41 襲撃
マーレン様に気持ちを伝えた日の夜、私は家族に今日の出来事を伝えた。
家族の反応は少し複雑だったけど、それでもらお互いの気持ちは同じだと話すと女性たちは皆喜んでくれた。
もちろんお父様も喜んでくれたが、グラビティ侯爵家との縁が切れなくて良かった!の方が強い気がした。
「でも記憶が戻った訳では無いのよね?」
お姉様の問いに私は頷いた。するとトゥーエが
「アリィお姉様、そのお伝えしたい事があります」
声を上げたがその先をどう伝えたら良いか分からずモゴモゴしている。
「モルダン様との事かしら?おめでとう、トゥーエ。マーレン様から二人の事も聞きました。こんな素敵な事も忘れてしまった私を許してね」
私がニコリと微笑むと、ホッとしたのかトゥーエも目に涙を溜めながら微笑み返した。
記憶をなくした事でこんなにも素晴らしい事を忘れてしまった今、なんだかすごく勿体無いと感じたと同時になぜ記憶が無くなったのか。
私自身に何が起きたのかを知りたくなった。
でも、マーレンに聞いても詳しく話してくれないし、家族に聞こうとしても話題を変えられる。
誰に聞いたら教えてくれるのかしら?
そんな時目の前でマギィがベッドを整えていた。
そう言えばあの時マギィが私の側にいた事を思い出した私は、何となく聞いてみた。
「ねぇマギィ、あの夜会で何があったのか覚えてる?貴女あの時私の側にいてくれたわよね?」
私の問いかけに一瞬動きを止めた(ように見えた)が、そのまま仕事を続ける。
「マギィ?」
「さぁアリィ様!明日も王宮で仕事ですよね?今日は視察でお疲れでしょう?」
話をはぐらかすように さぁさぁ とベッドに追いやられる。
ベッドへ横になると布団を掛けられてしまう。
「私そこまで疲れていないわ。それに、どちらかと言えば興奮してるもの!」
昼間のマーレン様との事を思い出すと顔が赤くなる。そんな私をマギィは優しい眼差しで見てくる。
「アリィ様がお幸せそうで私も嬉しく思います。あの男と婚約してる時とは別人のように良くお笑いになられて・・」
「そうね・・正直今でもジョージ様と婚約解消した実感は湧かないけれど、マーレン様の私への態度を見れば・・実感が湧くと言うか・・」
マギィはニコニコしながら私の話を聞いている。
「ねぇマギィ。もし私がマーレン様と結婚して侯爵邸に行ったら、マギィも着いてきてくれるわよね?」
「・・」
「だってマギィはレッド様の身内だと聞いたわ!て事はグラビティ侯爵家の人よね?」
身を起こそうとしたら手で押さえられ、身体を起こす事が出来なかった。
「その事は父とスレント子爵様とで話し合っているそうです。私も詳しい話は聞いておりませんが・・」
「そうなのね!また詳しい事が分かったら教えてね!」
「承知しました。おやすみなさいませ」
そう言うと部屋の灯りを消して部屋から出て行った。
まぎが部屋から出て行って暫くして
「あっ!話をはぐらかされたわ!!」
と、後になって気付いた。
「おはようございますアリィお嬢様。本日も、グラビティ侯爵家の馬車がお迎えに来られるそうです」
「おはようフレッド。わかったわ!ありがとう」
話を聞く前はなぜマーレン様がお迎えに来るのか不思議だったけれど、聞けば納得。
婚約者だもの・・ね。
馬車が到着したと連絡を受け玄関へ向かうと、ホールでフレッドに出迎えられたマーレン様と目が合う。
「おはようアリィ」
「おはようございます。マーレン様」
階段を降りて行くとマーレン様が右手を差し出しながら待っている。その手に自分の手を乗せるとギュッ!と握られる。
「あっ、あの」
「手が冷たいな」
そう言いながら微笑みを浮かべるマーレン様に、私の胸は鷲掴みにされる。
「行ってらっしゃいませ」
フレッドに見送られ馬車へと乗り込む。
ふと違和感を感じ周りを見ると、
「レッドは用事を言いつけたから先に王宮へ向かって貰ったんだ」
いつも馬車の前で立っているレッド様の姿が無かったのだ。理由がわかりホッとする。
マーレン様と向かい合わせで馬車に乗り、四半刻程で橋を越えるとしばらく林の中を通る。
時間にするとわずかな時間なのに・・
「マーレン様・・何か変です」
「・・気付いたか?今日の御者はいつもの人間では無かったから用心してはいたが・・」
いつもの道では無い道を通っている事に気付いた時、急に馬車が止まった。
窓から外を見ると御者が走り去って行く後ろ姿が見えた。
「アリィはここにいろ。絶対外に出るなよ」
そう言いながらマーレン様は座席の下から剣を取り出し、身構える。
そして呼吸を整えると勢いよく外へと飛び出して行った。
「良くこんな事をしたな。ヘルン子爵家の次男・・か・・?」
「初めましてグラビティ侯爵家マーレン様。その様子だと私の事をご存知の様子で」
ヘルン子爵の次男と言えばジョージ様の義兄さま!
直接お会いしたのは二回程だが、ジョージ様と違いいかにも騎士!といった風格の方だったような・・
「婚約者の周りを調べるのは貴族としては当たり前の事だろう?ゲイル・ヘルン!」
剣と剣がぶつかり合う音が響く。
私は馬車の下に座り込むと身を縮めながら、外の様子を伺った。
マーレン様とゲイル様が剣を交えながら何かを話している。
すると・・
「ゲイル様!いましたよ!女!!」
「なっ!!その手を離せ!」
マーレン様が私に一瞬気を取られた瞬間・・
ザッッッ!!!
「ウッ!!」
「キャァァァ!、マーレン様!!」
左腕を切られてしまった。
残り三話の予定です。
最後までお付き合いください。




