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「マーレン様!」
私とマーレン様が踊り終わり輪から外れると、待っていました!と言わんばかりにチェリー姉様が駆けてきた。
姉様は隣にいる私を押し退けながらマーレン様の隣に立った。
「これはロード子爵家の上の令嬢殿。あちらの子息たちが貴女を待っているようだが?」
「フフフ、あの方たちは末妹のトゥーエを待っていますの。それよりも拝見させていただきましたわ」
そう言いながら慣れたように左手を差し出す。
それに気付いたマーレン様は姉様の手を掬い取ると軽く甲に唇を当てた。
姉様はマーレン様を狙っている・・そしてマーレン様も・・
私はそんな二人を見続ける勇気も無くソッとその場を離れた。
(結局マーレン様も姉様に近づくために私を部下にしたのね。)
美男美女がホールで踊ればそれだけで自然と注目を浴びるものだ。
今夜の夜会がまるで二人のために開かれたかの様に、ライトが当たる。
(ジョージ様が二人と踊る姿を見てもこんな気持ちにならないのに・・)
私が二人の事で落ち込むと、いつの間にか側にいて励ましてくれた人。
勝手に私だけを、私の味方になってくれる人なんだと勘違いしていた自分が恥ずかしい。
トゥーエは今は伯爵子息と楽しそうに踊っていて、ジョージ様は不安気に見ている。
私はこの場にいる事に自信を失い、誰にも告げず屋敷へと帰った。
夜会があっても王宮に勤めている私は朝起きなくてはならない。
「アリィ様おはようございます。ご朝食の準備が整いました」
「おはようマギィ、直ぐに行くわ」
マギィは私専属のメイドで、二人のメイドに比べると朝は早く夜も遅いため申し訳なく思う。
食堂へ行くと執事のフレッドが椅子を引いて待っていた。
「おはようございますアリィ様。お疲れではありませんか?」
「おはようフレッド。二人はまだ布団の中かしら?私は早めに帰って来たから大丈夫よ」
椅子に腰掛けると朝食が運ばれてきた。
職場へ行けば業務が始まる。基本夜会に出席する場合は申請すれば次の日が休みになるか遅出になる。
貴族は子孫を残す事も大切な役目。
なので、福利厚生も充実している。
「あれ?ロード嬢は昨夜の夜会に行かなかったの?」
遅出の申請をしていたのに、通常出勤した私に声をかけて来たのは同じ家格のレッド・スレント子爵子息だった。
「おはようございますレッド様。昨夜は早めに切り上げたので大丈夫ですよ」
「いやいや、それでも男に比べて令嬢は後も大変でしょう」
そう、普通の令嬢ならば嫁入り先を見つけるために着飾るものだが、私の場合はすでにジョージ様がいるためそこまで着飾る必要も無い。
「大丈夫ですよ。それに今は年度末だから忙しいではありませんか?」
「・・正直ロード嬢が来てくれて、僕は助かりますけどね・・」
今私はレッド様とペアになって仕事をしている。
私がレッド様と名前呼びをしているのに対し、レッド様がロード嬢と呼ぶには訳があって・・
「レッド、朝からアリィ嬢と馴れ馴れしく話すな!」
「「マーレン様!おはようございます!」」
マーレン様の圧も関係していたのだ。




