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「本日はお招きいただきありがとうございます。ガーライン伯爵夫人」
お姉様の挨拶に合わせて私とトゥーエも頭を下げる。
「ようこそお越し頂きました、ロード子爵家の三姉妹令嬢。本日は楽しんで行ってくださいね。モルダン、ご案内を」
「はい、母上。ではこちらへ」
ガーライン家のモルダン様はジョージ様のご学友と聞いた事がある。ここ数年は私といる時間よりもトゥーエに張り付いている時間のが長かったから、会話も無かったのだ。
「では代表してチェリー嬢とお呼びしても?」
「ええ、わたくしもモルダン様とお呼びしても?」
「もちろんです」
そう言ってモルダン様はお姉様をエスコートしながら会場となる温室まで案内してくれた。
温室までの道のりにも色とりどりの花が咲いていて、 私は花を見る時間も無かったのね と、寂しい気持ちになった。
「実は三人にはエスコートを希望してきた子息達が、ほらあそこで」
言われた方を見れば、何処かで見た事のある顔ぶれが並んでいた。が、すぐに誰か思い出した。
毎回お姉様とトゥーエの周りにいた令息達だった。
「申し訳ありませんが、ここからはこちらの三人と会場までお越しください」
モルダン様はそう言うと三人の令息達に何か声を掛けてから、その場を離れて言った。
三人の令息達は何かを言っていたがそれぞれ話を合わせていたのかやって来た。
が、私のところに来た彼は明らかに不機嫌さを顔に出しながら、私に左腕を出してきた。
私がそっと腕に触れると
(ハズレを引いたなぁ)
と、小声で言った声が耳に入った。
お姉様とトゥーエたちは楽しそうに会話をしながら歩いているのに彼は私を見ようともせず、前を歩くお姉様をジッと見ていた。
(やっぱり私は来るべきでは無かったんだわ)
私は彼に ごめんなさいね私で。 と声を掛けたがその声も彼の耳には届いていなかった。
私は悲しくなり、涙を堪えるために下を向いた。
その時、
「せっかく綺麗に花が咲いているのに下を向いていては見れませんよ?」
後ろから話しかけられた私たちは振り返ると、そこに立っていたのは
「レッド様・・」
レッド様は真っ直ぐ私の方へと歩いてくると、私の右手を掬い取り軽くキスを落とした。
「ああやっぱり今日も綺麗ですねぇ。でも元気無さそうだったから心配で、思わず声をかけてしまいました」
そう言って私をエスコートしていた彼を軽く睨んだ。睨まれた彼は少し後ずさるが
「ぼ、僕はモルダンに頼まれて!」
「でしたら此処からは私がアリィ嬢をエスコートするよ。その方がアリィ嬢も良いでしょ?」
いつもの笑顔で私に笑いかける。
私もその笑顔に思わず頷いてしまう。
「ではアリィ嬢の許可も得たので、私たちはここで失礼するよ。ではお嬢様、参りましょう」
レッド様のおかげで先程までの沈んだ気持ちが軽くなり、温室までの間咲いた花を眺めながら他愛のない話をした。
そんな私たちを見た人たちは
「ロード子爵家の真ん中?あんな風に笑うのね」や「目立たなかっただけで、真ん中も可愛い顔をしているな」とか、今までとは違う言葉が耳に入ってきた。
「レッド様のおかげで今日来て良かったと思えました。声をかけてくださって、本当にありがとうございます」
「あー、そんな笑顔を俺に向けないでくださいね。後で俺が殺されます」
レッド様は冗談を言って私をエスコートしたまま、ある一角にいる人たちの元へ誘導する。
そこに集まっていたのは・・
「アリィ嬢、遅かったね。隣の男が君が来るのを今か今かと待っていたよ」
「ファーレン様!お久しぶりでございます。遅くなりまして申し訳ありませんでした!」
格上のファーレン様を待たせていたかと思うと身が縮こまる。
「アリィ大丈夫だ!待ってないしコイツとも約束していないから!」
何故かマーレン様が慌てている。
私は急いでマーレン様に近づいた。が、マーレン様の香りに急に顔が熱くなった。
「ところでロード嬢には別の男にエスコートを頼んだと思うのだけど?」
マーレン様の隣からモルダン様の声が聞こえた。私は思わずレッド様を庇うように立つと
「レッド様は悪くないんです。私がこんなだからその、ガッカリされたんだと・・思います」
自分で言いながらもやっぱり悲しくなった。
「こんなって何だ?何か言われたのか!?」
「いえ!何も言われては・・いません?」
「何で疑問形なんだ!レッド!何があった!」
「マーレン様!大丈夫です!レッド様のおかげで楽しかったのは確かです!」
私とマーレン様がギャーギャー言っているとモルダン様とレッド様は私を庇うように立ち位置を変えた。
「アリィ心配したわよ。ああ、ここまでどうもありがとう。無事に妹と合流出来ましたわ」
お姉様とトゥーエが私の側まで歩いて来たが、何故か三人の令息達は肩を落としてしょんぼりしている。
「ガーライン様、こちらの令息達をお返し致しますわ。私の大切な妹を良く言わない方とはこれ以上お近づきにはなれませんわ」
私が抜けた後に何が起きたのか知らないが、きっとお姉様が何か言ったのだろう。三人の令息達は必死にお姉様とトゥーエに縋り付いていたが、
「私が頼んだ事も満足に出来ないような男とは、こちらも付き合い方を変えねばならない。今日はこれで帰ってくれ」
モルダン様がキツイ口調で言うと三人は更に肩が下がり、何度もお姉様とトゥーエを見ながら帰って行った。




