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眩しくて閉じていた瞳を開けると、そこは、広くて可愛らしいお部屋でした。
いきなり、お屋敷の中に転移するなんて。
明るい陽光が射し込む大きな窓には可愛らしいレースとフリルのカーテンが揺らめき、大きな長テーブルにはたくさんのお菓子たちが並んでいました。
そしてテーブルの向こうには、金色の長い髪に深緑の涼しげな瞳をした天使のように美しい青年が、優しい雰囲気を身に纏って私を見つめていました。
「ようこそ、お待ちしておりました、アリシア・ドワーヌ嬢。私はセイル・ジーン。魔術師です。以前には、私の大切なテンを助けていただき、一度、お会いしたいと思っておりましたが、貴方には婚約者がおられたので、誰かに見られて誤解されてはいけないと思い、近づかないようにしていました。 あの時は本当に、ありがとうございました」
美しい所作で深々とお辞儀をしたセイル様は、とても神々しい雰囲気で、背中に大きな翼を付けたらとても似合いそうな、素敵な方でした。
真っ白なローブがとても爽やかで、憂いを帯びた私の心まで綺麗に洗われてゆくような気がしました。
「はじめまして。こちらこそ、素敵なネックレスをいただいたのに御礼のお手紙をしたためただけで…。あの後も、テンちゃんは何度も私に会いに来てくれて、楽しい時間をくれました。こちらこそ、感謝しています。本日は御招待までしていただいて…あっ、私、手土産も持たずに来てしまって…」
慌てる私を見てセイル様は、そよ風のように微笑みました。
「そんなに気を遣わないでください。テンに無理矢理連れて来られたのでしょう?」
『そうだよ!』
テンが誇らしげに胸を張って言う姿が可愛くて、
「あははっ!」
「ふふっ」
セイル様と一緒に笑ってしまいました。
「あなたは甘い物が好きだと、テンから聞いています。たくさん食べて、嫌なことなど忘れてください」
天使の微笑みのセイル様が言いました。
『アリシア、お皿に取り分けてあげようか?』
「テンったら!」
軽口を言う可愛い小狼のテン。思わず、ぎゅっと抱きしめてしまいます。
「アリシア嬢、この席へどうぞ」
セイル様が椅子を引いて待ってくれていました。
地上に舞い降りた天使のような優しい微笑みで。
「では、お言葉に甘えて…」
小狼のもふもふを抱っこしたまま、上座のテーブル席へ座ります。
ふわふわとした幸せな気持ちに満たされる此処は、まるで天国のようです。
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