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8 チェリー目線

 私はロード子爵家三姉妹の長女。

 幼い頃は私が婿を取って子爵家を継ぐんだと言われていた。それがデビューを果たした後から両親の私への使い道が変わった。


「チェリーの婿を探そうと思っていたが、嫁に欲しいと高位貴族のお方から声が掛かるようになった」

「私もですわ!お茶会や夜会で良く夫人に声を掛けられますの!婚約者はいるのかしら?と・・」


 両親の会話で悟ったのは、より高額で私を買ってくれる貴族を探す。だった・・

 父は私たち家族にはとても威張るが気が小さいことを私は知っていた。

 そして仕事に対しても・・


 私への見方を変えた父はアリィに目を付けた。

 三姉妹の中では目立たない容姿のアリィだが、決して劣っている訳では無かった。

 ただ性格も控えめだったせいで目立たないだけで、ちゃんと着飾ればアリィも可愛いのだ。

 だが父がアリィに目を付けたのは容姿では無く賢さだった。


 アリィは父が最も苦手とする領地の経営や屋敷の管理をそつなくこなした。

 屋敷の管理は本来母の仕事だが、この夫婦はそれら全てをアリィに丸投げした。

 そして王宮でやらかした父は領地の近くにある所へ飛ばされ、代わりにアリィが王宮で働く事となった。


 そしてアリィに目を付けたのがヘルン子爵だった。

 当時婚約者も決まっていなかったアリィに、自身の三男を紹介した。

 ヘルン子爵領は特にこれと言った特産物は無く、三男にまで継がせる物が無かった。そしてこの三男自身もこれと言って目立つものも無く、このままでは平民になるしか無かった。

 出来が悪くても可愛い息子。男爵家や準男爵家でも・・と探していた所に同じ家格のアリィに目を付けたのだ。


「ダメ男はやっぱりダメ男なのよね・・」

「チェリー様何か・・?」

「いいえ、独り言よ」


 私は子爵家の馬車にサラと乗った。なぜならグラビティ侯子は自身の愛馬に跨っていたからだ。


(この男、最初から私と同じ馬車に乗るつもりも無かったのね)


 笑えるくらい一途な男。

 侯子とあの夜会でダンスを踊ったのには訳があった。侯子のアリィへの恋心を知った時この計画を考えた。もちろん侯爵家嫡男を利用するリスクはあった。

 でもそれ以上に私たち三姉妹が幸せになる為に、敢えて勝負に出たのだ。


「チェリー様、到着した様です」


 サラの声と共に外から声が掛かる。


「どうぞ」


 扉が開くと侯子が右手を差し出しながら待っており、私はその手を取る。


「グラビティ卿、本日はよろしくお願いします」

「ああ、この話に乗った以上は君にも頑張ってもらうよ」

「ふふ、もちろんですわ」


 私たちは歩き出す。

 互いの目的の為に・・




「ファーレン伯爵夫人、お久しぶりです」


 卿が本日のお茶会の主催者であるファーレン伯爵夫人に声を掛ける。夫人は卿の姿に驚いたがすぐに笑顔になり


「まぁ、マーレン様。お元気でいらしたかしら?アンドリューは屋敷の中におりますわ」


 そう言いながら隣の私に気が付いた。


「本日はお招き頂きありがとうございます、ファーレン伯爵夫人」


 目上の人に対するカーテシーをする。

 周りからは まぁ・・ とため息に近い声が漏れる。

 私は更にとびきりの笑顔で


「本日は妹アリィの上司である侯子にエスコートして頂きましたの」


 これでもお嫁さんにしたい令嬢の上位にいる私。きっと誤解している夫人や令嬢も多いだろう。

 現に


「もしかしてお二人は・・」


 と聞いてきた令嬢。


「とんでもございません!侯子ほどのお方に私の様な者が釣り合うはずも有りませんわ」

「私はまだ考えておりませんので、失礼」


 グラビティ侯子はそう言うと勝手知ったる屋敷へと足を向けた。

 私はその後ろ姿を見つめながら心の中で


( 侯子!頼みましたよ!)


 と、囁いた。


 


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