27 マーレン目線2→子爵目線 最後アリィ
「すみません、父が・・」
子爵家の玄関から馬車へ乗り込む時、アリィが急に謝ってきた。
「いや、俺も悪かった。今度は正式に侯爵家から婚約の申し込みをさせて貰うから」
だから心配しないで・・
アリィは嬉しいのか、困っているのか分からない表情で俺を見送ってくれた。
馬車に乗り込むとレッドがご機嫌な顔で出迎えたが、何故かその顔が癪に触る。
「何か言いたそうだな」
「いえ、マーレン様にしたら上出来かと・・」
「偉そうに」
俺は窓の外へ目をやった。
子爵家はすでに小さくなり目には映らない。
あの時、応接室へ乗り込んだ時の子爵の顔が・・
「マーレン様、笑い過ぎです」
「レッドも見ただろう、あの時の子爵の顔・・」
「ですが未来の義父に対して・・失礼ですよ・・」
レッドが珍しく笑いを堪えている。
あの時、子爵は間違いなく俺とチェリー嬢をくっ付けようと思っていた。
だが俺の申し出に顔を青ざめ、更には土色に・・
「とにかくあそこまで言えば爵位をチェリー嬢に譲るしか無いだろう」
まずは屋敷に戻ったら両親から子爵宛に手紙を送って貰おう。なに、用意は出来ているから後は出すだけだ。
「それとレッド、こちらをこの足で出して来てくれ。まぁ、いざと言う時のお守りだ」
頼んだぞ!と言い残し俺だけが馬車を降りた。
「まずは母上に相談して、アリィに送るドレスの相談でもするかな」
一月後に開かれる王宮での夜会。それまでにアリィを俺の婚約者にしてその場で紹介しなくては・・
珍しくやる気を出した俺に家族はもちろん、屋敷の使用人たちも喜んだ。
「グラビティ侯爵家はどこまで知っているんだ・・」
ヘルン子爵の提案で、国に内緒で我が領地から出た鉱石をヘルン領に安く譲りその利益を国へ申請せずに使っていた。
しかも娘たちや妻にも知らせず、隣国で投資をしていた事をグラビティ侯子にバレていた。
「隣国への投資は我が国を裏切る行為としてとられる事を、この国の貴族である貴方が知らない訳でもあるまい」
この事が国へバレたら我が領は、爵位は・・
更にあの男たちはこうも言っていた。
娘に爵位を譲り、その後は隣国へと渡り国の為に働けと・・
ガーライン伯爵家の嫡男で次期伯爵。今は王太子殿下の秘書官のモルダン卿が言ってきた。
なに、住む所は私が用意しますよ。もちろん働く場所も用意しますから安心してロード家をお任せください。
そう言ったのはファーレン伯爵家の次男、アンドリュー卿。そして・・
全てのことを国王へ報告する準備は整っている。どちらを選ぶかは貴方次第だが・・この先も娘たちと会いたいのなら選ぶ道は・・分かるよな?
グラビティ侯爵家の嫡男で、次期侯爵。
今は娘アリィの上司として王宮勤めをしているが・・
噂では王家の影、諜報機関の主で国王ですら顔色を伺う、一目を置かれた家柄・・
「こんな事ならヘルン子爵の言葉に乗るんじゃ無かった!ジョージとアリィを婚約させるんじゃ無かった!今更何を言ってもムダだがな・・」
全ての処理は彼らが行うだろう。
俺が娘たちに出来ることは一つ。
執事のフレッドを呼びサロンに家族を集めるように伝えた。
「私からお前たちに言う事がある。が、その前に聞きたい事がある」
部屋にいるとフレッドからお父様が呼んでいるためサロンへ来て欲しいと言われ、私たちは急いでサロンへ向かった。
ソファーに腰掛けたお父様は心なしか顔色が悪く、少し心配した。
「チェリーにはファーレン伯爵家のアンドリュー様から。アリィにはグラビティ侯爵家のマーレン様から。トゥーエにはガーライン伯爵家のモルダン様から、それぞれに婚約の申し込みをいただいたのだが・・」
「「「・・・」」」
「アリィはともかく、チェリーとトゥーエはいつそうなったんだ?」
「そうなった、とは?」
お姉様が答える。
「確かに高位貴族を狙って来い!とは言ったが・・王家に近すぎるだろう。いつからそんな仲になったんだ?」
お姉様とトゥーエは顔を見合わせて少し考えていた。
「わたくしは、もともとアンドリュー様に好意を抱いておりましたが、あの方は外交官。なかなかお会いする事も無く諦めておりました」
「私は・・ジョージ様に良く話かけて来られる時に・・」
お父様は大きく溜め息を吐きながら、意を決したように話始めた。
「一月後の王宮で開かれる夜会で、お前たちとの婚約を王に伝えるそうだ。そこで・・正式に私は爵位を譲り隣国へ行こうと思う」
「お父様・・では爵位は誰に?」
「チェリー、お前に譲ろうと思う。お前もそのつもりでアンドリュー様に目をつけたのだろう?」
お姉様はお父様をジッと見つめていたが、フフッと笑いだし
「アンドリュー様の事は本当に好意を抱いておりましたよ。ただ・・アンドリュー様と結婚出来たら、わたくしをこの国から連れ出してくださるのでは?と、そんな気持ちもありました」
「そうか、今も同じ気持ちなのか?もしそうならばお前に爵位は譲れない。この土地を守ってくれる者でなければ」
「・・・」
私とトゥーエは二人のやり取りを黙って聴いていた。正直お姉様がそんな事を考えていた事もはじめて知ったし、外交官をつとめているこらアンドリュー様を選んだとしたらそれは失礼では無いか?
そんな事を考えていると
「チェリーお姉様はアンドリュー様の事をお好きでは無いの?この国から出られるのなら誰でも良かったの?」
「まさか!言ったでしょう?好意を抱いていたと。でもその時は後継者はアリィだったし、次男との結婚は認めて貰えないと思っていたから・・」
お姉様も悩んでいたんだ・・そう思ったらお姉様の気持ちを叶えたいと本気で思えた。




