31 王宮での夜会 1
王宮で開かれる夜会は王様と王妃様が主催者となるため、入場にも決まりがあった。
「まずはわたくし達から入場ね。その後トゥーエで最後にアリィよ。パートナーがしっかりしているから大丈夫だと思うけれど・・」
屋敷を出る前にお姉様が心配そうに言った。
今まではお父様と一緒の入場だったので心配は無かったけれど、今回は違う。
それぞれに婚約者がおり、その婚約者の爵位の順に入場するからだ。
お姉様の場合アンドリュー様は伯爵家だが、婿入りするため子爵位の順での入場となる。
「チェリー様、アンドリュー様がお越しになりました」
執事のフレッドに呼ばれ現れたのは、お姉様のドレスと合わせた色合いのタキシードに身を包んだアンドリュー様だった。
「チェリーお待たせ。今夜もとても美しいね」
そう言いながら左手を掬うと軽くキスを落とす。
「貴方から贈って頂いたドレスが素敵だからだわ」
お姉様はアンドリュー様にお礼を言うと お先に失礼。 と言って席を立った。
私とトゥーエは手を振りながら
「「また後で」」
と、見送った。
お姉様達はロード家の馬車で王宮へと向かう。
お父様とお母様は一足先に屋敷を出ており、馬車が王宮から戻って来るのを待っていたのだ。
「お父様にしては良く気付かれたわよね?」
「馬車の事?」
トゥーエが頷く。
我がロード家には家紋入りの馬車は一台しか無い。王宮へ行く場合は家紋入りの馬車で無ければいけないが、婚約したばかりの二人に気を使ったのだろう。
「きっとお母様よ。お母様がお父様と婚約して初めての王宮での夜会で、馬車に乗ったらお祖父様とお祖母様がいらして緊張して嫌だったー。と仰ってたから」
二人で想像して笑ってしまった。
「でも、家紋入りの馬車を二台も所有している家門のが珍しいから、仕方ないわよね」
笑いが収まった後トゥーエに話した。
「でも、前まではあの狭い子爵家の馬車に六人も乗ってたのよね!今考えたら嫌だわ」
そう、ジョージ様と婚約していた時でも彼は私と二人で行く事を拒み、狭い馬車に乗って行ったのだ。
「そうだね、今思うと君の目の前にジョージが座っていたと思うと腹が立ってくるね」
「モルダン様!」
モルダン様がフレッドに案内されながら入って来た。が、その前には
「マーレン様もご一緒に来られたのですか?」
マーレン様がとても豪華な衣装に身を包み・・眩し過ぎて目を瞑ってしまった。
「モルダンとは屋敷の玄関で一緒になった。ああ、やはり良いな・・とても似合っている。今日の君を見て惚れ直す子息が後を絶たないだろうな」
そう言いながら私の前で片膝をつき、左手の甲にキスを落とす。
私は声にならない声を出しそうになり、そしてマーレン様の格好良さに震えが止まらなかった。
「マーレン様がそんな気の利いた言葉が言えるなんて・・」
マーレン様の後ろでわざとらしく目にハンカチを当てたレッド様が立っている。
そして気付けばトゥーエ達も居なかった・・
「モルダンには先に経ってもらいました。どのみち侯爵家ですからもう少し後になるでしょうからね」
この国には高位になる程家門数が少なくなる。
今現在では公爵家は三家門。
侯爵家は五家門。
伯爵家は少し増えて十家門。
子爵家男爵家は分家もあるため更に増える。
私はマーレン様が用意してくれた侯爵家の馬車に乗り込み王宮へと向かう。
さすが侯爵家の馬車!乗り心地がとても良い!
クッションも柔らかいため振動があってもお尻が痛くない。
「こちらの馬車はいつもの馬車とはまた違うのですね」
時々仕事帰りに送ってもらう事があるが、その時の馬車と今日の馬車は全く乗り心地が違う。
「いつもの馬車は普段使いだからな、これは二番目の馬車で両親が今日乗って行った馬車はもっと乗り心地が良いぞ!」
新婚旅行の時に領地へ行くから、その時は借りて行こう。
と、耳元で囁かれた。
「我が主人と婚約者様が仲睦まじくて本当に嬉しいですねー」
「レッド様もそう思いますか?私も日々恋する乙女になられるアリィ様が可愛くて、本当に嬉しく思っています!」
・・・。
「なぜ君たちがこの馬車に乗っているんだ?」
レッド様とマギィが顔を見合わせながら頭を傾ける。
まるで 何がいけないのですか? と言っているようだった。
「マーレン様とアリィ様はまだ王に認められておりませんし、結婚しておりません!二人きりにはさせられませんよ!!」
「いや!アンドリューもモルダンだって!!」
「あの二人は私の主人ではありませんので・・」
ふっ!ふふふ
この二人のやり取りのおかげで緊張が少し解けた。
馬車は夜会会場の前で停まり、レッド様の後にマーレン様が降りる。
私はマーレン様にエスコートされながら馬車を降りると、そのまま会場へと向かう。
扉の前ではグラビティ侯爵夫妻がおり
「父上母上、お待たせ致しました」
「侯爵様奥様、遅くなり申し訳ございません」
急いで頭を下げるが そんな事気にしてないよ! と優しく言われ、それよりもドレス姿をとても褒めていただいた。
「それから私達のことは お義父様お義母様と呼んでくれると嬉しい」
と、二人ともが優しい眼差しを送ってくれた。
「さぁ、準備はいいかい?」
私は震える手でマーレン様の腕に触れる。
マーレン様はそんな私の手を軽く握ってくれると
「グラビティ侯爵夫妻!並びにマーレン様、ご婚約者アリィ・ロード子爵令嬢様、ご入場されます!」
ドアボーイの声と共に大きな扉が開いた。




