26 マーレン目線
マーレンが頑張ります!
「あの、マーレンさま?」
彼女は自分の事など二の次三の次なのだろう。今だって自分の事よりも姉の事を心配している・・
俺は彼女と目線が合うように片膝を付き、彼女の手を取る。
目から涙が溢れこぼれ落ちているが、そんな瞳すら俺の目には美しく映る。
これはもう彼女へ溺れている証拠なのだろう。
「アリィ、良く聞いて欲しい。君は姉の為に自分を犠牲にしようとしている」
「犠牲なんてそんな!」
俺は彼女の口に自分の人差し指を当てる。
「聞いて、俺は君のそんな性格は嫌いじゃ無いし、むしろ好意的にかんじているよ。でも、君の願いは聞き入れられない。」
俺の言葉に傷付いているのがわかる。でもダメだ。貴女をメイドになどさせられない!
「君は忘れてしまったのか?俺の君への気持ちを。だったらここでもう一度言うよ。アリィ、君の事が好きだ。もうずっと・・ずっと前から、俺の伴侶は君しかいないんだ」
アリィは驚いた顔はしたが、前の俺の言葉を思い出したのか・・それともメイドの言葉を思い出したのか。どちらにしても俺のアリィへの気持ちは届いたようだ。
「アリィ、俺と結婚して欲しい。もう、誰にも奪われたく無いんだ・・」
彼女の両手を俺の額に押し当てる。
暫くの沈黙のあと、声を出したのはアリィだった。
「マーレン様は・・いつから私の事を・・」
「そうか・・君は覚えていないか」
俺は立ち上がるとアリィの隣へ腰を下ろした。そして話始めた、あの日のことを・・
「あの日、あのお祭りの日に助けたのは王子様ではなくてマーレン様だったのですね」
俺は頷く。
アリィはずっと王子を助けたと思っていたようだが・・そこはしっかり訂正しておいた。
「俺の両親と君の父上にはもう伝えているんだ。でも、どうしても自分の口から君に伝えたくて、黙って貰っていたんだ」
「でも・・私が・・私ではダメですよ・・」
「どうして?君は君が思っている以上に素敵なレディだよ。君とじゃ無ければ、誰と一緒になっても同じだし、もしかしたら結婚もしないかも知れない」
アリィは それは脅しです! と顔を膨らませていたが、涙は止まっていた。
「私に、務まりますか?侯爵夫人が・・」
「母が太鼓判を押していた」
「私はもう、寂しい思いはしたくありません。もし、マーレン様が他の女性に気持ちが向いてしまったら」
俺はクスッと笑ってしまった。
本当に彼女はわかっていない・・
「それは無いと誓うよ。もう何年間も君だけを思ってきたんだ。君と出会ってどんどん気持ちが溢れた。それこそ他の女性に目が向く事なんてあり得ないよ」
だからアリィ・・
「どうか、俺の気持ちを受け取って欲しい・・」
お茶会から三日後にはある記事で街は賑わっていた、その訳が・・
「号外号外!!あのグラビティ侯爵家のマーレン様がとうとう婚約するよー!お相手はあのロード子爵家の真ん中令嬢のアリィ様だ!」
「ロード家と言えば上のチェリー様もファーレン伯爵家の次男、アンドリュー様と婚約しチェリー様が子爵家を継ぐと決まったらしい!」
「更にトゥーエ様までがガーライン伯爵家のご嫡男マリウス様と婚約なさったそうだ!」
あのお茶会でそれぞれの子息がある子爵家の令嬢たちにプロポーズをし、全て成功した。
「まだ婚約もしていないのになぜ街では号外が出ているんだ?」
「さぁ?ですがお茶会の次の日に、名だたる子息が同時に子爵家へ婚約の話を持っていけば嫌でも耳に入るのではないでしょうか?」
確かにあの日ロード家へ行くと、すでにアンドリューが来ており応接室からロード子爵の大声が聞こえていた。
ロード子爵はアンドリューが次男なのが気に入らなかったのか、チェリー嬢をもっと高位貴族に嫁がせたかったのか、とにかく「許さん!」の一点張りだった。
「お姉様はアンドリュー様の自由な所がお好きだったようです。もしかしたら自分も一緒に、自由に羽ばたけるのでは無いか!と・・」
応接室の近くで不安そうな顔をしているアリィの肩にそっと触れる。
「アリィは昨日俺が言った事に納得してくれたか?」
アリィは顔を縦に振ると、
「マーレン様の言葉に覚悟が出来ました!」
と答えてくれた。
私はアリィの額に軽く口付けると彼女の手を取り、応接室の扉を開けた。
「ロード子爵、話の途中で失礼する」
急に入ってきた俺とアリィの姿にロード子爵は驚いていた。それもそうだろう、チェリー嬢の相手にと思っていた男が入ってきたのだ。
「グラビティ侯子様!!とアリィ?」
俺と手を繋いで入って来たアリィに対し怪訝そうな顔で見る。
俺はそんなの気にせず二人掛けのソファーにアリィと一緒に腰を下ろした。
子爵はメイドに俺たちの分のお茶を用意させると、先程までアンドリューに対し浴びせていた声とは真逆な声で俺に擦り寄って来た。
「子爵、すまないがアリィとの結婚を許して欲しい」
前置きも何もなく俺は、ストレートに子爵へと気持ちを伝えた。




