7 アリィ→チェリー
次の日、仕事が始まる前にマーレン様に勘違いした事を謝ろうと早めに来たがいつまで待ってもマーレン様は現れなかった。
昨夜は特に夜会があった訳でもないので、時差出勤する人も居ないはずなのに・・
レッド様なら何か知ってるかも・・と思い聞いてみた。
「マーレン様ですか?そういえば朝から姿を見て無いですね。会議の予定も入っていませんし・・連絡無しの休みなんて珍しいですね!」
と、特に気にした様子も無かった。
マーレン様が居なくても進める案件は山程ある。私は残業覚悟で席に着いた。
朝、アリィが仕事へ出掛けたのを確認した後グラビティ侯爵家に早馬で手紙を出した。
昨夜のアリィの様子が気になったからだ。
「チェリー様、グラビティ侯子よりお手紙が届きました」
お茶会の準備をしているとサラが手紙を持って来た。私は他のメイドを下がらせるとサラから手紙を受け取る。
「サラ、グラビティ侯子が訪ねて来るわ。お父様とお母様は?」
「お二人はトゥーエ様と一緒に街へ出掛けられます」
「そう、三人に気付かれないようにお通しして」
「かしこまりました」
サラは深く頭を下げると部屋から出て行った。
執事のフレッドの元へ行ったのだろう。サラは優秀だ、私が最後まで言わなくても理解する。
「続きの準備を」
サラが部屋から出る際に外で控えさせていたメイドに声をかけたのだろう。
扉の前に控えていたメイドに声をかけた。
フレッドの采配で侯子が到着する前に両親達は街へと出掛けて行った。
私は侯子の到着を受けると応接室へと向かう。
「お待たせ致しました、グラビティ卿」
「いや、こちらこそ朝早くから気持ちのこもった手紙を頂き・・」
「思ってもいない事を口になさらないで結構ですわ」
私は扇を口元に当てながら卿を腰掛けるようすすめる。
サラはお茶を淹れると静かに扉の前へと移動した。
「礼儀に欠けた手紙を送りました事はお詫び致します。それ以上にお聞きしたい事がございましたの」
卿はサラが淹れたお茶を口にすると頭を傾けた。
「単刀直入にお聞きします。アリィに・・何を言ったのですか?」
「えっ?」
先程まで貴族侯子の振る舞いをしていたがアリィの名を出した瞬間に崩した。
そう、この男はアリィに気があるのだ!
「昨夜、仕事から帰ったアリィの様子がおかしくて・・夜会でのわたくし達を勘違いしている口調でしたわ」
「えっ?なぜ勘違いを・・」
侯子はカップをテーブルに置くと頭を抱えた。この男、仕事は出来るしマナーや振る舞いも完璧なのだがアリィの名を出すと素が出てしまう、残念な男なのだ。
おそらく職場でもこの男の気持ちは知られているとは思うが、当の本人であるアリィだけは気付いていない。
ジャンと言う婚約者がいる事も原因ではあると思うのだが・・
「アリィは勘違いをしていて、卿とわたくしをくっ付けようとしておりますわ。わたくしの気持ちはあの時申した通りですの」
「・・ああ、その為に今日の伯爵夫人のお茶会に貴女の事を伝えた」
「ありがとうございます」
私は卿に深く頭を下げる。
「ですが!ですがです!アリィは完全に勘違いしていて、下手をすればわたくしと卿をくっ付けようとしますわ!どうなさるおつもりで?」
「もちろん彼女には誤解を解いてもらう!だが、彼女がジョージ卿と婚約している事もまた事実。簡単には事は運べない・・」
頭の回転も良く、仕事も出来るのに恋愛に関してはダメなんて・・見ていてイライラしてしまう。
「お嬢様、そろそろお時間が・・」
「そうね、行きましょうか」
サラの言葉に侯子も反応し立ち上がると、私に左手を差し出した。
「あら、エスコートしてくださるの?」
「目的地は同じですので」
私は侯子の手を取ると静かに玄関へと向かった。




