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三姉妹の真ん中令嬢は幸せになれないの?  作者: おつかれナス


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番外編 幼き頃の夢

思いがけず沢山の方に読んで頂けたことが嬉しくて、勢いで書いてしまいました!


皆さま感謝!!

「マーレン様はお父様やお祖父様のような立派な侯爵様になられるよう、しっかり学ばなければなりません!」


 物心がつく頃には家庭教師たちに言われ続けた言葉。自分はこうなるべき、こうでなければならない!そう言われていた。

 その当時の自分はそれが当然のことと思い込み、それが間違っているなんて思いもしていなかった。


「嫌な事は嫌と言わなければ、相手には伝わらないと思うわ」




 何年かぶりに熱を出した俺は屋敷へ着くなりベッドへと倒れ込んだ。

 

「マーレン様大丈夫ですか?何かお口に入れれる物などありませんか?」


 新妻のアリィが心配そうに顔を覗かせる。


 誰が言ったんだっけ?


 熱に浮かされてその言葉を言ったのがアリィなのか、他の人なのか・・熱に侵された頭では思い出そうと思っても深い眠りへと引き込まれ、思い出す事も出来なかった。



「今度国内視察へ出掛ける事になった」

「どちらへ行かれるのですか?」

「辺境伯領へ。隣国との事もあって王より確認して来いと言われてね・・」


 父であるグラビティ侯爵は王家の見張り番と言われており、時々貴族の領地へと足を運んでは偵察に行っていた。


「マーレン、一緒に行くかい?」

「行ってもよろしいのですか?」

「ああ、この時期の辺境伯領はとても賑やかくてね、お祭りもやるんだ。マーレンももう十歳だ、そろそろ同行させても問題無いかと思ってね」

「ですが遊びに行く訳では・・」

「おっお母様行きたいです!僕もお父様と一緒に他の領地へ行ってみたいです!」


 僕しか産めなかった母は僕に何かあったらと、いつも心配していた。今回の事も最初は良い顔をしなかったけど、お父様と一緒にお願いしたら許してくれた。


 その日から三日後、僕はお父様と一緒に辺境伯領へと出発した。

 道中は何事も起きず、途中途中で停泊しては七日かけて辺境伯領へと向かった。

 辺境伯領は隣国と接しているだけあって、山に囲まれた土地だった。

 行った次期は収穫も終わっており、その年は例年よりも収穫量か多かったらしく、それを神に報告する為のお祭りだったらしい。


 僕が屋敷に到着した日はそのお祭りの準備に屋敷の人達も追われていたようで、不思議とこちらまでソワソワしてしまった事を今でも覚えている。


「マーレン様」


 声をかけられて振り返ると、辺境伯の息子達が立っていた。歳の近い子息と言えばレッドか王子たちくらいだったので、少し緊張した。


「何でしょうか」


 恐る恐る答えると


「今夜この領地で収穫祭があります!良かったら一緒に行きませんか?」

「!!行っても良いのですか?」


 僕の返事に逆に驚いた顔を見せる子息に、あっ!とした顔をしてしまった。


「も、もちろんです!広場には色々な屋台も出てたのしいですよ!」

「今年は麦も野菜も豊作だったので屋台もたくさん出ると報告がありました!」


 お父様に話すと 私も行くからマーレンは先に行って来なさい。 と言ってくれた。

 僕は初めての事に浮かれ、自分の立場をすっかり忘れ子息たちと初めて見る果物や食べ物、品物に釘付けになっていた。


「ここはどこだ・・」


 見る物食べる物全てが初めてで、次の店次の店と渡り歩いている間に子息たちと逸れてしまっていた。

 足を進めれば進めるほど人通りの無い場所へと向かってしまう。


「誰か・・誰かいないか?」


 声を出すもどんどん荒れた場所へと向かってしまう。とうとう足を止めてしまった時急に後ろから腕を引かれた。

 俺は子息たちだと思って振り返ると、そこに立っていたのは汚れた服を着た同じ年頃の男三人だった。


「こんな所に見た事ない奴がいるぞ?」

「ぼ、僕を広場へ案内しろ!」


 人の姿を見て安心したのか、つい命令口調で言ってしまった。


「はっ?いま何て言いました?人に物を頼む時はそれなりの言い方がありますよ?」

「触るな!僕は侯爵家の息子だ!」


 男たちは互いに顔を見合わせると笑いながら


「今、何て言ったんだ?こうしゃくけ?何だそりゃ!!」

「おい見ろよこの服!これ売れば二日は旨いもん食えるんじゃないか?」


 三人のうちの一人に僕は引きずられるように連れて行かれ壁に押さえつけられた。

 もがいても力が強く逃げられない。


「すげ〜なこの服。ツルツルして見た事ねー生地だぜ?」

「服だけじゃないぞ!ズボンだって見た事ねーよ」


 僕を壁に押さえつけながら着ている服を触り出す。

 抵抗するが思い切り押さえられているせいか声も出せない。



「マーレン様?マーレン様、大丈夫ですか?」


 優しい声に意識が浮上する。


「こんなに熱が出るまで無理をなさって・・」


 額に冷たい何かを乗せられる。それがとても気持ち良くて俺はまた意識を沈めた・・




「お前こうしゃくけ?の子とか言ってたよな?服売るよりもコイツ売ったほうが金になるんじゃ無いか?」

「おー、それ良い案だな!確か今日来るんじゃね?」


 俺の身体は震えだし抵抗する力も無くなっていた。

 いつも必ず護衛がいるが今夜は辺境伯の子息たちもいるし、危険な事など起こらないだろうと騎士達にも休暇を与えていた。

 その結果がこれか・・

 口に何やら臭い布を入れられ、両手は後ろで縛られそうになった時


「坊ちゃん!どこですか?返事をしてくださーい」


 女性の声がした。いや子供?


「坊ちゃん返事してー!」

「んーんー!!」


 声は出せなかったがとにかく騒いだ。

 そのおかげか僕の声に気付いた女の子が僕たちの方を振り返る。


「あっ!見つけた!何してるんですか?皆んな探してましたよー」


 見た目まだ十歳に満たない女の子が近寄ってきて、僕たちの前に立ち塞がる。

 そして僕の状態を見ると


「貴方たち、この方がどこの誰か知っててこんな事をしているの?」


 と、少し大袈裟に問いかけてきた。

 もちろん僕と彼女は初対面。


「そう言うお前は誰だ?」

「コイツの仲間かな?だったら一緒に売っちまおうぜ!」

「!!」


 初めて会う子にまで迷惑どころか売られてしまう!冗談じゃない!!


 僕は力の限り暴れるが、子供といえど男二人に押さえられたら無理だった。

 しかし彼女は僕を押さえている男たちと、口に布を入れている男に声をかける。

 

「本当にこの方の事を知らないの?」


 男たちは 知らねーなぁ と、笑いながら答えた。


「この方はこの国の第二王子殿下よ!貴方たちこんな事がバレたら、親兄妹全員が処刑されるわよ!」

「!!!」


 思い切り啖呵を切った。

 僕も男子三人も青ざめる。

 三人は俺が王子だと思って一瞬手の力を緩めた。

 その時


「いてぇー!!」

「めっ、目がいてえ〜。何しやがる!!」

「こっち!早く走って!!」


 女の子は僕の手を掴むと思い切り走り出した。

 



 どこをどう走ったのか・・きっと彼女もここの土地を知らないのだろう。

 走り続けているのに広場に出れず、途中男たちの声が聞こえると隠れ、また走りをくり返す。


「ちょっ、ちょっと・・まって・・」


 どれだけ走ったのか?僕はもう走ることが出来ないほど疲れていた。

 見れば女の子も・・


「お兄ちゃん体力無いのね?こんな事で息を切らしてたら捕まってしまうわ」


 息一つ乱さずに立っていた。


「君は・・この領地の子?」


 女の子は頭を横に振る。


「家族で来たの、お父様の仕事の関係で」

「じゃぁ何で・・」

「・・・」

「!!君もまいご・・」

「こっちで声がしたぞー」


 僕たちは互いの口を押さえながら、声が遠ざかるのを待ちながら身を縮めた。

 そして声を出したのは彼女の方だった。


「わたし迷子じゃないもの・・。お兄ちゃんが人通りの少ない道へ入って行くのが見えて・・」


 女の子は下を向きながら話す。


「その道は絶対に入ったらダメ!って言われてたから・・お兄ちゃんの着てる服は貴族でも高位の物だから・・」


 僕を心配して着いてきたのか・・こんなにも小さいのに。

 

「君にも怖い思いをさせたね・・」


 急に恥ずかしく、情けなくなった。

 そしたら何か自分の事を話したくなって、独り言のように言葉が出てきた。

 

 家門の事、自分自身の事、名前こそ言わなかったけれど常に両親や家庭教師達に言われている事を・・

 

 女の子は黙って僕の話を聞いてくれていた。

 時々男たちの声が聞こえて、その度に互いの口を押さえて・・そんな事を何回か繰り返したとき、聞き慣れた騎士たちの声が聞こえた。


 僕は女の子の手を掴むと、今度は僕が女の子を誘導した。

 男たちに見つからないよう慎重に・・

 すると広場の外れに出た瞬間に騎士たちも僕に気付き、走って来たのが見えた。

 僕は女の子も一緒行こうと手を引いたらスッと手が離れた。

 振り返り女の子を見ると、僕よりも小さいはずなのに何故か大人びて見えて・・


「お兄ちゃん、嫌な事は嫌と言わなければ相手には伝わらないと思うわ」

「えっ?」

「お兄ちゃんは自分で自分を決めつけているんだわ。もっと自由で良いんだよ!だって私たちはまだ子供なんだもん」


 女の子はニコニコと笑いながら ってお婆様が言ってたわ! と騎士たちの方へ指を差した。

 僕はつられて後ろを振り返ると騎士たちと一緒に辺境伯の子息たちも走って来ていた。

 もう一度お礼を言おうと女の子を見ればすでに居なくなっていた。

 少し先を見れば女の子も家族が探していたようで


「アリィはまた何処かに行って!お父様に叱ってもらいますからね!」

「お姉様!それは許してー」


 アリィと呼ばれた女の子は探しに来たであろう姉と手を繋いで歩いて行った。

 こちらを見た気もしたが、その女の子とはそのまま別れた。


 屋敷に戻った僕は家臣にはもちろん、お父様にもこってり搾られた。

 いや、初めて殴られた。

 専属侍女は泣きながらも驚いて僕を抱き上げてくれたが、お父様は目に涙を溜めていたから本当に心配してくれていた事が伝わってきた。


 僕は殴られた所は痛かったけれど、それ以上にお父様の愛が伝わり嬉しく思った。

 後で侍女に聞いた話では、お母様はもう子供を産む事が出来ないから僕に何かあればきっと自分も死ぬ!と言い出すだろうと、お父様が言っていたと・・


 僕は布団の中で女の子に言われた言葉を思い出していた。

 もっと自由で良いんだと・・


 「お父様にお願いがあります」


 次の日の朝、食堂でお父様を待っている間考えていた事。


「僕身体を鍛えたいです!剣も習いたいです!」

「・・何故そう思った?」


 僕はお父様に昨夜考えていた事を伝えた。

 お父様は黙って僕の話を聞いてくれていて、


「・・そうか、そうだな。では屋敷に帰ったら習うと良い!」

「!」


 お父様は僕が驚いた顔をした事に気付き、笑いながら話を続ける。


「今回のことでマーレンも何か思う事があったのだろう?そろそろ始めても良いからだとは思っていた。スレント子爵、頼めるか?」


 スレント子爵は我がグラビティ侯爵家の筆頭家門でで、特に護衛と諜報を担っていると聞いた事がある。


「承知致しました。わが息子も訓練を始めた所ですので丁度良いかと」

「ありがとうございます!」


 僕は二人に頭を下げると、朝食を食べ始めた。


 屋敷に戻ると自分よりも少し下のレッドを紹介された。レッドはスレント子爵家の嫡男でいずれは僕の専属となると聞かされた。


 初めの頃はレッドも家門の言いなりになる事に抵抗していた様だった。

 話を聞くとやはり 侯爵家を、支えろ!スレント家門の頂点に立つ男なのだから! と、僕が言われて来た事と同じ事を言われて来たのだと言った。


 僕もレッドには本心を伝えた。

 レッドと同じ気持ちだった事、女の子に言われて気持ちが変わったこと・・全てを伝えた。

 最後には


「マーレン様がその女の子に救われた様に、僕もまた女の子の言葉で救われました・・。僕は僕のままで良いんですね!」

「そうだよレッド!変わる事は大切だけど自分を殺してまで変わる必要なんて無いんだよ!!」


 その日から僕とレッドの関係も変わったように感じた。二人の時は友人のように接してくるが、そこに一人でも大人が入れば主従の対応をする。


 そしてある日・・


「マーレン様、私たちの恩人である令嬢を探し当てました。知りたいですか?」


 あの日から十年。

 探そうと思えば探せたが、あえて探さなかった。

 まだ俺自身が彼女に会える男になっていないと思っていたから・・


「令嬢も今年社交会デビューの歳ですよ?早くしないと横からカッサられますよ?」


 まるで自分の事のように心配してくるレッドを横目に、二の足を踏んでしまった。


 その事が後で物凄く後悔する事になるとは・・

 知っていたらデビュー前に婚約の提案をしたのに・・




 目を開けると夫婦の寝室ではなく、自身の部屋だった。

 アリィと結婚したのは夢だったのか?

 俺は起き上がろうと身体を動かした瞬間扉が開く音がした。

 扉の方を見ると立っていたのはレッドだった。


 ああ、アリィの声も姿も夢だったのか・・


「マーレン様、私の顔を見てガッカリするのは止めてください。心配したんですから」

「すまない、ちょっと良い夢を見ていたから・・」

「どうせ奥様の夢でもみていたのでしょ?」


 レッドは呆れたように歩いてくる。

 

「ん?」


 今レッドは何と言った?


「奥様は今、マーレン様の為にスープを作られておりますよ?」

「奥・・さま?」


 俺は誰と結婚したんだ?


「えっ?まさかマーレン様・・?記憶が!?」


 二人でワタワタしているとアリィとマギィがトレーを持って入って来た。

 俺はアリィの顔を見た瞬間、何故か色々な感情が出て来てしまい・・


「マーレン様!目が覚めたんですね!熱が高かったので心配したんですよ?」


 アリィが側まで来る。俺はアリィの手を握るとその温もりに夢では無いと安堵した。

 レッドは気を利かせてマギィを連れて部屋から出て行く。


「夫婦の寝室では無いからアリィと結婚した事が夢だったのかと思った」

「申し訳ありません、レッドが夫婦のベッドだと色々と大変だからと言ってこちらに運んだんです」


 確かにこちらのベッドのが小さいからシーツ交換も楽だろうが・・

 

「まだ少し熱がありますね・・もう少し眠りますか?スープ飲まれますか?」


 優しく額に手を当てながら熱を確認したアリィの手を握る。そんな俺に優しい眼差しで見つめてくる。

 俺はそんなアリィに椅子に座るよう伝えると、夢で見た事を話した。

 アリィは黙って俺の話を聞いている。



 ああ、夢で良かった。


 俺はアリィの手を握りながら、この時間を愛おしく感じた。






 

皆さまの反響を見ながら、続編は書いていこうと思います!!

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