42 襲撃の真相
「マーレン様!マーレン様!」
私は捉えられゲイル様の元へ連れて行かれる。目の前には左腕から血を流し片膝を付くマーレン様が・・
「お久しぶりだな、アリィ嬢。愚弟と婚約解消をしたと聞いた。すまなかったな」
まさか謝られると思わなかったため、拍子抜けしてしまった。
「なぜこんな事を?」
マーレン様が問いかけるとゲイル様は私を後ろから抱きしめる。
「やめてください!離して!」
「マーレン様、最初アリィ嬢と婚約するのは僕だったんですよ。それなのに・・」
後ろから抱きしめられ身動きが取れない私は、目の前のマーレン様を見つめた。
「マーレン様、どうしてあいつがアリィ嬢の婚約者になったのか知っていますか?」
「・・いや」
でしょうね・・と呟いた。
「私から父に願い出たんですよ。アリィ嬢と結婚したい!と。そして父にはロード領地から採れる鉱石をヘルン家に流すと言ってね。なのに・・」
「隣国とのゴタゴタに巻き込まれたか・・」
「ご存知でしたか。そう、辺境伯と隣国とのイザコザに我が騎士団が派遣されたのです。行くならアリィ嬢と婚約を結んでから!と父に説得したのに・・こともあろうか母が我が子可愛さに、庶子のジョージを婿に出してしまったんだ!」
ゲイル様は怒りをマーレン様にぶつけようとしたが、私が踏み止まった事で気持ちが私へと移った。
「ゲイル様はなぜ私を?お会いした事は無かったと思いますが・・」
今の疑問をぶつけた。ゲイル様はそんな私を見つめると優しく私の頬を撫ぜる。
「君の事はある夜会で会ったんだ。ロード家の三姉妹は有名でね、どの子息も君たちを狙っていたが、私はもともと結婚するつもりも無かったから暇つぶしに庭に出たんだ。そんな時に四、五人の子息に囲まれた一人の令嬢を君はたった一人で助け出していたんだ」
覚えている。
その日は王太子殿下が婚約して初めての夜会だった。その為この国の貴族の殆どが集まった、大きな夜会だった。
私もゲイル様と同じで、姉と妹と比べられるのが嫌で庭に出た。その時四、五人の子息に絡まれている令嬢に会った。
その令嬢は領地から出て来たばかりの男爵令嬢で、イタズラ目的で庭に連れ出されたところだった。
「あの時の貴女はとても強く、優しく、美しかった。そんな貴女を私が守りたいと思ったのです」
マーレン様がいるのに私に向けるゲイル様の顔は、気持ち悪いほどの微笑みを浮かべていた。
「やっとジョージと貴女を離せたのに、それを横から掻っ攫った貴方を憎く思うのは当たり前でしょう?」
「・・・」
マーレン様は黙ってゲイル様の言葉を聞いている。
私はゲイル様に抱き締められ身動きが取れなく、それでも何とか抜け出そうと身体を動かす。
「貴女もこの方よりも先に私と出会っていれば・・いや、今からでも遅くない。必ず幸せにしますよ?貴女と暮らす為に小さいですが領地と爵位も買いました。今から向かいましょう」
「待ってください!ゲイル様が私を想い続けてくださった事は嬉しく思います。ですが私の気持ちはどうなるのですか?私は今マーレン様の、次期グラビティ侯爵の婚約者です!」
「その点は心配しなくても大丈夫ですよ?今から向かうのは隣国ですので」
「「!!?」」
さすがにこの言葉を聞き流す事が出来なかったマーレン様は傷を負ったにも関わらず立ち上がった。
「アリィは連れては行かせない。隣国?領地と爵位を買った?貴様はこの国の貴族ではないのか?」
「好きな人と一緒になれない国になんか、何の未練も無いね。隣国は私たちを歓迎してくれている」
「・・何を引き換えに?」
「・・・」
「手ぶらで領地と爵位を売らないだろう。何を引き換えに買ったんだ?」
二人の会話にある問題が頭を掠めた。それは・・
「我が領地から出た鉱石・・ですか?」
「さすが私が惚れた女性だけあるな。そうだよ、君の・・ロード子爵家から出た鉱石を隣国へと流したんだ。もちろん国には報告していない。もし罪に問われるのならロード子爵と我が父上だ!」
ゲイル様は大きな声で笑っている。
「君はこんなにも賢いのに、他の家族は全くのダメ人間だらけだ。父上の上手い言葉に騙されて、手元に入ったのはほんの僅かなお金だけ。残りのほとんどは私が父上に上手く言って隣国へと流させて頂いたよ!」
「ひどい・・」
ゲイル様は私を横抱きに抱えると歩き出した。
「待て!!」
「いや!おろして!!」
ゲイル様は顔だけを後ろに向けると
「貴方にはここで死んで貰いますよ。生きてると面倒なので。彼女の事は心配しないでください。貴方以上に大切にしますから」
さよなら と、笑いを堪えながら言うと、私を抱え用意された馬車へと乗り込む。
私はマーレン様の方を向いたが、数人の男たちがマーレン様へと飛び掛かっていた。
「マーレン様!マーレンさまぁぁぁぁ」
私の叫び声はマーレン様へ届いたのか・・
ゲイル様が私を馬車へ乗せると同時に、静かに扉を閉じてしまい・・
ゆっくりと馬車は動き出した。




