39 二度目のプロポーズ 2
君の今の婚約者は私だ
何の冗談かと思った。
何のイタズラかと思った。
私がマーレン様の婚約者?
「あの・・私を慰めなくても・・」
マーレン様は私の右手を掬い取ると、軽くキスを落とす。
「冗談でもイタズラでも無い。王家も認めた私の婚約者は君なんだ」
「あの・・いつ私はジョージ様と?」
「君はどこまで記憶が残っている?奴に叩かれた事は覚えているか?」
私がジョージ様に叩かれた?
私は叩かれたかも知れない左頬に触れた。
今までは居ないものとして扱われていたが、叩かれた記憶は無い。
「本当に・・?どうして・・?」
ジョージ様のトゥーエを見る目が義妹を見るまでは無い事はわかっていた。
もしかしたら解消出来るかも知れないと、期待していた事もあった。
でもその度にお父様から
「あんな男でもお前の婿になってくれるんだ!トゥーエも嫁に出せば諦めるだろう」
と・・
ジョージ様からも直接の何かを言われた事も無かったから諦めていた。
「奴は君との結婚に胡座をかいていたのだろう。ロード家で、子爵がいる時に君を叩いたんだ。自分の感情のままに・・。もともと君への態度が問題になっていたから、子爵夫妻も決めたんだ」
「・・・」
だから家族は何も言えなかったんだ・・
よりによって真ん中のパッとしない娘が解消されたのだ。家族からしたら大問題だ・・
「あれ?私の今の婚約者って・・」
「俺だ」
二人の目線が合わさる。
「あの・・、何かの冗だ・・ん・・」
「君にはこれまでにも何度も気持ちを示してきたつもりなんだが・・まぁ、君には婚約者が居たからな」
マーレン様の目が、言葉が甘く、私の心臓は早鐘を打つ。
「だが、君は忘れてしまったが今の君の婚約者はこの私だ。思い出そうが出せなかろうが関係ない。今日この時から俺は君へ真っ直ぐに気持ちを伝えて行こうと思う。だからアリィ、俺の気持ちを受け取って欲しい」
「気持ちって・・私とマーレン様とでは身分差が」
私を見つめる目が更に甘くなる。そして優しく微笑むと私の左頬に軽く触れた。
「君が奴に叩かれ、目の前で倒れている姿を見た時は奴を本気で殺そうと思った。でもそれをしても君は喜ばないと思って堪えたんだ。俺の大切で愛しい君の顔を・・」
泣きそうな顔を堪えながら言葉を紡ぐ。
「愛しているよ、アリィ。もう十年以上前からずっと君の事を想い続けていた」
「十年以上?」
マーレン様は頷くと昔の話をしてくれた。
あの日、収穫祭で助けた男の子の話を・・
私の初恋の人・・
「マーレン様が・・あの時の子なのですか?」
「ああ、君が俺を助けてくれたおかげで、グラビティ家も母上の気持ちも守られたんだ。もちろんこの俺の気持ちも」
マーレン様のかおが近付いてくる。
キスされる!と思った瞬間
コツン!と額同士がくっ付く。
「まだ、君の気持ちが追い着いて来ていないのにこれ以上は進めないからな」
残念だが・・と言いながら顔を離した。
私は離れて行くマーレン様を無意識に引き留めた。
「どうした?アリィ」
「あっ!すみません・・」
マーレン様は私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「さあ馬車へ戻ろうか、アリィの気持ちはまた聞かせてくれたら良いから」
そう言って私をエスコートしようと手を伸ばしてきた。私はその手を掴むと
「マーレン様!もし、もし許されるのなら私の気持ちを聞いてくださいますか?」
マーレン様は掴んだ私の手の上から自分の手を重ねた。
もし本当にジョージ様と婚約解消しているのなら、私の想いを隠す必要なんてない!
「どうした?何か聞きたいことでも出来たのか?」
私は顔を横に振りマーレン様を見つめ返す。
伝えよう、今こそ!私の気持ちを、想いを・・
「マーレン様、私もお慕いしております。ずっと・・」
「えっ・・?」
「私もマーレン様と同じです。十年以上前からずっとお慕いしておりました。あの日からずっと・・」
言い終わる前に私はマーレン様に思い切り抱きしめ
られた。
「アリィ・・ありがとう」
マーレン様の声が私の耳元で囁く。
「マーレン様・・、マーレン様・・・」
額をくっつけたと思ったら唇が塞がれてしまっていた。何度も何度もマーレン様に口付けをされる。
マーレン様との婚約は思い出せていないけれど、私がマーレン様を好きな気持ちは残っていた。
それが嬉しくて、私は何度も何度も自分の気持ちをマーレン様へ伝え続けた。




