表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

9 マーレン目線

 アリィ・ロードと初めて会ったのは今から十二年程前で、父に連れられて国内視察に行った時だった。

 その日は隣国との境にある辺境伯領に数日泊まる事となった。

 

「マーレン様、今夜街でお祭りがあるんですが一緒に行きませんか?」


 辺境伯の子息たちに誘われて街へと出掛けた。街はとても賑わっていて、隣国からの珍しい果物や食べ物が屋台で売られていた。

 俺は珍しい物に目を奪われてしまい気付けば子息たちとはぐれてしまっていた。

 一生懸命に探すも土地勘もなくどんどん裏路地へと迷い込んでしまった。

 裏路地と言っても荒んではおらず、貧困層の住処のようだった。とにかく誰かに声を掛ければ広場に連れて行ってくれるだろう。


 自分は侯爵家の嫡男だから!


 いつも周りから言われている言葉だった。

 だから疑わなかった。自分を害そうとする人間がいるなんて・・


「今、何て言ったんだ?こうしゃくけ?何だそりゃ!!」

「おい見ろよこの服!これ売れば二日は旨いもん食えるんじゃないか?」


 自分と歳が高そうな男子に声を掛けた瞬間、俺は壁に押さえつけられた。

 もがいても力が強く逃げられない。


「お前こうしゃくけ?の子とか言ってたよな?服売るよりもコイツ売ったほうが金になるんじゃ無いか?」


 俺の身体は震えだし抵抗する力も無くなっていた。

 いつも必ず護衛がいるが今夜は辺境伯の子息たちもいるし、危険な事など起こらないだろうと騎士達にも休暇を与えていた。

 その結果がこれか・・

 口に何やら臭い布を入れられ、両手は後ろで縛られそうになった時


「坊ちゃん!どこですか?返事をしてくださーい」


 女性の声がした。いや子供?


「あっ!見つけた!何してるんですか?皆んな探してましたよー」


 見た目まだ十歳に満たない女の子が近寄ってきた。


「貴方たち、この方がどこの誰か知っててこんな事をしているの?」


 俺の手を結んでいる男子と口に布を入れている男子に声をかける。

 二人は 知らねーなぁー と笑いながら答えている。彼女はため息をつきながら


「この方はこの国の第二王子殿下よ!貴方たちこんな事がバレたら、親兄妹全員が処刑されるわよ!」


 思い切り啖呵を切った。

 俺も男子二人も青ざめる。

 二人は俺が王子だと思って、俺はとんでもない人と間違えられて・・

 その時


「いてぇー!!」

「めっ、目がいてえ〜。何しやがる!!」

「こっち!早く走って!!」


 いつの間にか縛られていた手が自由になっていた。

 女の子は俺の腕を取ると こっち! と言って走り出した。

 口の中の布を取りながら、俺は女の子の手を取り思い切り走った。

 後ろから男子の声が聞こえたが、追いかけて来る様子は無かった。


「きみ・・何をしたの?」


 肩で息を吐きながら聞くと


「お姉様から待たされたの。ちかんげきたい?って言う物みたいよ?」


 あれだけ走ったのに女の子は普通に会話をしていた。それどころか 


「お兄さんはもっと身体を鍛えた方が良いわよ。あんな男二人に簡単に捕まるなんて・・」


 と、笑いながら話している。


「この道を真っ直ぐ行くと広場に出るよ!」


 彼女が指差す方を見れば俺を探していたであろう、辺境伯子息や騎士たちが走って来る。

 もしかして彼女は最初から知っててワザと王子と言ったのか?

 そう思って後ろを振り返ると


「アリィはまた何処かに行って!お父様に叱ってもらいますからね!」

「お姉様!それは許してー」


 アリィと呼ばれた女の子は探しに来た姉と手を繋いで歩いて行った。

 こちらを見た気もしたがそのまま別れた。


 辺境伯の屋敷に戻ると両親と辺境伯夫妻にこってりしぼられた。


「次からは絶対に護衛を付かせるからな!」

「それよりも父上、俺身体を鍛えたいです!剣も習いたいです!」

「・・そうか、そうだな。では屋敷に帰ったら習うと良い!」

「はい!!ありがとうございます!」


 アリィと呼ばれた女の子にいつかまた会えるかな?

 その時は今日のお礼を伝えよう。

 でも・・彼女はそもそも貴族なのか?

 身なりは良さそうだったけど、裕福な商家かも知れない・・



 それでもいつか彼女に会えると信じて身体を鍛え続けた。

 それから十年後・・


「本日より父の代わりにお世話になります、アリィ・ロードです。」


 探していた彼女が部下になった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ