レッドとマギィの結婚騒動 中
俺の婚約者は抜けているのか、勘違いしているのか?俺の本気のプロポーズを主人であるマーレン様を喜ばせる為の行為だと思っている。
確かにマーレン様が喜んでいると仕事がはかどるから、どんどん喜ばせたいのは本当だけど・・
「レッド、マギィの侍女教育は進んでいるか?アリィが心配しているからな・・」
「とても順調ですよ。この調子なら結婚前にアリィ嬢の元へ行かせれそうです」
「そうか、それなら良かった」
きっと今日にでもアリィ嬢へ伝えるのだろうな。いいなマーレン様、幸せそうで。
羨まし過ぎて捻くれてしまいそうだ。どうしたらこの気持ちが本心だと分かってくれるのだろうか、どうしたら婚約者として付き合えるのか・・
マギィを見れば見るほど分からなくなる。
それでも分かってもらうためにはスキンシップが大切だと思い、休みの日は出来るだけ合わせてショッピングや食事に誘った。
マギィも特に嫌がらず一緒に行動を共にする。
そしてこうした街に出ることも、今後のシュミレーションと勘違いしているのだ・・
「さすがのプレイボーイもマギィの手にかかれば形無しだなぁ」
と大きな声で笑い出すマーレン様。
悔しいけど本当の事なので言い返せない・・
そんな俺の態度を見て
「まぁ俺も偉そうな事は言えないが、気持ちを伝え続けるしか相手には伝わらないだろうなぁ」
体験談を元に言ったのだろう。
でも確かにマーレン様も当時婚約者がいたアリィ嬢に気持ちを伝え続けていた。
マーレン様を見ると黙って俺を見ていた。その目がまるで 頑張れよ と言っているようで・・
なぜだか泣きそうになった。
「レッド様合格しました!侍女試験に合格です!レッド様のおかげです!!」
ある日剣の稽古をしていたらマギィが走って報告に来た。よほど嬉しかったのだろう、夜に会う約束をしていたのに俺を探して報告に来た。
( 普段俺に見せない顔だけど、やっぱり可愛なぁ)
褒めながらもそんな事を思ってしまった。
夜は会って気持ちを伝えようと思っていたが、せっかくだからお祝いにと食事に行く事にした。
マギィもよほど嬉しかったのか、二つ返事で行くと言ってくれた。
いつもは庶民が行く店が多いが、今夜は少し奮発して高級レストランへと向かった。
マギィも驚いて
「こんな格好では行けません!」
と怒っていたがそんな事は百も承知!
レストランへ行く前にドレスの店に行き、既製品だけどマギィに似合うドレスをプレゼントした。
マギィは男爵令嬢だが普段から諜報やメイドとして働いていたため、ドレスなど無用だった。
だからこそ、いつかは着飾ったマギィと出掛けたい!と思っていた。
最初は困惑していた彼女も実際にドレスを着ると、やはり女性だな。とても、とても嬉しそうにドレスを着ていた。
「レッド様、ありがとうございます。こんな素敵なドレス着た事無いので嬉しいです」
そう言いながら顔を赤く染めた。
俺はそんな彼女に気持ちが抑えられず、思わず額に口づけを落とした。
正直、俺も驚いた。
いつもマーレン様がアリィ嬢にしている所を見ていたが、実際に自分がマギィにする事は無いと思っていた。
のに・・
無意識に、可愛いと思った瞬間に口づけていた。
「はっ、反則です・・」
更に顔を真っ赤にしながら両頬を膨らます。
何だこの可愛い生き物は!!
そう思えた。
そう、思っただけだと自分でも思ったのに、気付けば彼女を抱き寄せ唇を奪っていた。
何度も何度も・・
レストランに着くまでの間、俺はオスになってマギィの唇を奪っていた・・
「レッド様はバカなのですか・・?」
個室を予約していたからお互いに少し乱れていたが気にならなかった。
「こんな気持ちになったのも、こんな事をしたのも君が初めてだよ。嫌だった?」
料理を注文し来るまでの間、こんな会話ばかりしていた。
正直レストランに来る前で良かった。そうでなければ今頃俺は、間違いなく獣になっていただろう・・が、さすがにそこまでは彼女には言えない。
その後は二人で料理を楽しんだ。
マギィに変化が見えたのはその一件以来だ。
なぜだか俺を見ている気配がし振り向くと目が合うようになった。
今までは目が合うとそのままお辞儀をして去っていくが・・
顔を赤くして、両手で隠すのだ。その仕草がまた可愛くて俺の胸を締め付けた。
「マギィと何かあったのか?」
「なっ!何もして無いですよ!まだ結婚前ですし!」
「・・いや、最近のマギィは付き合い始めた頃のアリィに似てたから・・」
「そうなんですね・・」
自ら墓穴を掘る!とはこう言う事なんだな・・と思ったし、あの日を境に会えば必ず口づけをしていた。
「まぁ婚約者同士だからな、一線を越えなければ良いと思うぞ」
「マーレン様とアリィ嬢の様にですか?」
「そっ、そうだな・・」
マーレン様ともこんな会話をする様になるなんて・・男でも恋をするとこんな風になるんだな。別にそれが悪い事でも無く、むしろ嬉しい。
最近はマギィもマーレン様とアリィ嬢の結婚の準備に追われて、なかなか会う事が出来なくなった。
それは仕方がない事で、侯爵家の嫡男が結婚するのだから不備があってはならない。
普段の仕事に結婚式の準備、アリィ嬢は更にドレスや花嫁道具やらで更に忙しいらしく、最近ではマギィが呼ばれる事も多いと聞いた。
アリィ嬢にとってもマギィが心の癒しになれば・・と思っていたが、俺が癒されない!
マギィ不足で倒れそうだ!
普段は頑張って冷静に装っても、一人になるとフラフラだ。
今日も一人、自分に当てがわれた部屋で仕事をしていたが・・
「手につかない・・明日までに提出しなければダメなのに・・」
机の上に頭を乗せて休ませるが休まらない。
そう言えば最近まともに寝てないなぁ・・と思っていたら、優しく頭を撫でられて顔を上げると
「お疲れ様ですレッド様。こんな所で寝ても休まりませんよ?」
マギィが優しく頭を撫でてくれていた。
多分、一瞬だけ寝てたのだろうか?彼女が部屋に入って来た事が分からなかった。
彼女も仕事だったのか、お仕着せ姿だったが俺は彼女を膝の上に座らせると思いきり抱きしめた。
久しぶりの彼女の香りに包まれて安心したのか、気付けばソファーで彼女の膝枕で寝ていた。
「目が覚めましたか?」
「ごめん、君も疲れているのに!」
急いで起きあがろうとしたがマギィに止められた。
自分はちゃんと寝ているから大丈夫だと言って、そのまま膝枕の態勢で頭を撫で続けた。
俺はそれが嬉しくてマギィの腰に腕を巻き付けて、彼女の香りを堪能した。
安心する、優しい香りだな・・
「アリィ様から言われたんです。マーレン様がレッド様が無理をしていて心配だと」
「えっ?」
俺は顔を上げた。するとオデコに優しく柔らかいものが当たった。
「無理なさっていたのですか?ダメですよ?ご自身の身体をもっと労ってください」
「・・・」
「私を寡婦にするおつもりですか?」
泣きそうな・・いや、泣きながら俺の頭を撫で続ける。
「こんなに痩せられて・・気付かなかったのですか?本当に倒れる寸前だったのですよ?」
マギィの涙が顔に落ちてくる。
「ごめん、本当にごめん・・これからは気をつけるから泣かないで・・」
「ほんとう・・ですか?」
俺は起き上がると彼女を抱きしめる。
「ああ、君を寡婦にするつもりは無いし・・俺も君ともっと一緒にいたいから」
彼女の温もりを感じながら、彼女がいない自分を想像出来なくなっていた。




