと握る彼。
なんだか不安になりつつも、こうして11月18日、『株式会社・兎山』にて月刊誌『うろNOW』の刊行の準備が始まった。
赤木正義……主人公。『黒口穂波』先生の担当になった。
川西帆乃夏……クールで仕事率優先の眼鏡が似合う女性。仕事成功率は非常に高く、様々な資格を持つ。担当は『CS4.8』先生。
御手洗城……脂ぎった身体と何か変な文字が書かれたTシャツを着た男性。脂っこい物が大好き。担当は『二人羽織』先生。
澤鐘日花里……小柄で臆病者の記者。『人を知るにはまず情報から』と言うほどの情報通。特集担当。
兎山則之……頭に兎の被り物を被った部長。妻子持ち。『うろNOW』の編集長を任されている。