35 王宮での夜会5 マーレン目線2
「マーレン様、お休みになってください。アリィはわたくしが見ていますから・・」
俺は頭を横に振り
「いや、アリィが目を覚ました時側にいたいんだ」
あれから丸二日。
今だに目を覚さない。
医者の見解では何度も顔を叩かれたショックで、心を閉ざしてしまったのでは無いかと・・
「なぜ奴はここまでアリィの事を・・」
アリィは可愛らしさも美しさも両方兼ね備えている。なのにいつもアリィをバカにして人格を否定する様な事ばかり言っていた。
「ジョージ様のお母様は、ヘルン子爵家のメイドだったそうです・・」
「・・・」
「お母様はジョージ様を産むと子爵の知り合いの後妻にされたと・・。お母様と離されたジョージ様はきっと、ヘルン子爵家で肩身の狭い思いをされていたのでしょう」
「だからと言ってアリィに手を挙げても良い理由にはならない・・」
俺はアリィの手を握る。
「もちろんです。アリィとの婚約も我が家の山から取れる鉱石が目当てだと思います」
「チェリー嬢は知っていたのか?」
こちらでも調べていた事をチェリー嬢はあっさり見抜いていた。
「これでも長女ですわよ。嫁いでもアリィの力になれるよう調べておりました」
「・・そうか、知っていたのか」
やはりチェリー嬢は後継者としては優秀だ。
「ジョージ様はアリィの優秀さに劣等感を抱いていたんだと思います。その気持ちが嫉妬に変わり、憎しみに・・今となっては本当に解消出来て良かったと思っています」
俺はチェリー嬢を見ると頷いた。
チェリー嬢はため息を吐きながら、
少しは休んでくださいね。
そう言って部屋から出て行った。俺はそんなチェリー嬢を見送る事も出来なかった。
許せなかった。
家庭の事情があったとしても、それをアリィにぶつける意味がわからない。
劣等感?憎しみ?そんなのは奴が弱いからだろう!嫁が優秀な事は家門にとっては最高な事だ!
「アリィ、俺は待つからな。君が目を覚ますのを」
翌朝、レッドから呼ばれた俺は王宮内にある地下牢へと足を運んだ。
奴の口の怪我が良くなり、話が出来るようになったと報告を受けたからだ。
「ジョージ・ヘルン。いや、除籍されたからただのジョージだな」
「・・・」
地下牢に入れられた奴は生きる事を諦めたように目が虚だった。
「俺がわかるか?」
奴は俺を見た。
「マーレン様・・ですよね」
「なぜ王宮に忍び込んだ?」
「・・・」
「なぜトゥーエ嬢を攫おうとした?」
「・・・」
「なぜ・・アリィを殴った?」
「・・・」
奴は俺を見る。
奴の目に少し光が入る。
「トゥーエは俺の物だから、取り戻しに行っただけ・・」
「?トゥーエ嬢はモルダンと婚約したし、元々お前とはただの・・」
「いいえ!彼女と俺は愛し合っていた!それをモルダンの奴が!」
怒りの目で俺を睨んでいる。
「彼女は・・トゥーエはいつも言っていた。本当に愛し合える人と結婚したいと・・両親のような関係にはなりたく無いと・・」
「それがお前とどんな関係になるんだ?」
トゥーエ嬢が愛を囁いたようには聞こえない。自身の希望を奴に言っただけ・・のやうに思うが。
「マーレン様はあんな女に惚れるくらいだから、トゥーエの本心は分からないんです」
「何?!」
俺をバカにしたような言い方にムカついた。
「自分の本心を言い合える関係なんです。だから俺はトゥーエを守った。あの女とは必ず解消してトゥーエと結び直すと・・なのになぜ?トゥーエはモルダンなんかと・・」
奴の考えている事がわからない。
将来の義兄に自分の気持ちを話たからと言って、それを愛の言葉と勘違いした男。
こいつはただ単にアリィからトゥーエに乗り換えたかっただけでは無いのか?
「ではなぜアリィを殴った?」
奴は俺を見ると フッ と笑った。そしてこう言った
「身の程知らずの女に躾けをしただけですよ。トゥーエより劣るくせにトゥーエより良いドレスを着て・・それ以上に、俺とトゥーエの仲を裂こうとした!だから俺は!」
俺の怒りが奴に伝わったのだろう・・最後まで言う前に口をつぐんだが遅い。
俺は鉄格子を思い切り叩くと
「お前こそ彼女の素晴らしさを何一つ分かっていない!!身の程知らずのドレスだと?あれは俺と俺の母が彼女の為に選んだドレスだ!!」
奴は言葉を出そうとしていたが、俺の気迫に怖気付く。
「トゥーエ嬢は心の底からモルダンを愛している!いや、愛し合っている!お前は近くにいながら何を見ていたんだ!」
「それは違う!モルダンは俺を陥れてトゥーエ。手にいれたんだ!」
「まだそんな事を!」
「マーレン様・・」
コツコツと靴音が聞こえてくる。
その声の主は
「モルダン」
「モルダン!!!」
奴はモルダンの姿を見て見ると怒りを露わにしながら、鉄格子に近づいた。
「お前はトゥーエに近づく為に俺を利用したんだろ!この卑怯者!」
奴は叫んでいるがモルダンは冷静だった。
「君には悪いと思っていた。ずっとトゥーエの事を想っていた事を知っていたからね。でも、俺とトゥーエはそれでも想いあってしまったんだ」
何を・・と全身が震えるほどの怒りでモルダンを睨む。モルダンはそんな奴の怒りを受け止めながら
「トゥーエにとってジョージ、君はあくまでも将来の義兄だった。姉を大切にして欲しい気持ちで君に接していたと言っていたよ」
「嘘だ!トゥーエはそんな事を一度だって!」
「言って無かったかい?アリィ嬢の事を・・」
奴が静かになる。
モルダンは私の方を向くと
「ここは俺に任せてください。アリィ嬢が目を覚ましましたから」
「なに?!!」
項垂れて座り込むジョージを尻目に、俺はモルダンにこの場を任せアリィの元へ走った。




