44 最終話
最終話です。
今までお付き合いくださり、本当に嬉しく思います。
少し長いですが切らずにこのまま載せました。
「アリィもこの屋敷から出て行ってしまうのね」
お姉様とアンドリュー義兄様の結婚式が済んで半年。昨日はトゥーエとモルダン様の結婚式だった。
子爵家の娘と由緒ある次期伯爵の結婚に、周りの令嬢たちからの悲鳴の様な声が上がったが、それ以外の人たちからは温かい言葉をいただいた。
それもそのはず・・
義兄となる二人がグラビティ侯爵家とファーレン伯爵家ともなると誰も口が出せないのだ。
「そんなに急いで家から出なくても・・」
チェリーお姉様が寂しそうに言ってくる。が、そんなお姉さまに寄り添う様に立っている義兄様に微笑むと
「義兄様がいらっしゃるんだから、そんな事言わないで。それにあと半年もしたら新しい家族が増えるのですから」
そうなのだ!お姉様のお腹には今新しい命が宿っている。お姉様は結婚して直ぐに授かった!と言っていたが・・ちょっとあやしい。
でも、義兄様がそっとお姉様のお腹に手を当てながら見つめ合う二人を見ると、私まで心が温まっていく。
「義兄様、お姉様をよろしくお願いします。」
私は二人に対し深く頭を下げた。
「貴女がここから出て行けば、もう気安く名を呼べないのね・・」
「そんな事ありません・・。私はいつまでもお姉様の妹ですから」
そう言いながらお姉様を軽く抱きしめる。
今日から私はマーレン様が用意してくれたあの屋敷へと移る事となった。
式の準備もあるしお姉様にも子が産まれる。それに一番の理由は・・
「そろそろアリィを連れて行っても良いか?両親が待っているんだ」
「マーレン様!」
なかなか出て来ない私に痺れを切らしたのか、マーレン様が直々に迎えに来た。
「こんにちは義姉上、アンドリュー」
「おいおい、俺には名前呼びか?」
「当たり前だろう、なぜお前に義兄上と呼ばねばならん」
お姉様が結婚してからずっと、呼び名で言い合う二人は本当に仲が良いのだと思う。
ちなみにモルダン様は今まで通り名前呼びにすると言っていた。
「これから大変ね、侯爵夫人がいるから大丈夫だと思うけれど私も相談に乗るから、一人で抱え込まないようにね」
「ありがとうお姉様、身体に気を付けて。もう一人の身体では無いのですから」
こうして私は今まで住んでいた屋敷を後にした。
今日から私の帰る屋敷はマーレン様と住むあの屋敷なのだ。
「寂しいか?」
私がずっと小さくなる屋敷を見ていたからか、マーレン様が気にしながら言ってきた。
私はマーレン様へニコリと微笑むと
「いいえ、これからはマーレン様と住むあの屋敷が私の帰る場所になるのかと思ったら、嬉しくてしかたありませんの!」
そう、これからの事を考えると楽しみで仕方がない。あの日から二人で揃えた家具や調度品。
庭に植えた花や木も、屋敷で働いてくれる人たちとの面接も全て二人で話し合って決めた。
「ただ・・マギィと離れてしまった事が悲しいですが・・」
「・・・」
あの事件から次期侯爵夫人の身に何かあってはいけないと、私の身の回りの世話はグラビティ侯爵家から派遣された騎士兼メイドになった。
そのため今まで私の専属メイドをしていたマギィは侯爵家へと戻って行ってしまったのだ。
「子爵家なら男爵令嬢でも良かったけど、侯爵家ともなればしっかりと教育を受けた侍女で無ければ務まりませんものね・・」
「ああ、侯爵家は高位貴族になるから王家とも顔を合わせる事が増える。グラビティ家の名に恥じない身なりも必要だからな・・」
分かっております・・。
分かっていた事だけど、マーレン様の口から直接聞くとなぜか寂しさが込み上げてくる。
そんな私をマーレン様は優しく抱きしめてくれた。
馬車は私たちの住む屋敷ではなく、お義父様お義母様の住む侯爵邸へと私たちを運んだ。
侯爵夫妻が私を招いての晩餐会を開いてくれるとの事で、二人で参加する事となった。
執事の案内で食堂へ行くとすでに侯爵夫妻がテーブルに着いており、私たちを出迎えてくれた。
「侯爵、夫人、本日はお招き頂きありがとうございます」
挨拶をすれば 家族になるのだから堅苦しい挨拶は無しよ! と、婦人に言われ、私はマーレン様の隣の席へ腰を下ろした。
晩餐は進み最後のデザートを食べ終わった時、侍女長が入って来ると夫人へと耳打ちした。
夫人は頷くと侍女長は下がって行く。
何かあったのかしら?
直ぐに戻って来た侍女長の後ろに、侍女の制服に身を包んだ一人の女性も一緒だ。
「アリィさんがマーレンと結婚した後、この子を貴女の専属侍女にしようと思うの。今はまだ侍女見習いとしてわたくしに就かせているけれど・・」
「結婚式までには見習い期間も終了致しますので」
夫人と侍女長に説明された後、見習いの女性が顔を上げる。
そこにいたのは
「マギィ・・」
だった。
マギィは深く頭を下げると
「お久しぶりでございます、アリィ様。急に目の前から姿を消した事、お詫びいたします」
「いいえ・・元気だった?」
マギィは ハイ と答える。
私はハラハラと涙を流しながら何に聞いて良いか分からず、その場から動けなかった。
それを察したマーレン様は侯爵夫妻に席を外す事を伝えると
「先にサロンへいっているから、ゆっくりおいで」
と三人で食堂から出て行った。
私はマギィに側へ来るように伝えると、ゆっくりと私の横へ移動した。
「お久しぶり、ね。いつから侍女の見習いを?」
「アリィ様の側を離れて直ぐです。アリィ様のお側を離れないといけない。そう知ってから自分はどうしたら良いのか?と悩んでおりました」
マーレン様と婚約を結ぶと決まった辺りから、何となく元気がないな・・と感じていた。その頃から離れる事が決まっていたのね。
私は黙ってマギィの言葉に耳を傾ける。
「レッド様が三つの道を示してくださいました」
「どんな?」
「・・」
マギィは少し考えたあと
「一つ目は他家へ嫁ぐこと。二つ目は侍女見習いとなること。ただ、侯爵家で侍女となる場合の爵位は子爵位以上。我が家は男爵なので・・諦めておりました」
でも今は見習いとして働いている・・
「マギィ、結婚したの?」
恐る恐る聞いてみるとマギィは横に振る。
「その、三つ目の道が・・レッド様とその、婚約を・・」
「!」
ど、どういう事!!
私がマギィへ詰め寄ろうとした時、食堂へ入って来る人の気配に気付くと
「僕が彼女に提案したんです。僕と婚約すれば爵位は上がりアリィ嬢の専属侍女も夢じゃない!と」
レッド様がマギィの隣に並び事情を話している間、マギィは顔を赤らめながら下を向いている。
「無理矢理では無いですよね?」
「もちろん。僕にだって気持ちはありますから」
いつから二人の距離が縮まったのかはまた後日聞き出すとして、二人がそんな仲になっていた事がとても嬉しくて思わずマギィに抱きついてしまった。
まだ見習い中のため私の専属にはなれないけれど、結婚式までには合格する!と、私と約束して部屋から下がって行った。
レッド様から二人の事は聞き出せないだろうと思い、マーレン様から聞けるかどうか話してみよう。
私はレッド様の案内でサロンへと向かうと、すでに三人はお茶を飲んでいて
「マギィの事はマーレンに言ってね。この子、貴女のために法律を変えようとしていたから」
と、侯爵夫人が笑いながら話してくれた。
結婚式まであと半年。
侯爵夫人として学ばなければならない事は山程ある。が、私一人で乗り越えようとは思っていない。
ジョージ様と婚約していた時とは全く違い、常に私を気遣ってくれる彼がいて、私を一番に考えてくれる侍女(見習い)もいて、職場の気の良い同僚もいる。
もちろん姉妹もいる。
「アリィさん、お色直しのドレスにこの宝石はどうかしら?侯爵家の家宝の一つなのだけど」
「!!!」
「だったらこちらの色はどうだろうか」
「・・」
マーレン様となら何でも話し合って、時には喧嘩もしてそれでも最後は笑い合っている。そんな夫婦になりたいと思う。
「アリィ、どうした?」
何も言わない私に心配そうに話しかけてくる。
そんなマーレン様に、とびきりの笑顔と共にこう伝えた。
「今からマーレン様との結婚式が楽しみです!」
と・・
[完]
これにて完
最後にレッドとマギィの話を載せて、本当の終了にしたいと思います!
12月10日にレッド目線を投稿します!
良かったら読んでください!




