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浮かれたアリィです。
「アリィ、今夜君の屋敷へお邪魔しても良いだろうか?渡したい物があるんだ」
「今夜ですか?それは大丈夫ですが・・」
お昼休みが終わり午後からの仕事の準備をしていると、マーレン様が話かけてきた。
マーレン様から告白をされて気持ちを伝えてからは、普通の恋人らしくお昼も一緒に食べて行き帰りもグラビティ家の馬車で送迎してもらっている。
そしてもう何度もキ・・キス・・も、している。
「アリィどうした?顔が赤いぞ?」
私を心配したマーレン様が額に手を置いた。
私はその手を握りしめると、チュッ!と、口に軽くキスをされた。
「えっ?」
「すまん、抑えられなかった」
ひゃぁぁぁ!!!
ますます顔が熱くなりどうして良いか分からず振り返ると
「あの〜、仲が良いのは部下としても幼馴染としても同僚としても嬉しいですけど、場所を考えてくれますか?」
レッド様わすれてたぁぁぁ!!!
「はは、アリィ嬢のそんな表情は初めて見ますね。マーレン様との婚姻を決心してくださって本当に嬉しく思っています。マーレン様同様、貴女様の事も守らせて頂きますね」
同僚では無い、主人に対する礼をしたレッド様に私は胸が苦しくなった。
マーレン様と結婚したらレッド様との関係が変わってしまう・・そう思うと悲しくなってきてしまう。
「アリィが今何を考えているか当てようか?レッドは私の護衛だけど幼馴染でもある。屋敷の外を出ると主従関係だが、屋敷や職場では今まで通りだから、そんな顔をしないでくれ」
マーレン様も悲しげな顔をしている。
本来なら婚約者であるマーレン様以外の異性に対し、こんなにも寛大な心の人なんていない。
私はマーレン様の方を向き
「私、マーレン様の婚約者としてこれからも精進してまいります!マーレン様が不安になるような事もしません!だから、マーレン様も私を信じてくださいね」
「ああ、最初からアリィの事は信じているよ」
お父様に呼ばれた日から数日後、私たち三姉妹はそれぞれのお相手と婚約した。
ロード子爵家はお姉様が継ぐ事となったがアンドリュー様も急には外交官の仕事は辞められない為、一時的にロード領をグラビティ侯爵家が預かる事となった。
もともと私が領主の仕事をしていたので、アンドリュー様がロード家に入るまでの間私がお姉様に教える事になったのだ。
「どちらにしても侯爵家跡取りの結婚式だからなぁ、準備に一年以上はかかると思ってくれ。母上もドレスは一から作ると言っていたしな!」
マーレン様のこの一言で決定したようなものだった。まずお姉様とアンドリュー様の結婚式の後、モルダン様とトゥーエの結婚式をおこない、最後に私たちとなった。
「アリィには結婚式の準備とチェリー嬢へ領内の教育。侯爵夫人への教育と忙しいと思うが君なら乗り越えられると信じているから」
今まで見た事も無い笑顔で言われてしまえば、黙って頷く事しか出来なかった。
「マーレン様、我が家へはどのような要件でしたか?」
「一月後の王宮での夜会があるだろう?その時に君を私の婚約者と発表するつもりでいるんだ。もちろん王の許可は得ている」
「えっ?マーレン様今サラッとすごい事言いませんでしたか?」
「ああ、君の姉妹も同じように発表される事になっているぞ」
「えっ!!そうなんですか?・・でもそうですよね、うん!はい、わかりました!しっかりとマナーを学びます!でも、それと我が家への訪問はちがいますよね?」
ハハハと笑いながら、
「当日に着るドレスを贈らせて欲しい、婚約者として!」
俺から君へ初めてのプレゼントだから、受け取って欲しい。
そう言われてしまえば断る理由なんてない。
「ありがとうございますマーレン様。すごく嬉しいですし楽しみです」
どんなドレスだろう・・と想像してみる。
マーレン様が選んでくれたのかな?
それともお義母様かな?
きっと変な顔をしていたのかな?
従者から 到着しました。 と声がかかり腰を上げようとしたら
「少し待て」
とマーレン様が扉を開けるのを止めた。何かあったのかな?と見ると・・
「その顔は反則だ」
と言って抱きしめられながら・・深い深いキスをされた。
「アリィお姉様どうされたの?」
私の姿を見たトゥーエが驚いた声を上げる。それもそうだ、私は馬車の中で足腰が立たなくなりマーレン様に抱き上げられた状態で屋敷に運ばれたのだから。
「何でも無いのよ」
と言ってはみたが、トゥーエ以外の人達からの視線は・・言うまでもなく生暖かいものだった。
アンドリュー様とモルダン様はすでに到着しており 同じ時間に仕事が終わったのに何故お前は到着がおそいんだ! と突っ込まれていたが、後ろに立つレッド様の顔を見たお二人は納得したような顔だった。
私は後ろを振り返りレッド様を見たがすでにいつもの顔をしていたので、どんな顔をしていたのかは想像も出来なかった。
マーレン様から贈られたドレスは私の部屋に運ばれておりそのドレスを見た瞬間
「!!!!!」
声にならない驚きだった。
「気に入って貰えただろうか」
恐る恐る聞いてきたマーレン様に私は思わず抱きついてしまう。
「こんな素敵なドレスを頂いて、本当に宜しいのですか?ドレスだけでなく靴に装飾品まで・・」
「もちろん、先ほども言ったが俺から君へ贈る初めての物だからな」
そう言いながら装飾品であるネックレスとイヤリングへ手を伸ばした。
「これは母上から君へ。若い頃に付けていた物だそうだが自分にはもう似合わないからと。このドレスにも合うだろうと・・その、新品でなく申し訳ないが・・」
そう言いながら私の首に付けたそのネックレスは、金のチェーンが何層にも編み込まれており、真ん中にはダイヤモンドに縁取られたサファイアが付いていた。
「素敵・・こんな素敵なネックレスを頂いて宜しいのでしょうか・・」
「良く似合っているな。君がこれを付けてくれたら母上も喜ぶ」
ドレスは真紅のベルベット生地に金色の糸で刺繍が施されていて、派手さは無いが大人っぽい落ち着いた雰囲気だった。
「その・・気に入ってくれただろうか・・」
照れと不安が混じったような顔で私の様子を伺うマーレン様。
「こんなに素敵過ぎるドレスをありがとうございます。このネックレスも・・今から夜会がとても楽しみになりました」
マーレン様は一瞬息をのんだがすぐに私を抱きしめ、馬車の中よりも深い、深いキスをしてくれた。
次は少し前後しますがアリィが初めてグラビティ侯爵家へ訪問するお話です。




