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「アリィ嬢、少し良いかな?」
六人で話しているとモルダン様が話しかけて来た。私は頷き彼の方を見ると、モルダン様は頭を下げながらゆっくりと謝罪をしてきた。
その謝罪は私なのか、私の後ろにいるマーレン様なのか・・
「さっきの彼らはジョージとつるんでいた奴らなんだ。ジョージがいる時はロード姉妹に近付くためにジョージを利用していたんだ」
そう言われてみればジョージ様にいつも何か話しかけていたわね。
「で、君とジョージの婚約が解消されたと知って手の平を返し、今度は僕の方へ鞍替えしたんだ」
「なぜ、ガーライン卿へ?」
私たちとモルダン様とは特に接点は無かったと思ったけど・・
「その・・我が家からロード家へ婚約の打診をしているんだけど・・」
モルダン様がそう言うとマーレン様とファーレン様がモルダン様の口を塞いだ。
「アリィ嬢、もうすぐダンスが始まるよ。僕と踊ってくれませ・・」
「いや、アリィ!その、俺と一曲踊ってくれないか」
レッド様が私をダンスに誘おうとして、マーレン様が恥ずかしそうにかぶせてきた。もう何度も一緒に踊っているのに・・
私はマーレン様の手を取ると 喜んで! と答え、一緒に輪の中へ向かった。
「その・・俺は君に何かしたか?」
踊っているとマーレン様が急に話しかけて来た。私はマーレン様の顔を見上げると少し寂しそうな顔をしたマーレン様と目が合う。
「ここ最近の君は・・俺を避けているように感じてしまって・・」
「そんな!でも・・そのように感じさせてしまい申し訳ありません。ですが決して嫌でその・・」
避けてるのではなく目が合うとドキドキが止まらなくて・・
と言えたらどれだけ良かっただろう。
実際にこうして手を繋ぎ、身体を密着させてる今現在でさえドキドキが止まらず困っているのに!!
「そうか・・嫌で避けられている訳では無いのなら良かった」
心の底から安堵した顔を見せたマーレン様に、ここまで気遣わせた事に胸が痛んだ。
ダンスが終わり元の場所へと戻るとそこにはレッド様しかいなかった。
周りを見てみると
「チェリー嬢はアンドリュー様と。トゥーエ嬢はモルダンとそれぞれ踊りに行かれましたよ」
とレッド様が教えてくれた。レッド様は誰とも踊らないのかな?と思ったら
「僕はあくまでもマーレン様の護衛で来てますからね。マーレン様がどこぞのご令嬢と婚約でもされたら僕も安心して相手を探せるのですけど・・」
「・・そんなの気にせず相手を探せば良いだろう」
「主人より先に相手を見つけるなんて!親父に殺されます!!」
バツの悪そうな顔を見せるマーレン様と、主人と言いながらも遠慮なく言葉をぶつけるレッド様。
あ〜、いつもの空気だなぁ。と思えたらまた笑えてきた。
私が一人クスクス笑っていると
「お前がバカな事を言うから!」
「マーレン様がしっかりしないから!」
とまた言い合っている。
「何か楽しそうだね。僕たちも混ぜてくれないか?」
お姉様とアンドリュー様が戻ってきた。
「遅かったな」
「ああ、少しチェリー嬢と話したい事があってね」
そう言いながらもアンドリュー様のお姉様を見る目がとても優しくて、またお姉様も同じ目でアンドリュー様を見ていた。
でもアンドリュー様はファーレン伯爵家の御次男。両親はお姉様を嫁に出すつもりでいる・・
「あちらでモルダンとトゥーエ嬢も・・」
気付けばすでに三回続けて踊っている。
きっとモルダン様は最初からトゥーエの事を・・私はこのままロード家に居ても良いのかしら?
もし私が家から出ればお姉様がロード家を継いで、そしたら・・
(最初からそうすれば良かったんだわ・・)
私は意を決してマーレン様に話しかけた。
お話を聞いて頂きたい事がございます!と。
「で、アリィ。話とは?」
モルダン様にお願いして一部屋借りる事が出来た。本当なら二人きりで話したかったが部屋に未婚の男女で籠るのは良く無いと、レッド様とマギィが扉の前で立つ事になった。
「図々しい事をお願いします・・」
「ああ」
「私をグラビティ家のお屋敷で働かせて頂けませんか?本来なら修道院へ行くべきですが入ってしまうとお姉様とトゥーエとも会えにくくなりますし!」
「待て待て、すまないがもう一度言ってくれるか?」
マーレン様は慌てて私の口を塞ぐように手を当てた。その手の大きさと温もりにまた胸が苦しくなる。
「先ほどのお姉様とアンドリュー様を見て思いました。私がロード家から出ればお姉様が跡を継ぎます。そしたら御次男であるアンドリュー様とも結婚出来ます。私がいたら・・ダメなんです・・」
自分で言ってて悲しくなってきてしまい、思わず下を向く。
「本来ならお姉様がロード家の跡継ぎなのに、私が使い道が無いために・・」
ポタポタと涙が落ちる。それでもこんなお願いが出来るのはマーレン様だけなのだ。
「ですからグラビティ家で雇って頂けたらと思いまして・・何でもやります!掃除でも洗濯でも!」
マーレン様は頭を抱えて頷いている?無理なお願いだったと思い慌てて訂正する。
「申し訳ありません、図々しいお願いをしました!おとなしく修道院へ参ります・・」
止められない涙を見られたくなくて更に縮こまると、いつの間にか私の前に膝を付いたマーレン様の顔があった。




