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セイル様とテンと一緒に過ごす時間は、とても楽しくて、あっという間に夕刻になってしまいました。
そろそろおいとましなければなりません。とても名残惜しいですが。
「セイル様、今日はとても楽しかったです。お菓子もとても美味しくて、ありがとうございました。またいつかお会いすることができましたら嬉しいです。 テンも、ありがとう。会えて嬉しかったわ」
私が笑顔でお別れの挨拶をすると、
『アリシア、帰っちゃうの? もっと一緒にいたいよ~!』
テンが私の胸に飛び込んできて、ぎゅっと抱きついて離れません。私も、愛しいテンを抱きしめます。
「あの…もしよかったら、また学園が休みの日に来られませんか? テンを迎えに行かせますので」
セイル様の嬉しい申し出を断ることなど出来ない私です。
「よろしいのですか?」
「はい、もちろん」
セイル様は天使のような笑みを浮かべました。
「では、お待ちしております」
私の返事を聞いて、
『やったぁ~!』
テンが嬉しそうに私に頬ずりし、セイル様はその様子を優しく見守ってくれました。
心が温かくなれる場所を得た私はとても嬉しくて、学園が休みの日はテンに連れられセイル様のお屋敷を訪ねるようになりました。
セイル様は国内で有名な魔術師のようで、大きなお屋敷では大勢の使用人が彼のお世話をしていました。
セイル様とテンはいつも笑顔で迎えてくれて、談笑したり、魔法や護身術を教えてもらったり、薬草から回復薬を作る方法を教えてもらったり。
一緒に過ごすたびに、セイル様の誠実で優しい性格が感じられて、いつの間にか、彼に惹かれていました。
よく晴れた日に、私たちは近くの湖を散歩していました。 元気に走るテンを微笑ましく思いながら、足元をよく見ないで歩いていると、小さな石につまづき転びそうになりました。
咄嗟に、私が転ばないように後ろから抱えてくれたセイル様。
ふわっと香るセイル様の香水の甘い香りに、大きな優しい掌に胸が高鳴り。
ずっと触れてみたかったセイル様のしなやかな手に、そっと自分の手を重ねてしまいました。
「アリシア嬢…」
耳元で、彼の少し掠れた甘い声が響き、ドキドキして動けなくなった私たち。
その時、静寂を突き破る明るい声が聞こえたのでした。
『何やってるの~? 亀さんごっこ~? わ~い、僕も混ぜて~♪』
無邪気なテンが、少し前かがみになっていたセイル様の背中の上に乗り、
『親亀の背~中に子亀を乗っせって~っ♪』と、陽気に歌いだしたので、なんだかまったり和んだのでした。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/122288809/episode/2070745
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