34 王宮での夜会 4 マーレン目線
前回よりはマシな回です。
アリィに贈ったドレスが、想像以上に似合っていて正直驚いた。
上手く言葉に出来ただろうか?
ちゃんと想いは伝わっただろうか?
彼女をエスコートする為に繋いだ手は震えていなかっただろうか?
彼女の事を考えるだけでこんなにも心が温まるなんて、誰も教えてはくれなかった。
彼女に助けられた時は逃げる事が必死で、とにかく彼女の後ろ姿を忘れないように、名前を忘れないようにする事で一生懸命だった。
彼女と再会した時はただ嬉しかった。
調べたから彼女がロード子爵家の次女だと言うのは知っていた。
父親の代わりに王宮勤めを始め、そしてレッドが上手く操作して俺の部署へと配属させた。
正直、彼女へはあまり期待していなかった。
結婚前の腰掛けに過ぎないと・・
それでも俺の部下にしたのは、あの時の恩返しがしたかったから。ただそれだけだった。
なのに一緒に仕事をしていく内に彼女の優秀さが見え、優しさ、気配り、どんどん良い所が発見出来て気付けば彼女から目が離せなくなった。
婚約者に相手にされなくても笑顔で諦めている姿を見た時、俺だったら本当の笑顔を引き出せるのに、俺だったらもっと明るい色のドレスをプレゼントして、綺麗に着飾らしてダンスもいっぱい踊るのに・・と。
そんな彼女に初めてダンスを申し込んだ時、婚約者に遠慮していたが何度も諦めずに誘えば諦めて俺の手を取ってくれた。
「ダンスってこんなにも楽しいんですね!」
俺のエスコートで恥ずかしそうに笑う彼女の顔に、俺は必ず君を俺の妻にする!と決めたんだ。
「そんな事を聞いたら君は引くかな?」
ほんの少しだけ離れた。
君の元婚約者が王宮へ忍び込んだと報告を受けて、君に危害が及ぶのでは無いか?と不安になり、本当に少し離れただけなのに・・
「アリィお願いだから、目を開けてくれ・・」
あの日、アリィたち三姉妹を高位貴族専用サロンで待たせた。王宮のサロンだ、間違いなど起こるはず無いと思って・・なのに事件は起きたんだ。
「チェリー嬢、アリィはどこへ」
俺の声に反応した彼女の姉、チェリー嬢は俺たちの姿を見て慌てたように駆け寄って来た。
話を聞くと俺たちが離れて直ぐに、給仕から手渡されたドリンクを飲んだ瞬間トゥーエ嬢の体調が悪くなり給仕と共にアリィとトゥーエ嬢、メイドのマギィが休憩室へ向かったと。
「でもまだ戻って来ないのです。アリィとトゥーエはわかりますが、メイドのマギィも戻って来なて・・、でもここを離れる訳にも行かず・・」
明らかに動揺が隠せていない、こんな姿のチェリー嬢は初めて見る。
「アンドリューはここで待て。モルダン行くぞ!レッド」
「すでに指示は出しております。マギィが付いているので大丈夫だとは思いますが・・」
王太子に報告し騎士達を動員して探す。
が、本来の休憩室にはおらず会場周りにもいなかった。
「いくら王宮を知らないと言っても、ここまで探しても見つからないなんて・・」
焦りで周りが見えなくなっていた時
「マーレン様!レッド様!マギィが見つかりました!」
慌ててその場に駆けつけると、傷だらけになったマギィが仕留めたであろう男の側で立ち上がれずにうずくまっていた。
「マギィ、大丈夫か?アリィ嬢は!」
レッドが駆け寄り抱き上げると
「レッド様!アリィさまを助けて!あちらに、あちらにトゥーエ様と・・」
そう言って気を失ってしまう。きっと誰かが来るまで気を張っていたのだろう・・
「レッドはマギィの手当てを。治療費は全てこちらが持つ。行くぞ!」
マギィが指差した方角は会場の反対だ。
きっとそう仕向けられたのだろう・・
そんな時
「誰か!誰か助けて!」
「トゥーエの声だ!」
向かった方角からトゥーエ嬢の悲鳴が聞こえた。
頼む、無事でいてくれ!
全力で声のほうへ走ると、そこで見た光景は・・
「貴様!何をしている!!!」
男が、ヘルン子爵家のあの男が事もあろうかアリィに馬乗りになり拳を振り上げている所だった。
「マーレン様!もうこれ以上殴っては死んでしまいます!!」
レッドの家の者に止められるまで、自分の意識が無かった事に気が付いた。
下を向けば顔中血だらけの男が気を失っている。
俺の右手も血まみれになっている・・
「お姉様!お姉様!目を開けてください!」
トゥーエ嬢の悲鳴に近い声が耳に届く。
アリィはどれだけ殴られたのだろうか・・両頬は腫れ口から血が滲んでいる。
「アリィ・・遅くなってすまない・・起きてくれ」
震える手で彼女に触れるが反応が無い。
「アリィ・・」
「マーレン!アリィ嬢をこちらへ運べ!医師には連絡してあるから!」
「・・王太子殿下、すまない!モルダン、トゥーエ嬢を頼む」
「もちろんです!急いで行ってください!」
王太子の声に我に返った俺は急いでアリィを抱き上げると、王太子の案内で王族専用の離宮へと走った。
アリィの身体からは力が抜け、彼女の重みが両腕に掛かる。
かろうじて息はしているが、それ以上はわからない。
とにかく早く医師へ!
王太子の言葉に俺は彼女の身体を思い切り抱きしめながら、用意された部屋へと駆け込んだ。




