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生きづらいのバイアス

作者: 一色 サラ
掲載日:2026/08/10

 深海しんかい実宵みよいは会社の帰り道に、ポツンとイベントなどが貼られている掲示板に目に入った。「生きづらさの女子会の集まり」と書かれて、『あなたの心の声を聴きませんか?』と端にが書かれていた。それをスマホを向けて写真を撮った。会場である会館はキツツキ市あるらしい。実宵の住むツバメ市の隣の市だった。


2日後の土曜日、事前予約なしの参加無料だ。実宵自身、生きづらさという言葉から逃げいるのは事実だ。でもやっぱりヒントぐらいはほしい。行かない理由など、いくらでも思いついてしまう。頭を軽くして、電車に乗った。揺られること30分、徒歩10分でキツツナ市民会館についた。


 入口に愛想笑いの受付のおばさんが立ち上がって迎えてきた。

「ここに、年齢とどこから来たのかを書いてもらってもいいですか?」

 長テーブルに置かれている紙とペンを差し出された。言われるがまま、立花、キツツキ市と書いた。

 まだ用事があるのか受付のおばあさんに話してくる。シールに名前を書いてほしいと台紙のシールに書くようにマジックを渡され促された。本名でも偽名いいらしいので、実宵は偽名で立花と書いた。おばさんは台紙からシールをはがして、実宵の手に付けた。実宵はあまり見えない腰に貼った。目立ちたくはない気持ちと偽りたい気持ちが増幅していた。

 会場に入ると年齢層が高く、実宵の30代くらいの年齢層はそんなにいない感じがした。30人ほどいるのに、他人同士が話すこともなく、静まり返っていた。誰かと仲良くするような空気が一切なかった。何人かは話しているが、それは親子のような50代と20代~30代の組み合わせだ。実際に親子だったら、どこか引く気持ちがわいてくる。実宵は母親とは不仲だった。母親と一緒に行動するなど、吐き気にする。親と一緒に来る人の神経が実宵には理解することはできなかった。親が子どもに、子どもが親に依存しているのだろうが、それをする意味がどうしても分からない。親同伴の人がいるとはこの会に参加するなって思ってもいなかった。気持ちが萎えるような気分になった。実宵は一番後ろの席に座った。徐々に人が集まり20人が室内と覆っている。女子会と言いながら、男性の姿もあった。誰も説明もないが、たぶん『心』が女性だという人かもしれない。ただ騙された気分にはなる。本人は女性の気持ちなのだろうが、こちらはどうしても男性に見える。これは本当に差別に当たるのか分からないが、ジェンダーですと押し付けられて、だから理解しろと頭ごなしに言われている気分になる。どんよりと暗い空気が実宵の中で漂っている。なんでこんなに居づらいのだろう。


「こんばんは、本日はたくさんの人に集まっていただき...」

 主催者の女性が、話を始める。最初に30分ほどは体験者の話、そのあとはグループごとに20分ほど2.3回のディスカッションをするという2時間程度の構成であることを説明している。

 主催者が体験者として、スマホを片手に立って、生い立ちから話が始まった。高校でなじめず、大学の提出物を完成できず、期限に提出できなかったことが多く退学して仕事も上手くいかず、生きづらい人生で、この生きづらい会に参加して、色んな人と関わり前に進もうと思えたという内容で、実宵にしたらどうでもいい話だった。共感よりも、このモヤモヤを解消したいだけなのに、全くできそうにない感触が全く感じることは、帰りたくなった。それでも何かあるかもしれないと思って、帰ることができなかった。


 休憩を挟んで、テーマごとに分かれてグループごとにディスカッションだった。帰りたい気持ちが残ったまま、グループワークのディスカッションが始まった。

 テーマごとにグループごとにディスカッションする。年齢、仕事、人間関係などのテーマに分かれて話をする。

人間関係のグループに座ってしまった。自己紹介をして、何に悩んでいるかを話していく。松田という50代の人が話し始めた。 「私はずっといつも1人で、これからも1人でいいと思ってます。仕事が終わって仕事帰りに誰からも誘われないんです。まあ仕事上良好な関係でいたいので、忘年会に行くんですか。それかも誰からも誘われたことはないです。誘っても大丈夫という気持ちなんですけど。」

 1人でいいと言いながら、誰かに誘ってほしい。自分からは誘わない。矛盾を感じる内容だ。忘年会などに参加したからと言って、誘われるわけではないのではと違和感が浮かんでくる。

「そうなんですか、大変ですね。すごく頑張ってると思います」

同じようなに50代のカナブンと名乗る人が言った。でも違和感がある。実宵は聞いてみた。

「松田さんと、連絡先交換しないんですか?」

「そういう話ではなくて」

やっぱり、変に違和感が残ってしまう。共感はしている。ああ、この人達って、松田の同僚と同じなんだ。同じ職場に居ても松田とは仲良くはしないということだろうと思うと虚しくなっていく。

「自分勝手ですね」

ポロリと実宵は言ってしまった。

「まあ、若いから」

「そうね。若い人には分からないのよ。」

 35歳って、若いのかな。50代からしたら若いのだろうが、なんか嫌な感じがする。

「年齢のせいにするんですね」

 なんだろうこの人たちは、自分たちは変わろうせず、相手の考えを否定して自分と肯定するような嫌な感触が残る。

「私たちとは考えの次元が違うみたいで」

 すべて、実宵の責任にはしようする。この人たちは全部自分のやっていることが間違っているなんて微塵も感じていないのだろう。

 「あっ、そうですか。帰ります。」

全部を人の責任してくるこの空気に耐え兼ねなくなり、ディスカッションの途中で、立ち上がって、外に会場の外にでた。


そこに主催者の女性が立っていた。「思いやりは大切ですよ」と言われた。

「この馴れ合いが?」

吐き捨てるように言っていた。

「あなたはまだ未熟だから」

 また、実宵の責任ですかと思えてくる。本当に自分の考えはダメなのだろうか。

「まあまあ、その辺で。中本さん、会場内をよろしくお願いいたします。」

 その中本と呼ばれた人は会場内へと戻って行った。

「このような会です。無理に仲良くする必要もないので、お気をつけて帰ってください」

 この女性が少し棘のあるような物言いに、実宵は不快だった。

「はい、さようなら。気持ち悪い慣れないんていらないです。」

「そうですね。それが必要な人もいますので、自分の考えが正しいとは思わない方がいいですよ。」

 女性は俯いて、そのまま会場内に入って行った。

 実宵は前に進みたかっただけだ。女性の言う通り、ディスカッションの時は、自分の考えが正しいと思って、暴走するように発していた。ただ、ここに集まった人たちが変わらない、変わる気がない人たちだと思ったことは変わらない。実宵もそうだが、長年蓄積した考えや思い込みは変わらない。

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