23 マーレン目線とアリィ目線
アリィが復帰して三日が過ぎた。が、何故か目が合わない。ような気がする。
イヤ、彼女からの視線に気が付き見るが、思いきり逸らされる。
「俺、何かしたか?」
仕事は今まで通りちゃんと進めてくれてはいる。
だけど目を合わせてくれなくなった。
何なら名前も・・
「なぁレッド!俺何かした?全然思い当たらないんだよ!何か知ってたら教えてくれよ!」
彼女が帰宅した後の職場で俺は机の上に顔を伏せながらレッドにグチる。レッドは んー、そうですねぇー。 と言葉を濁すが絶対に何か知っている筈だ!
でも怖くて聞けない俺・・
「こんなんで明日のお茶会は大丈夫だろうか・・」
ガラにもなく不安になる。
俺をこんな気持ちにさせるのも彼女だけなんだ。
「でもマーレン様は明日、アリィ嬢にもう一度気持ちを伝えるのでしょう?じゃないと婚約者がいなくなった跡取り娘は次男三男からしたら、超が付く程の有料物件になりますからね!」
「・・わかっている・・」
隣で ハァ〜とため息に似た息づかいが聞こえる。
レッドの言う通り明日はちゃんと想いを伝えて、それでもダメだったら部署を変更・・なんて出来ない!!
彼女のいない部屋なんて来る意味なんて
「ありますからね!ちゃんと仕事には来てくださいね!仕事に公私混同はダメですからね!」
まるで俺の気持ちを読んだかのような答えに驚いた。
「聞こえたのでは無く、マーレン様の口から出た言葉ですからねー」
レッドの言葉に、思わず両手で口を隠した。
しばし沈黙の後レッドはため息ついて
「ながく貴方のお側で護衛をしていますが、こんな姿は初めてで」
「情け無くてすまん・・」
物心が付いた頃には常に 侯爵家の跡取り としての教育がされており、常に人の目を気にしながら生活をしていた。そんな俺に少しでも気を許せる相手を!と、護衛に就いたのがレッドだった。
「いいえ逆ですよ。私は今までのマーレン様も好きでしたが、今の貴方の事はもっと好きになりましたよ」
その言葉に俺はレッドを見る。レッドはそんな俺を見ながら
「そんな情け無い顔を見せてくれる様になったんだと、私はとても嬉しいですけどね?」
と、笑っている。
「私から見てアリィ嬢はマーレン様に対して好感は持たれていると思いますよ。好感ですが」
好感か・・好意のが良かったがまぁ良い。
俺はレッドの言葉に勇気付けられ立ち上がると、明日の準備のため屋敷へと足を向けた。
「アリィお姉様お帰りなさい!私とチェリーお姉様の準備は済みましたわ!食事が済んだらアリィお姉様の番よ!」
仕事から帰り一歩屋敷に入ると、私を待っていたトゥーエが駆け寄って来た。
明日はガーライン伯爵家でのお茶会に三姉妹が招待されたのだ。
お姉様の話によればどうやらトゥーエはガーライン子息に好意を抱いている様で・・
「お帰りなさいアリィ」
「ただいま帰りました。お姉様・・気のせいかしら?見た事がないほど落ち着かないトゥーエを見るのは初めてだわ」
私の言葉を聞いたお姉様はクスクス笑いながら
「貴女の準備をすると言ってたけど、貴女のドレスを見てまた衣装替えが始まるわね。メグ、今のうちに休んでおくようにとサラに伝えてちょうだい」
お姉様付きのメイドメグが笑いながら 伝えて参ります。 と、頭を下げて行った。
「て事はお姉様の時も?」
「とても可愛らしかったわよ?わたくしにもあんな時があったのかしら?と思えるほどに」
トゥーエの方を見ながら微笑むお姉様は、女で妹の私が見ても美しいたら思った。
お姉様がトゥーエの歳の頃は後継者としての教育を私も一緒に受けていた。
その為、今のトゥーエほど浮かれた気持ちにもなれなかったから、素直に好意を持つ方に会えるだけで浮かれている姿は羨ましくもあった。
「貴女も・・家の為にジョージ様と婚約したものね。今さら・・とは思うけど、貴女だって浮かれても良いのよ?」
「・・えっ?」
一瞬何を言われたか分からず聞き流すところだった。
「グラビティ侯子の事、好きなのでしょう?」
「えっと・・」
「・・まさか、気付いて無かったの?」
私でも気付いて無かったこの気持ちを、どうしてお姉様は気付いたのか・・
聞いても良いのか、ダメなのか口から言葉を出そうにも何を聞いて良いのかが分からず、口をゴモゴモさせていると
「明日、侯子に会った時に目を合わせてみなさい。それだけで答えが」
「・・・せん」
「えっ?」
ここで口にするのが恥ずかしくて、思わずお姉様の腕を引いて自分の部屋へと連れ込んでしまった。そして、今までは平気だったのに目が合うと逸らしてしまうこと。胸が何かにつままれたように痛苦しくなる事。マーレン様の事を考えると眠れなくなる事・・
思っている事をお姉様に話した。
お姉様はクスクス笑いながら
「もう答えは出ているじゃないの!」
と嬉しそうに言った。




